Stravaはこれまで、ランナーやサイクリストを中心に様々なアクティビティに対応するソーシャルネットワークとして拡大を続けてきた。onyourmark読者のみなさんにも利用者は多いはずだ。そんなStravaが、2020年5月19日からサブスクリプション(有料)のリニューアルを発表した。今後はサブスクモデルをビジネスの軸に据えるものと思われる。
Stravaは元々あったプレミアムという有料プランを、2018年の8月に「サミット」と呼ばれる3種類の有料プランへと変更している。「トレーニング」「セーフティ」「アナリシス」の3つの機能パックからなり、ユーザーは必要に応じたサービスを選べるという幅を持たせたものだった。だが、ジェームズ・クォールズ前CEOが語るように、登録者の大半が3種類全部入りパックを選んでいたことからも、3つに分けることの意義は不明瞭だった。
今回の2020年5月のアップデートでは、従来の「サミット」という名称を廃し、トレーニング全体を管理する機能に置き換えられた。料金システムも月額525円(ないし800円、後述)と一元化。ユーザーにとっては、有料か無料か、という二択でシンプルにわかりやすくなった。その簡便化でStravaが狙うのは、サブスクリプションモデルへの移行だ。そのため、これまでは無料で使えていたサービスも有料サービスに組み込まれる。何が無料のままで、何が有料となるのかを整理してみよう。
有料だからできること、無料版でできること
サブスクリプションの金額は据え置き 月額525円(あるいは800円)
年間プランで契約すれば、一月あたりの利用料は525円。月単位では800円となる。これまでの「サミット」でも3パックセットが月額525円(年間プラン)、月単位契約の場合は月額800円だった。金額は据え置きとなる。
リーダーボード 無料版はTOP10までの表示に
山岳でのKOM、QOM……アクティビティ終了後に、Stravaセグメントのリーダーボードで自分がどの位置にいるかを見て楽しんでいるユーザーは多いはず。このリーダーボード表示機能は有料版に移行し、無料版では全体TOP10と女性TOP10の表示(+自分の位置)の表示のみとなる。フォローしている知人との順位関係や、年齢・体重別の順位表示は有料サービスとなる。
セグメントにおけるエフォート分析
こうしたセグメントでは、ライバルと自分、あるいは過去の自分と対比する分析機能が使用できたが、これも有料化する。長い上りでのペース配分や走り方などを他のライダーのデータから知るには、サブスクリプション登録が必要だ。
精度を上げたルート作成機能は有料に
すでにweb版Stravaでベータ版がリリースされていたルートビルダー機能は、ブラッシュアップを果たし正規サービスに昇格、有料版のサービスに統合される。Mapbox社のマップを採用し、ランニング、サイクリングともに、Stravaのヒートマップデータ・そしてセグメントをリアルタイムで参照しながらルートを描画できる。今後の精度向上が望まれるが、路面タイプが舗装路か未舗装路かを判別する機能も参考になる。
モバイル版では地図を指でなぞると描画する機能が継続。また、保存したルートをお気に入りに登録すると自動的にGarminデバイスとシンクする機能も実装されている。サイクリングにおいては有力サービス「ルートラボ」がこの春に終了したため、多くのライダーが代替のルート作成サービスを求めているが、有料ながらStravaがそこに名乗りを上げた格好となる。
ランニングマッチ
同じコースを走った際のパフォーマンス分析を行うランニングマッチ機能は有料サービスに。
トレーニングログの見やすさ向上
これまでのStravaでは過去のアクティビティを遡って参照しづらいという難点があったが、有料版のアップデートによりこれを解消。1週間ごとのカレンダー方式で過去のアクティビティにイージーにアクセスできるようになった。あのルートをもう一度走りたい、という時にルートを引っ張ってくるのにも便利だろう。また、週間でのトレーニング量などの比較もしやすくなりトレーニング管理ツールとしての機能も充実している。
その他の有料版/無料版での機能に関しては、公式ページを参照してほしい。
有料化のその先にあるもの
今回のStravaのサブスクリプション化は、「アスリートに最高のエクスペリエンスを提供することを目指」すとして、次の3点に焦点を当てているという。
●トレーニング分析の内容充実
●コミュニティー内のフレンドリーな競争を促す機能にフォーカス
●アスリートからのフィードバックを取り入れた機能に着手
これはすでに上に見た有料化したサービス内容からも伺えるが、つまりはトレーニングとコミュニケーションというStravaの2つの軸をより強化するということだ。有料化はその分、ユーザーに対する責任とエンゲージメントが共に高まる機会でもある。Stravaとしてはよりユーザーと強力に結びつき、コミュニティを強化する狙いがあるだろう。
Stravaが多くのアスリートを魅了してきたリーダーボードの有料化には少なくない人々を失望させるだろうが、一方でプレスリリースの中でStrava経営陣が、リーダーボードは「技術的にも複雑でメンテナンスコストの高い機能」とも吐露しておりコアサービスの維持にサブスクリプションモデルが重要であることが伺われる。
一方でルート作成機能は、Stravaの強みであるアスリートのビッグデータを活用して、さらなる拡張の可能性がある。また、COVID-19の影響下にある世界で、フィットネスをめぐる地理的・運動学的なデータを包括的に持っているであろう同社が、今後どのようなフィットネスとコネクティビティをテクノロジーによって実現していくか、注目したい。サブスクリプションによるペイは、自らはもちろん、フィットネスのあり方への投資になるかもしれない。