fbpx
2016年7月、シドニーのキャンパーダウンというエリアで、かつてボウリング場が営まれていた土地が農園に変わった。名前は、POCKET CITY FARMS(PCF)。創業したのは、編集者として仕事をしていたエマ・バウエンと、同じく編集者で公私にわたるパートナーでもあるマイケル・ザゴリディスの二人。バウエンは『Green Lifestyle』という雑誌の編集に携わりながら、都市に暮らす人々の多くが食料品生産への意識から遠く離れていることに気づき、食の生産から流通、消費までを体系的に捉える「フードシステム」に人々の目を向けたいと考え、PCFを創業するに至ったのだという。

TOUCH THE SOIL & CONNECT WITH PEOPLE
都市で土に触れ 人とつながる

朝8時、POCKET CITY FARMS(PCF)で10人ほどが農作業をしている。雑草を抜いたり、土を耕したり。創業者の一人で、農園のマネージャーを務めるマイケル・ザゴリディスが彼らに指示を出している。

「朝ここに集まっているのは、ボランティアでPCFを手伝ってくれる人たちだ。朝の2時間ほど農作業をサポートしてくれる人が、メールやSNS経由で参加できる日に連絡をくれるようになっているんだ。バルコニーなどの狭いスペースでの野菜の育て方を教えるワークショップなど、僕らがここで主催するイベントに参加して、実際に土に触れたいと言ってボランティアで畑を手伝ってくれる人も多いので、これだけのスペースでの農作業を行うことができている。僕と共同経営者のエマの2人ではどうにもならないからね」

そう笑うマイケル。畑で拾った雑草や葉っぱなどを、畑の端に設置された箱へと運んでいく。堆肥を作るためだ。

パーマカルチャーの実践

「サスティナビリティを重視する僕たちの活動において、畑で出るゴミも生産のために活用するのは当然のこと。ここの敷地に併設されているレストランから出る生ゴミも、堆肥の材料として提供してもらったりしている。生の草が発酵して分解されて堆肥になるまでは3ヵ月半から4ヵ月ぐらい。こういう循環型の農業を目指すようになったのも、エマと一緒に農業の研修を受けたり、パーマカルチャーのことを学んだりしたことが背景にある」

パーマカルチャーとは、1970年代にタスマニア島で暮らしていたデビッド・ホルムグレンとビル・モリソンという二人が、パーマネント(永続性)とアグリカルチャー(農業)を組み合わせた造語だ。自然のエコシステムにならい、持続可能で自己維持も実現する農業システムを目指す2人の思想は、単一の農産物を大量生産する現代のシステムへのアンチテーゼとして生まれた。現在では先進国を中心にパーマカルチャーの概念は広まっており、サステイナビリティの実現と切っても切り離せないものとして広く実践されている。

草むしりをするマイケルと、ボランティアに集まった人々。雑草も増える夏はとくに、ボランティアの手に大きく助けられているという。

継続することの重要性

やがて昼が近づき、外での打ち合わせからエマ・バウエンがPCFに戻ってきた。創業から18ヵ月が過ぎ、現状の手応えと課題について次のように語る。

「私たちの活動の50%は、ここで実際にオーガニックな野菜を育てて、ネットショップを通じて販売を行うことと、契約する市内のレストランに卸すこと。残りの50%は、その農業体験で得た知識を地域の人々と共有するためにワークショップを行ったり、先生に引率されてくる子どもたちに農作業を通じて食がどこから来るのかというレクチャーをしたり、という教育的な活動。ワークショップ参加者やボランティアの輪は確実に広がっているし、カリキュラムに取り入れてくれる学校の数も増えているから、認知度の面ではうまくいっていると思う。あとはトライ&エラーの繰り返しだから、問題点が見つかったら解決して、何よりも継続することが大事だと考えているわ」



ボランティアに来ていたアリスは、FacebookでPCFのことを知り、ボランティアへの参加を決めた。この日が2度目の参加だという。「自然に触れたいと純粋に思ったのと、あとは、地域に自然を取り戻す彼らの活動に自分も貢献したいというのが最初の動機。自宅でもバルコニーでトマトなどを育てていて、ガーデニングや地域の緑化などには興味を持っている。そういう若い世代は増えているはずよ」

【NEXT PAGE】
コミュニティの構築を目指す

POCKET CITY FARMS

31 A Mallet St, Camperdown, NSW2050
営業時間:月〜金 7:00 〜15:00
pocketcityfarms.com.au

MAIL