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もっともB Corpらしさが現れる、「環境」セクション

BIAにおいて「ガバナンス」「従業員」「コミュニティ」に続いて登場する「環境」のセクション。ここには、もっともB Corpらしいと感じる内容が並ぶ。

たとえば
・自社の製品・サービス・プロセスは、どのように環境を回復・保全するように構成されているか
・直近の会計年度で販売した商品のうち、少ない環境負荷である商品や製造過程である証明ができているものは何%か
・過去2年間で、収益の50%以上を占める主な自社製品が環境に優しいデザインかどうか、下記のいずれかのアセスメントを実施したか(ライフサイクルアセスメント/Cradle-to-Cradle Certification (完全循環型デザイン認証)/資源削減の実施/有毒物削減の実施/製品の原料、デザイン、再利用やリサイクル可能かのレビュー/使用済製品や部品の回収プログラム)
・エネルギー消費についてモニター・記録・レポートをしているか
・再生可能エネルギーの使用率
・温室効果ガス排出についての管理
・再生可能な、もしくは生分解性のある素材の割合(製品+梱包含む)
など。

「ここで求められるのは、環境マネジメントシステムとその内容です。使用する水やエネルギー、企業活動で排出するCO2や廃棄物量をきちんとモニタリングし、管理しているか。製造業などではサプライチェーンにも同様のシステムが求められます」(B Corp取得支援専門のコンサルタント、岡望美さん)

サプライチェーンやビルオーナーから社員までを巻き込む

難しいのは、環境負荷に配慮して製品を製造している場合、その証明を行わなくてはいけないこと。実際、企業形態や規模によってはこの証明がハードルになるようだ。たとえば国際的な完全循環型デザイン認証である「Cradle-to-Cradle Certification」や「Fair Trade certification」、農業であれば「Global GA」、林業の「FSC」、水産業の「MSC」といったさまざまな評価・認証制度があり、いずれもBIAに提出するエビデンスとして有効だ。けれども、経済的な理由などでこうした認証の取得が難しい企業が回答に付随するエビデンスを用意する場合、サプライチェーンや取引先など周辺を巻き込む必要がある。

「そこがB Corpらしいと感じるポイントです。ステークホルダー資本主義というと、自社のビジネスを通じて顧客や株主、取引先へ貢献しようという考え方が一般的ですが、BIAに回答するには、周囲も主体的に行動するよう、周りに働きかけることが不可欠になります。たとえば『会社の施設を借りている場合、(エネルギー効率や水効率の向上、リサイクルを含む廃棄物削減などに)地主と取り組んでいること』という質問がありますが、地主を巻き込むことでビルや施設全体でソーシャルグッドに取り組むムーブメントが生まれるかもしれません。このように、アセスメントを通じてさまざまな業界・業種の企業に、よりよいビジネスのあり方を考えてもらうきっかけ作りを行っているのです」

日本のB Corp認証企業のなかで、環境セクションで最高得点を得ているのが〈CFCL〉だが、岡さんによれば「サプライチェーンを巻き込んだものづくりを徹底しており、実態を伴った点数だと思いました」。一方、製造業に比べるとそもそも環境負荷が高くないサービス業などは、サプライチェーンを巻き込んだ取り組みなどに手を出しづらく、業種として点数をとりづらいという背景があるようだ。

対内的には、環境セクションの内容は社内にアピールしやすく共感も得られやすいことから、社内での取り組みを加速化させることもできそうだ。

「この項目に、『リモートワークにおける環境管理(エネルギー効率など、ホームオフィスでの環境管理について従業員と情報共有している、オフィス用品について環境に好ましいベンダーのリストが従業員に支給される=グリーン調達など)』や『社内のリサイクル活動』などの項目がありますが、これを社内プロジェクトとして社員に振り、タスク化している企業もあります。工夫しながら自分たちらしい手法を編み出し、楽しみながら実践できるという点で、企業にとっても社員にとってもメリットがありそう。前述の、点数のとりづらいサービス業などにとっても取り組みやすい内容になっていますから、ぜひチャレンジしていただきたいと思います」

B Corp認証企業の連携が、社会を変えていく

企業を取り巻く環境問題を一つの企業、一つの国家が解決するのは不可能だ。企業同士が手を取り合って社会に大きなうねりを起こし、政府への提言を行っていく――それがB Corp認証機関である〈B Lab〉の考え方だ。

「B Corp認証を取得している化粧品会社から成る〈B Beauty〉という連合があります。設立時はそれぞれの知見を交換し合う勉強会などを実施していましたが、今年からは団体のなかで独自にCO2削減目標を設け、それに向けての取り組みを各社が行っています。また、COP25開催当時(2019年)、各国が2050年までのネットゼロを目指すなか、B Corpのコミュニティでは20年前倒して2030年までのカーボンニュートラルを目指すことを掲げ、B Corp認証企業を中心とする1800社以上が署名しました。このように、B Corpコミュニティが先導役となって社会へポジティブなインパクトを与えようとしているのがこのムーブメントの面白さだと感じます」

とくに「環境」セクションでは設問の内容にフレキシビリティがあり、その設問でなにを求められているのかを正確に読み取り、自分たちの文脈で表現する作業が必要になる。たとえば環境負荷が比較的高い農業や建設業といった分野では、それぞれのジャンルに特化した質問が登場する。アメリカ基準で設定されている質問が多く、日本のビジネス環境にスライドしづらいのだが、環境マネジメントの管理に取り組んでおり、その内容を主張できれば、アメリカの基準を満たさずとも認められる可能性が高いという。なぜBIAに回答するのか、B Corpに何を求めるのか、ビジネスを通じて何を実現したいのか。あらためてその本質に向き合うことが求められるのだ。

「環境に配慮したビジネスを行っていた企業が、BIAをきっかけに人権やガバナンスに配慮した社内制度の整備に取りかかった、というような事例も耳にします。気候変動をきっかけに人種差別や人権問題など社会を取り巻くさまざまな課題に向き合うことができたら、それは企業にとって大きな成長となるのではないでしょうか」