fbpx

​​COOK & RUN という特集のエッセイを誰にお願いしようかと考えている時に、たまたま連絡を頂いたのが〈SUNSHINE JUICE(サンシャインジュース)〉の代表NORI KOさんだった。「markのbeyond jogging特集、面白いですね!」と声をかけて頂いたのをきっかけに、そうだ、このテーマで文章をお願いするとしたらNORIさんが、ぴったりだ!とその場で原稿を依頼した。

米国、台湾で生活した経験をもとに健康的な食生活の提案を行ってきたNORIさんは、2014年に日本初のコールドジュース専門店〈SUNSHINE JUICE(サンシャインジュース)〉をオープン。その時の様子はmarkでも取材している。その後、〈SUNSHINE JUCE(サンシャインジュース)〉は、原料となる野菜や果物を生産する農家とのネットワークを着実に広げていき、健康に良いだけではなく、農産物の無駄のない活用法としてのジュースの価値も伝えている。

そしてなによりもNORIさん自身が卓越したアスリートでもある。経験のあるトライアスリートであり、ランナーとしてもフルマラソンでは毎年サブスリーを達成している実力者。そして近年はそのエンデュランス能力をトレイルランニングにぶつけている。

今回はそのトレイルランニングの初レースとして出場した〈IZU TRAIL Journey 2021〉において実践した補給の様子についてレポートしてくれた。


IZU TRAIL Journeyを駆け抜けるNORIさん。70kmを8時間53分で完走した。

初トレイルレースのテーマは「循環」

自然の中を走り、太陽の光が木々から差し込む光景や、人のあまりいない時間に静かな森の中を走るのが好きで、初めてとなるトレイルランニングのレースへの出場を決めた。昨年の12月に伊豆で開催されたIZU TRAIL Journeyの70km。それまでロードのマラソンやウルトラマラソンは走っていたが、トレイルレースは初めて。しかもトレイルで70kmという距離も未知の世界で、走る前はまったく想像ができなかった。

今回レースを走る上でテーマにしたのは「循環」。僕の作っているサンシャインジュースでは日本各地の生産者の方々を訪ね、どんな場所でどんな人が育てているのかがわかる素材をできるだけ使うようにしている。ジュースを搾るという行為は、材料となる野菜や果物が育ってきた環境、太陽、土、水、人、のエネルギーが全て含まれるもので、サンシャインジュースを飲むことは、植物がこれまで育ってきたエネルギーを自分たちの体にジュース(液体)の形で取り入れて自然とつながることだと思っている。しかも非加熱で搾られるため、植物が持つ栄養が生きたままの状態で取り入れることができて、そのエネルギーを活力として自身を動かすことができるのだ。

レースを走るにあたって、自分を動かしてくれる”fuel”に着目し、「raw food=ローフード(生食)」と「消化」をコンセプトにクリーンなエネルギーでこの未知のトレイルレースを走ってみることにした。

​​

NATURAL & RAW

ここでローフードのメリットについて少し書けば、ローフード(46℃以上の熱がかからない状態で加工されたもの)を食べることは人が持っている酵素(バイタルフォース)を無駄に使わずに、食べたものを消化吸収できるということがある。そもそも人間は限られた酵素しか体内に持ち合わせておらず、体のリペアや回復、消化、運動などすべてに酵素が使われるのだが、その中でも特に消化に優先的に使われてしまい、消化ばかりに酵素が使われると、本来ケアされるべき事や体の本来の力を引き出すことにまで酵素の量が足りなくなってしまうのだ。さらに、ローフードを摂取することは、その食材自体にも酵素が含まれているので外部から酵素をドーピング摂取でき、体のケアにより多くの酵素を使うことができるのだ。

今回このローフードと酵素の働きを考え、レースに取り入れてみた。長時間動き続けるということは体へのダメージは大きくなる。それらの回復に自分が持っている酵素を極力使わせるために、消化負荷の低いローフード補給食で走ることにした。

あわせて僕が常に意識しているのは「自然」のエネルギーで動きたいということ。ケミカル(化学)はもちろん体に沢山のミラクルを起こす。長時間動き続けるために必要な糖質も、ケミカルのジェルを用いれば早く化学変換されて動き続けられる。でもそれって自然物である人間にしてみたら処理しきれない情報だし、体にとってショックが少ない自然のものでエネルギーを摂りたいと常に思うのだ。

持久スポーツで多く用いられるケミカル・ミラクルもなしで、完全にナチュラル・アンド・ローで70kmの旅を楽しむことにした。

​​

エネルギー吸収をデザインする

具体的には、エネルギー源を作るためにまず考えるのが「糖質」。長時間の運動で糖質は枯渇していくのだが、そんな中で天然の糖質源として体に負荷が少なくクイックに燃えてくれるものとして、非加熱の蜂蜜、デーツ、それにドライイチジクを素材にした。

これら3種を食べた時にどれくらいの速度で実際にエネルギーとして変換されるかを数値化した値、GI値を比較してみると、高いもの(エネルギーに変わるのは早いが長く続かない)が蜂蜜、低いものがイチジクで、中間がデーツとなる。よって、レースの前半からゆっくり長く効いてくれるイチジクやデーツを使ったものを摂取し、後半になって即効性が必要になるタイミングから蜂蜜を使ったものを摂るようにプランした。

合わせて動力となる「脂質」を摂取できるものとして多用したのがカシューナッツ、アーモンド、クルミ。重要なのはきちんと12時間以上浸水させることでナッツの酵素を活性化させること。そうしないと逆に体が消化しきれなくなってしまうのだ。よく売られているローストしたナッツ類は当然酵素は枯渇しており、生きた栄養を取るためには浸水した生のナッツが好ましい。

浸水して活性化されたカシューナッツ、アーモンド、クルミに糖質を普段より多めに加えてフードプロセッサーで混ぜ合わせ、ドライフルーツやヘンプシード、カカオニブなどを加えて歯応えを残し、最後にサンシャインジュースの「自然レメディ」のビーツを加える。ビーツは血管拡張作用もあり運動時には最適な食材である。味や歯応えにバラエティを持たせてレース中に飽きないために何種類か作ってこれらを成型してディハイドレーター(低温乾燥機)にいれてバー状にする。温度を調整して46度以上にあがらないようにして一晩乾燥させれば生きた栄養が詰まったローエナジーバーの完成だ。

レース当日のバックパックの中にはこのバーを大量に持ち、合わせて搾りたてで生きた栄養が詰まった、ビーツと柑橘をブレンドしたサンシャインジュースを500mlと、道の駅で見つけたみかんを5個、それに水を2l詰んで走りだした。自然食は化学モノよりも効いてくるまでに時間を要するので、空腹を感じる前に少しずつ補給することを意識して食べて走った。レースの後半で空腹や疲れも少し感じ、いけるのかな? と思った時に飲んだビーツジュースのインパクトが忘れられない。

目の前にある情報から自分をポジティブにさせる部分を見つけて楽しむ

思っていた通り、トレイルのレースは山が雄大で自然が力強く、つらいセクションもあったが楽しむことができた。普段から極力ローフードを食べるようにしていることもあり、今回の補給に体は順応し、まったくストレスなく動いてくれた。

先が長くみえるのぼり坂も、とにかく小走りで前に進み続けるといつか頂上にたどり着く。そこには雄大な自然が広がり、今まで登ってきた辛かったことなんか忘れて、ただただその瞬間に感動できる。こんなシンプルな喜びが各所で繰り返され、70kmは8時間53分で終わった。つらい、もうだめだ、って思うのは簡単だし、そう思い始めると体は前に進めなくなる。でもその状態に入らず、いかにマインドを騙してつらいと感じずに、走ることに集中して体を前に進ませ続けるか。そしてどれだけ目の前にある情報から自分をポジティブにさせる部分を見つけて楽しむかが大切なんだろう。

今回、山を自然のクリーンなエネルギーで走ることは、自分のマインドを常にポジティブに保ち続けられ、結果、体を軽く動かし続けてくれたと思う。いつもサンシャインジュースを飲むたびに、自然のエネルギーが体にダイレクトに入り、目がパリッと開き、どんなエナジードリンクよりも体も精神も元気にしてくれ、翼が生えたかのような感覚になるのだが、今回の9時間弱の旅でその素晴らしさを実感した。きちんと生命力のあるものを体に入れるということは、ダイレクトに自分が動くための力になって、体は確実に反応してくれるのだ。its life in food, not food in life.

そんな力強いエネルギーを自然から受け取ったら、自分たちも良い連鎖を続けないといけないと思う。自然の持つエネルギーで走ったり、動いたり、何かしら表現したりして、自然の力強さを感じてより大きな感謝や愛を持つこと。目の前の景色や自然をシンプルに愛でること。まわりの人に対してもっと思いやりを持って愛をもって接したり、より良い自然環境のために何かできることを実践してみることも。

行動や思考が少しでも良く変化していくことで、自然エネルギーはハッピーに「循環」していくんじゃないかと思う。雄大な自然の中、どの瞬間も美しく、マインドゲームをしながら体が発してくるシグナルを感じて走った70km、楽しかったな。

NORI

NORI

サンシャインジュース代表。アメリカ、日本、台湾での生活を経て日本初のコールドプレスジュース専門店「サンシャインジュース」をオープン。できるだけ良い素材を探すため日本各地の農家を訪問。自身の日常生活にスポーツは欠かさず、趣味は持久スポーツ。フルマラソンは毎年サブスリーを達成。

SUNSHINE JUICE
https://sunshinejuice.jp/