例年通りいくと、この時期サンフランシスコは雨期まっただ中。でも今年は雨が少ないらしく、あちこちでサクラが咲きはじめている。ここ数日は春にワープしてしまったかと思うくらい暖かい。
この辺りは雨期の約4ヶ月以外まったくと言っていいほど雨が降らない。そのために水不足が心配されている。でも、やっぱり天気が良いってすばらしいと思う。植物が芽を出す季節。寒い冬から春になる瞬間。内から生命力がうずくというのか、スタートを切りたい、挑戦したいという意欲がわいてくる。
暖かくなるこの季節に小さな“はじめる”をみつける。それが発見や転機に繋がったりするのでは?
最近、マウンテンバイクを手に入れた。学校に行きはじめ、通学用の自転車が欲しくて探していたところ、友達が壊れたマウンテンバイクを譲ってくれたのだ。
実は、私の住むマリンカウンティはマウンテンバイク発祥の地。1970年代後半にヒッピーたちがタマルパイアス山の急勾配を自転車で下って、タイムを競った遊びが始まりで、坂道を少しでも速く走れるように改良に改良を重ねて出来たのがマウンテンバイクだと言われている。
この町の道路のほとんどにバイクレーンが併設されていたり、バスにも必ず自転車をのせる場所があるというのは、自転車の歴史が刻まれているから。今でも週末にレースが開催されたり、遠方から自転車を車に積んで、この辺りでサイクリングを楽しむ人たちがたくさんいる。
そして、マウンテンバイクの生みの親でもあるGary Christopher Fisher創業の“Gary Fisher”(現在はTREKに買収)や“Mike’s Bike”等、地元発のバイク屋さんもいろいろある。ちなみに日本でも愛用者が多い“MARIN BIKES”はここマリン群から出たブランド。
日本でも通勤に自転車を使っていた私。
いつかココでも乗ってみたいなぁと思っていた矢先にもらったマウンテンバイク。
友達のお家に置き去りになっていた自転車はいつかの住人のわすれもの。ギアは壊れているし、タイヤは一輪破損。本体も錆びだらけ。そんなにコストをかけずに直せたらいいなと思いとりあえずバイクショップへ。
いくつか回った中で出会った一軒、“Trips for kids”というお店。お店は寄付された自転車やパーツをusedとして低価格で販売している。つまり自転車のThrift Shop。元々このお店は、自転車を通して生活環境に恵まれていない子供たちを支援していこうという活動をしている非営利団体が所有するもの。このお店の売上げはその支援に使われている。
結局ここでハンドルとタイヤを、ギアのワイヤーはREIで購入した。そしてメタル用のペンキを購入してフレームを塗装。あとはブレーキを調整してギアをチェックすれば完了。もう少しで乗りはじめることができそうだ。
誰かの必要のなくなったモノを自分の必要に換える。自分の要らなくなったモノを誰かの為に寄付をする。それが子供たちの支えとなる。そして、環境のためになる。求めていくべきサイクルがそこにあった。
ここに住む人たちは元々、文化にしても、建物にしても、物にしても、古い物を長く、修理を重ねながら使っていくという習慣がある。生活の中でも自分たちで出来ることはなるべくDIYで、そこに無駄にお金を使わない。家の壁から車から、なんでも自分たちでやってしまう。だから工具やパーツを取り揃えているお店やThriftも多い。
そういった人たちに囲まれて生活をしていると、何かが必要になった時、まず自分で作ってみよう、直してみようという発想からはじまるようになる。
時間がないからお金で解決してしまう、つい新しいものを求めてしまう。一瞬恵まれているように見えるけど、それはクリエイティビティを欠落させてしまうということ。
「何が起こるかわかならない世の中だからこそ、自分たちの手で作る、直す、創り出す」
それをもっと日常に取り入れていきたい。そして、それを楽しんで生きることを忘れたくないと思う。
Cumi Honda
1983年生まれ、千葉県出身。幼少時代をインドネシアで過ごす。
アパレルPRを経て、2011年9月からサンフランシスコに在住。
【SF LIFEアーカイヴ】
#01 自分らしさを知れる街
#02 未来を整えるということ
#03 自然治癒の話と不便を選ぶこと