皆さんは普段いくつのスポーツにトライしているだろうか?スポーツウォッチやログアプリには、50以上ものアクティビティモードがある。もし自分が一番熱を注いでいるスポーツのパフォーマンスが、他競技で磨かれるとしたら?今回はそんな思考を豊かにする提案のお話。冬場のトレーニングとしてクロスカントリースキーをオススメします。
他競技でポテンシャルを引き上げる
2015年:49.7%、2019年:39.8%
STRAVAが昨年末に集計したデータによると、この4年の間にひとつの競技に集中して取り組む人の割合が約10ポイントも減少したというデータが示されました。ランニングを主軸に置きながら、バイクトレーニング、スイムを組み合わせたり。またその逆のパターンもしかり。わずかな数字ではありますが団体競技に取り組み始んでいる人も増えているようです。
参考記事:『Stravaビッグデータが明かす2019年のアスリートのリアル & 日本でもっとも運動した人々』
この現象は何故起きているのか?同じ競技を続けることに飽きたのか?気になるデータだったのでまず周りにいるランナーにアンケートしたところ、それもひとつの答えとして上がりましたが、それ以上に「記録が全然伸びない」「前より距離を積んでいるのに全然走れなくなってしまった。もう限界なのかも」「頭打ちを感じている」……。
同じ競技に集中し続けて、ひとつの限界点に到達した人が多く、(今回はランニングを中心に書いていますが)何か「別の競技と組み合わせて、主軸となる競技での能力向上を図っている」との声を多く聞きました。
スイッチするのではなく、あくまでクロストレーニングとして。
『mark』vol.13[WHOLE RUNNING CATALOG]の記事で取材した五味宏生さんも『さまざまなスポーツに取り組むことで、身体の使い方、力の出し方を習得できて、それがランに生きてくるというのは確実にあるでしょう』と、アメリカのランニングチームの中には、シーズンオフになると、バスケットボールや野球を取り入れる話をしています。
また、同じく先日取材させていただいた、トレーナー・清水忍さんもウォーキングの話を例に出し「筋肉を使った後にはストレッチをしないと筋肉が硬くなる。結果血行が悪くなり、疲れやすくなる」と単一運動を繰り返してばかりいると、筋肉の可動域が狭まる話をしてくれました。
参考記事:『人気シリーズ『大人の体力測定』監修者が語る今伝えたいこと』
そこで今回onyourmarkがクロストレーニングとして注目したのがクロスカントリースキー(以下:クロカン)。
ここ数年トレイルランナーを中心に、冬場にクロカンに取り組む人が増えていたこともあり密かに注目していたわけですが、トレイルランナーであり、元クロスカントリースキーヤーでもある山田琢也さんが「トレイルランナーのためのクロスカントリースキー」と題した説明会を開くという情報を聞きつけ、早速話を聞きに行ってきました。
「クロカンは究極の有酸素運動、そして全身運動です。そこに尽きますね。一回の呼吸で体内に酸素を供給する力、いわゆる最大酸素摂取量が多いほど有酸素スポーツには有利とされていますけど、クロスカントリースキー選手の数値が、数ある有酸素系スポーツのアスリートの中でもトップというデータがあるんです。2位が水泳選手。マラソン、ランニングは確か3番目か4番目です。
僕がベースにしている長野・木島平では冬場は山を走ることができません。場合によってはロードも。その環境もあって、走る代わりとしてする遊びがクロカンなんです。もともと僕自身競技キャリアのスタートがクロカンだったこともあるんですが、いま欧米で活躍してるトレイルランナーが、ランナーになる以前、クロスカントリースキー選手だったというケースは多いんですよ。
そのセカンドキャリアで、トレイルランニングなりスカイランニングなりをしている。そしてトレイルランニングを主軸にしてからも、彼らはいまだに冬になるとクロスカントリースキーを取り入れています。UTMF覇者のグザビエ(・テベナール)なんかは冬はクロカンしかやっていないようですし、それもトレイルランニングのレースに出る1,2ヵ月前までです。キリアン(・ジョルネ)も元はクロスカントリースキーヤーで、彼の場合はスキーはもちろんいろんなウィンタースポーツに取り組んでいますが、クロカンをトレーニングとして組み込んでいます。
ヨーロッパではエリートランナーほど、一年中ランニングするのではなく、ロードバイクやマウンテンバイク、冬になったらクロスカントリースキーと、クロストレーニングで強くなっていますよね。日本でなら最近は大瀬和文や上田瑠偉も始めています。彼らも『クロカンをするようになって強くなった』と言っていますし、何より冬場に足に負荷をかけずに、かなり追い込むことができます。強くなるために本当にオススメですよ」。
この話を聞き、真っ先に思い浮かんだのは、クロカンはトレイランニングに限らず、ランニング、バイク、その他の競技にも有効なのではないか?ということ。ランニングや水泳に取り組んでいる人以上に最大酸素摂取量が高いのであれば、クロカンをしている人の方がランニングを楽に感じるはず、と考えました。ランニングと動きも近く、かつクロカン経験者がトレイルランニングの世界で活躍しているというエビデンスも取れているのであれば、これはランナーにこそオススメするしかない。そんな訳で、クロスカントリースキーのメリットを体感、理解するべく、山田さんのホームグラウンド、長野は木島平を訪ねてきました。

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