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パフォーマンスを最大限に発揮するには、エネルギーを十分に満たした状態でレースに臨むべきであることは前途した通り。ただし、「満腹=補給完了という認識は間違い」と齋藤さん。

「固形物は、胃のなかを通過して小腸から吸収されるまでに約3時間かかるといわれています。吸収されて初めてエネルギーチャージ完了となる。よって、食事は3時間前に済ませるのが理想。消化のよい炭水化物中心としたメニューに、おかずは少量。腹八分目という分量さえ守れば、いつもの食事でも構いません。ただし食物繊維は消化されないため、繊維の多い食べ物は控えたほうがベター。レース開始の1時間前ぐらいからは、素早く溶けて吸収率の高い水溶性のジェル、もしくはバナナやグミなどを少し摂る。胃の負担にならない程度の固形物を入れておくことで、飢餓感がなくなりレースに集中できます」

レース当日の朝食から直前までの食事

食べ物の「量」に気をつけるのが第1ステップだとするなら、第2ステップは「質」に配慮すること。今より高みを目指すランナーは、糖質の消化吸収スピードが緩やかである低GI値の食べ物を一緒に摂り、スタミナを持続させる方法もある。そのメカニズムはこう。

「食後に血糖値が上がるとインスリンが分泌され、血糖値を下げることができます。ところがインスリンは体脂肪の分解を抑制し、脂肪燃焼を阻害する働きを持っている。つまりインスリンが増えるほど、身体は体脂肪を蓄えやすい状態になる。カーボローディングでせっかく糖を補充しても、脂肪を燃焼に変えられないのはもったいない。血糖値を緩やかにしてインスリンの分泌を抑えれば、体内に蓄えられた脂肪をエネルギーとして使うことができるため、スタミナが持続するというわけです」

レース当日の朝食から直前までの食事

血糖値の上昇が緩やかになる食品といえば、GI値の低いもの。精製度の低いご飯やパンなどが代表として挙げられるが、これらは消化の悪い食物繊維が多く含まれているためレース直前には不向き。おすすめは羊羹、りんご、バナナなど。あるいは、『アップルハニー』(VESPA)、てんさい糖、黒糖、きび糖などを使用した焼き菓子もいいだろう。

監修:齋藤通生

(有)ネオディレクション代表。ベスパエリートアスリートサービスとして活躍する栄養補給のエキスパート。山本健一や望月将悟、高村貴子など、トレイルランナーを中心にエンデュランス系レースで活躍するアスリートをサポートしている。レース前~レース中、レース後の食事と補給、また、日常の食生活からコンディショニングのプランニングに携わっている。