今が旬のクワイはオモダカ科の多年生水生植物で、根のような茎部分にできる塊茎を食べる。茎の先から勢い良く芽が出てくることから「芽でたい」が転じて「おめでたい」とされ、いにしえより縁起物とされてきた。あまりメジャーな野菜ではないが、関西のほうではわりと馴染みがあり、芽が出た姿のまま丸ごとうす甘煮や煮しめの具材にしたものは、正月料理として食されている。
その外見とは裏腹に、下ごしらえは意外とシンプル。芽の先を程よい長さのところで斜めに切り落とし、クワイの皮は少し厚めに六方むき(6角形になるようかたちを整えながら剥くこと)にし、水に5分ほどさらしてアクを抜くだけ。だし汁に酒、醤油、みりんなどで味付けし、そこに下処理したクワイを入れて落し蓋をし、じっくり含め煮にする。薄口醤油を使って白く炊き上げてもよいし、くちなしの実(割ったもの)を少し加えて淡黄色に仕上げてもよい。
正月料理だけに限らず、薄切りにして揚げ、塩をまぶしたものは、季節の味として酒好きに好まれている。味わいはほくっとでんぷん質、主張する味わいではないが独特のほろ苦さを持ちあわせ、中華食材として炒め物に入っていることも多い。華はないけれど、勢いよく出た芽の愛らしさが目を引くクワイ。おせち料理のレパートリーとして加えてみてはいかがだろう。