ある予備調査によると、スキューバ・ダイビングには脊髄損傷によって損なわれた筋肉の動き、触感を回復し、PTSD(心的外傷後ストレス症候群)の症状を緩和する可能性があるかもしれないそうです。
今月フロリダ州オーランドで行われた退役軍人のカンファレンスで発表された予備調査は、平均で15年以上にわたって脊髄損傷により車イスが必要な退役軍人で、スキューバ・ダイバーに認定されている10人を対象に行われました。ダイビングの前に、患者の筋肉の痙縮、コントロール、軽いタッチとチクッと刺したときの鋭敏性と、気分の落ち込み、強迫神経症、PTSDのチェック・テストをした結果、8人がプログラムを完了し、9人の健常なダイブ・パートナーとともにダイビングに参加しました。
その後の調査で、脊髄損傷患者は平均で、筋肉の痙縮は15%緩和、軽いタッチの鋭敏性は10%上昇、チクッと刺したときは5%上がったそうです。誰も神経系に変化は感じてなかったとのことまたメンタル面ではPTSDの症状が80%減少したと言います。
この結果を受けて、研究に参加したアダム・カプリン博士は、「我々が水中で見たことは、脊髄損傷へのスキューバによる神経的と心理的回復はありうるということだ」と語っています。
あくまでも予備調査の結果であると注意しながらも、カプリン博士にはなぜ水中や無重力状態が脊髄損傷患者にポジティブな変化が現れたのかへの持論がありました。それは水に陸上にはない浮力を利用した抵抗トレーニング効果があり、また水中では車イスに座っているときのように呼吸を妨害されることがないからです。加圧空気によって通常より組織に酸素が過多な状態となり、筋緊張と鋭敏性が向上する誘因となった可能性もあります。
いずれにせよ、まだ結論を出せる段階ではないとしながらも、研究チームはこうした結果を積み重ねることによってこの仮説を立証したいと考えているそうです。
リハビリには様々なスポーツが取り入れられていますが、スキューバ・ダイビングがその一つとなれば、より楽しく取り組めますね。今後の研究に期待です。
(Los Angeles Timesより/リサーチ 坂野晴彦)