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みなさん、あけましておめでとうございます。本年もRun boys! Run girls!をよろしくお願いします。

さて、2017年最初のMARK GEARは、2016年の年末ギリギリに滑り込み入荷してきた最新シューズ、ALTRA / SUPERIOR3.0の紹介をしたいと思います。

MARK GEAR

ALTRAは日本のトレイルランニング周辺でもここ数年でかなり人気の上がって来たアメリカのシューズブランドで、Run boys! Run girls! でも現在一番人気のあるブランドです。ただ、ALTRAって新しいブランドの割に意外とそのヒストリーは日本で知られていませんよね?”コアでかっこ良い幅広のシューズ”って言うところから先が知られていないのがもったいないと常々思っているので、今日も知ってそうで知らないALTRAのブランドヒストリーを紹介しつつ、SUPERIOR3.0の紹介をしていきます。そうです、2017年も文章の長いRun boys! Run girls!は健在ですよ!!

ALTRAは自然なランニングフォームを導くためのシューズを作っているブランド。全てのシューズに共通するのは、つま先を圧迫しない幅広のトゥーボックスと、ゼロドロップ(=シューズのソールにおけるかかととつま先の高低差がないこと、多くのシューズはドロップが1cm近くある)であることです。

MARK GEAR

創業は2009年とだいぶ若いブランドです。2009年といえば全米でベストセラーになり、日本でも多くのランナーに影響を与えた(僕も大いに影響を受けました https://markmag.jp/2013/03/coppercanyon01/43395 )、BORN TO RUNの発売と同じタイミング。BORN TO RUNは「ランニング障害はクッション性の高い靴によってもたらされる」「人間本来の裸足に近い状態こそが走るのには適している」というメッセージをセンセーショナルに伝え、世界的なベアフットランニングムーブメントを起こした書籍。この本の出版以降、”ベアフット”、”ナチュラル”、”ロードロップ”というのはランニングシューズ界における一大トレンドになり、多くのブランドがそういったコンセプトのシューズを発売しました。最初は僕もALTRAをそういったニーズを巧みに捉えて出て来たブランドなのかな?と思っていたのですが、ストーリーを紐解いていくとどうやらそうではなさそうです。

MARK GEAR

”We weren’t started in some corporate office brainstorm session, but in the back room of a Wasatch Mountain running store.”

ALTRAのwebサイトにはこう記されています。「ALTRAはオフィスでのブレインストーミングからではなくて、ワサッチマウンテンにあるランニングストアのバックルームからスタートした」と。

MARK GEAR

ALTRAのファウンダーの一人であるGolden Harperさんは、幼い頃から既にランニングにおいて頭角を現していて、10歳でフルマラソンを3時間8分で走り、更に11歳(2時間57分)、12歳(2時間45分34秒)のタイムは今でもこの年齢での世界記録を残している、ずば抜けたアスリートでした。また、彼の家族も並外れてて、ランニングショップを経営する父親は70本以上のフルマラソンを完走し、パーソナルベストは2時間22分。母親もユタ州のマラソン記録を20年間保持していたし、3人の姉妹もすべてクロスカントリーで優勝経験を持つという、とんでもないアスリート一家。家族全員で20以上の州タイトルを持つそうです。

でも、「すば抜けたアスリートが速く走るためのシューズを作った!」じゃないところがALTRAの独自性であり魅力なんですよねー。

9歳から父のランニングストアで働き始め、常にランニングとシューズが近くにあったGoldenは、大学でもランニング障害の研究をします。そして、彼と彼の父親や家族は自分たちのショップにてあることに気づきます。スタビリティシューズが売れれば売れるほど、怪我をする人が増えること、スパイクや裸足で走っているときは理想的なフォームだった人が、彼らのショップで販売している靴をはいた途端に非効率で衝撃の強いフォームに変わることに。これは彼らにとって本当に耐え難いことで、彼の父は「私はこの店でみんなにより良く走る技術を教えているのに、売っているものはその正反対のものだった」と漏らしたそうです。

MARK GEAR

怪我のないシューズを販売するために彼の父親が始めたのは、馬鹿でかい靴を売って更に、つま先に近い部分のシューレースの穴に靴紐を通さないことでした。これによって靴には足の指を十分に広げるだけのスペースが生まれます。最初はこの履き方を奇妙に思ってた人たちもやがて、そのことによって足底筋膜炎やシンスプリントなどの怪我が減ることに気づき始めます。これまで靴によって圧迫されていた足の指ですが、実は自然に広がり、リラックスする事で、最高のバランスと安定感を得る事が出来、着地時のショックを和らげる能力も高まるのです。そして、この奇妙な靴の履き方から始まった足指の十分なスペースが、現在のALTRAの広いトゥーボックスの原型です。

MARK GEAR
MARK GEAR

また、靴紐を全部締めないでつま先部を緩めるやり方も、今でも「ALTRA結び」なんて言われて、一部のランナーに実践されています。幅広足の日本人の方は、ALTRAではないシューズでもこの結び方にするだけでもつま先のストレスが減ります。

従来のシューズが足指に与えるストレスを見つけたHarper親子ですが、様々なランナーのトレッドミルで走るフォームを撮影していた彼らは更にあることに気づきます。クッション性能を持たせるためにかかとに厚みのついたシューズはかかとから地面に接地しやすい。また、シューズのかかとの高さと重さが結果的に着地の際に高い衝撃を引き起こしていると。そしてそれに気づいたGoldenがとった行動が面白いのですが、オーブンに靴を入れソールとアッパーの接着部を溶かして剥がし、薄いフラットなソールを付け替えたのです。なんというDIY精神。そしてこれがALTRAのZERODROPのルーツであるわけです。

MARK GEAR

ここまで読むと、ALTRAがBORN TO RUN以降のベアフットのトレンドに反応して立ち上がったブランドでないことがわかるでしょう。それどころか、「スタビリティシューズが売れれば売れるほど、怪我をする人が増える」くだりなんかはBORN TO RUNでいっていることと同じだし、フラットなソールのシューズを作るために靴をオーブンに入れてしまうエピソードも、Anton Krupickaが自分のシューズのかかとをナイフで削ってドロップを減らしていたのと重なります。つまりALTRAは世の中のランニング障害に対する解決策として、BORN TO RUN やミニマリストであるトニーなどと同時多発的に世の中に現れたのです。

MARK GEAR

いやぁ、このALTRAのストーリーって本当最高じゃないですか? そして、もう一つ素晴らしいと思うのが、BORN TO RUNで一躍大ヒットとなったベアフット、ミニマルなシューズたちは、ブームと共に勢いが衰え市場から姿を消していったのに対して、ALTRAは広いトゥーボックス、ゼロドロップというブランドアイデンティティとコンセプトは維持しつつもマーケットに合わせて機能やデザイン性が常にアップデートされ、着実にシェアを伸ばしているという点です。

で、ここでやっとSUPERIOR3.0の登場です。このSUPERIOR3.0、ALTRAのトレイルランニングシューズの中では一番ミニマルなカテゴリに当たるのですが、実は十分なクッションがあり、ALTRAのコンセプトを感じつつオールラウンドに使えるシューズに仕上がっています。

MARK GEAR

SUPERIOR3.0というようにALTRAのシューズには全て数字がついています。この数字はシューズのバージョンをあらわしていて、SUPERIORも1.0→1.5→2.0→3.0とバージョンアップを繰り返しています(0.5のアップグレードはソールが同じモデルのマイナーアップデート)。僕は1.0、2.0、3.0を使用していて、1.0は本当にミニマルでした。stack height(ソール厚)が今改めて調べたら14mm。USオフィシャルサイトにデータ記載がなく、irunfarなど複数サイトの情報なのでオフィシャルデータかわかりませんがかなり薄いです。僕はストーンガードを抜いていたので実質12mm。ちなみにstack height 14mmというのはミニマリストシューズの名品、NewbalanceのMT110のフロント部分と同じといえばその薄さがわかるでしょうか?(感覚的には110の方が薄かった印象がありますが)

MARK GEAR

SUPERIOR1.0

MARK GEAR

SUPERIOR1.5

MARK GEAR

SUPERIOR2.0(前期)

MARK GEAR

SUPERIOR2.0(後期 アッパーのリップストップの方向が変更、内側の圧着部の補強が追加)

ただし、ALTRAもユーザーを獲得していく過程で、アップデートされるごとにソールが少しずつ厚みを増していきます。また、ミッドソールの弾力性・反発性の向上により、踏み込んだ時に少しぐにゃっと感じるようなクッション性が出てきます。SUPERIORも2.0へのアップデートの際にソールがアップデート(stack height 14mm→21mm)。このことによって地面をダイレクトにとらえる感覚は減りましたが、多くの一般的なユーザーにとってはこのアップデートがALTRAをより身近に感じるきっかけになったと思います。また、2.0へのアップデートではアウトソールパターンがトレイルによりフィットする形になりました。1.0はかなり独特なソール形状だったので(ロードにも対応できるような形状でした)、これも多くのユーザーに喜ばれる変化でした。

結果として、ALTRAの魅力であるトゥーボックスの広さ、ゼロドロップのフラットソールに、適度な厚みとクッション性のあるソールを持ったSUPERIOR2.0はその時点でかなりの完成度のモデルでした。このモデルで、米Runner’s WorldとTrail Runner誌のEditor’s Choice を獲得しています。若干アッパー接合部が裂けやすいなどの弱点もありましたが、後のシーズンでリリースされたカラーでその点も改善されました(この後期モデルが感覚的にはSUPERIOR2.5って感じ)。

そして、2017年の春夏モデルとして登場したSUPERIOR3.0。数字の上ではメジャーアップデートですが、完成度の高かった2.0をよりブラッシュアップして完成度を高めたモデルという印象を受けました。

と思ったら、US ALTRAサイトにあるシューズ説明もそのまんまの記載でした笑。この説明が僕のインプレッションや心境を丸々あらわしてくれてるので、引用しつつ説明します。

”The award-winning Superior is back, with a few small but significant changes based on your feedback.(アワードを獲得したあのSUPERIORが、みなさんのフィードバックに基づいた、小さいけれど重要な改良を加えて戻ってきました)”

”First and foremost, we heard and addressed your feedback about sizing; the Superior 3.0 now has the accurate sizing that you need.(第一にサイジングについてフィードバックを重要視して、SUPERIOR3.0では正確なサイジングを可能にしました)”

これを率直に書いてるのが好感持てます。ALTRAってシューズによるサイズ感がこれまでバラバラで、僕はALTRAのメジャーなトレイルモデルであるLONE PEAKは28.5cmだったんですが、SUPERIOR1.0は29.5cm、SUPERIOR2.0は29.0cmを履いていました。もともとSUPERIOR自体少し小さいんですが、それに加えて長さはちょうどいいけどつま先が低くて指先に干渉するなどの問題もあり、僕の足の形だとどこかは合うけどどこかは我慢しないといけないという感じでした。それが3.0でついに改善! 僕も28.5cmでついに履けるようになったし、補強が強化されながらも、圧迫感がなくとてもいいフィット感。これは今までALTRAのサイズ問題に悩んでいた方にも改めて試してほしいです。あとはシュータンのアッパーへの縫い付けも微調整されてて、これも僕は改善点と感じました。

”To increase durability in the upper, we have now included elastic overlays for added security.”

先ほども触れたように、SUPERIOR2.0の弱点は生地接合部や生地そのものの耐久性でした。そこには伸縮性のある素材を圧着することで耐久性を高めています。また、トゥーバンパーの幅を広げることでアッパーとミッドソールの圧着部分の強度も増しています。

MARK GEAR

上が3.0、下が2.0。上のアッパーの格子模様はパーツ圧着による補強、下はプリントによる模様

MARK GEAR

トゥーバンパーの回り込みが大きくなっていることが一目でわかる。
前モデルで一番強度の弱かった部分を補強しつつもつま先のフィット感はむしろ向上している。

”A subtle but noticeable lateral flare on the outsole lugs increases grip and stability. ”

アウトソールのラグパターンは2.0を踏襲しつつも、3.0の方がラグ(凹凸)が高くグリップと安定性が高まっています。またコンパウンド(ゴムの配合)は、従来の素材に加えて、耐摩耗性に優れたDuratread™も使用。

MARK GEAR

ソールパターンは大きくは変わっていないが、よく見ると3.0の方がラグ(ソールの凹凸)が若干深くなっているのがわかる。

まとめます。SUPERIOR3.0はALTRAがもともと持つトゥーボックスの広さ、ゼロドロップという特徴に加えて、評価の高かったSUPERIOR2.0から、フィット感と耐久性が上がったアッパー、適度なクッションと反発性を持ったミッドソール、耐久性とグリップの上がったアウトソールと非常に完成度の高いモデルとなっています。

ALTRAのトレイルモデルの中では軽量・ミニマルモデルに位置しますが、かなりオールラウンドに履けるシューズになっていますよ。例えば初代LONE PEAKと比べると、SPERIOR3.0のStack Height 21mmはLONE PEAK1.0の22.5mmと1.5mmしか変わらないし、ミッドソールの弾力性によってSUPERIOR3.0の方が、クッションを感じる作りになっています。また、montrailのCaldoradoと比べると、CaldoradoのStack Heightはヒール26mm つま先18mmとなっていて、フォアフットで走る分に関しては、スペック上Caldoradoよりクッションがあるということになります。だから、ミニマルだから長い距離はダメだとか決めつけないで、足を入れてみて合う合わないを感じてほしいです。ロマンチックなことを言うと、靴って足入れした時に「この靴ならいろんなところを走ってみたい」って思えるかどうかも大事だと思うんですよね。

そんな感じで、新しいSUPERIOR3.0は従来のALTRAファンにも、これからALTRAに挑戦する人にも、オススメしたい仕上がりになっています。オールブラックカラーがあるのもいい感じ。是非いろんな方にお試しいただきたい1足です。

MARK GEAR

あ、言い忘れたことが一つ。ALTRAのシューズって、ナチュラルランニングのコンセプトや、体のことなどを知った方がより効果的に履くことができます。日本のALTRAのサイトで、その詳細をじっくり日本語で読むことができます。僕は5年前にALTRAのサイトを見てそのコンセプトに惚れて初代LONE PEAKを購入し、初めてのロングトレイルレース挑戦だったSTYで使用して無事完走できました。ALTRAは確かにかっこいい。でもカッコだけで履いちゃうと勿体無いと思う理由がそこにあります。ALTRAを持っていてコンセプトにはまだ触れたことのない人、これからALTRAを試して見たい人、シューズはともかく怪我のない走り方を模索している人、そんなみなさんは是非ALTRAサイトの「ALTRA基礎知識」を読んで見てください。http://altrazerodrop.jp/learntorun.html

それから、USのALTRAもブランドヒストリーを見ていると、怪我のないシューズを提供したいと言う想いからスタートしていましたが、日本のALTRAも関わるスタッフはトレーナーや体のプロが多く、Run boys! Run girls! でも昨年行った、LTRのような走り方を実際に学べるイベントもやっているので、気になる方は次回開催時にはぜひご参加ください。http://rb-rg.jp/?p=4551

長々と話しました。ALTRAがとにかくただの靴屋さんじゃない。と言うことを理解してもらえましたでしょうか? この記事をきっかけに、多くの方がよりALTRAを楽しんでもらえれば何よりです!

SUPERIOR3.0 販売ページ
http://shop.rb-rg.jp/?pid=111536949

最新情報
1/22、各メーカー、ブランド、ショップ、個人が出店するトレイルランのフリマイベントULTRA GEAR MARKET、来週開催です。かなり面白いコンテンツが勢揃いなので、是非遊びに来てください!
https://www.facebook.com/events/1794186417506087/

1/29 初のナイトランイベント開催!夜だから感じる楽しさがありますよ。
https://www.instagram.com/p/BPK06IaDaRG/

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