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2030年までに製品の平均カーボンフットプリントをほぼ「ゼロ」にするという⽬標を掲げるAllbirds。達成へのプロセスは年間のサステナビリティレポートを公開することで、あらゆるステークホルダーに対して透明性を持っています。ビジネスの力で気候変動の逆転に挑戦するAllbirdsとB Corp認証にはどんな共通項があるのでしょうか。

3月11日に開催された〈Meet the B〉では、この日のために来日したサステナビリティオフィサー ハナ カジムラさんがトークセッションに登壇しました。

トーク1. 「いい会社が作る日本の『ローカル』な未来」地域を豊かに

トーク1.「B Corpのリーダーに聞く!『グローバルブランド』の現在地」

「B Corpのリーダーに聞く!『グローバルブランド』の現在地」

〈登壇者紹介(インタビュー)〉

ハナ・カジムラさん Allbirds, Inc. Head of Sustainability

Allbirdsのサステナビリティをリードし、製品、サプライチェーン、オペレーションなどビジネスのあらゆる側面と、環境と社会のサステナビリティを統合する責任を担う。サステナビリティや革新的な取り組みを、分かりやすく魅力的なストーリーに伝える才能に溢れる。Allbirds入社前は、Bain & Companyで経営コンサルティングとして、テクノロジー、ヘルスケア、プライベートエクイティ、エネルギーなどのアドバイスをFortune 500社に提供。またGoogle XやEnvironmental Defense Fundとクリーンエネルギープロジェクトにも携わる。スタンフォード大学 地球科学部にて理学士号取得。

宮武 徹郎さん  Off Topic株式会社 代表取締役

アメリカのバブソン大学を卒業したのち、事業会社の投資部門で北米スタートアップの投資に主に従事する。2021年にOff Topic株式会社を立ち上げ、アメリカを中心とする最新テックニュースやスタートアップ、ビジネス情報、カルチャーなど解説するポッドキャスト番組「Off Topic」を運営。ミレニアル世代、Z世代、α世代をターゲットとする海外ブランドの最新動向や、インフルエンサーなどの個人が生み出す「クリエイターエコノミー」の世界的潮流など、グローバルな情報をいち早く深掘りする同番組は、2022年に「Spotify NEXT クリエイター賞」を授賞している。

オールバーズの取り組みを証明できるB Corp認証

ハナさん(以下、ハ))私がオールバーズに入社したのは5年半前です。会社の立ち上げは7年前なので、ほとんど初期の頃からメンバーとしてやってきました。最初は50人くらいの小さな会社でしたが、今は世界で認知されるまでになりました。


ハナ・カジムラさん  Allbirds,Inc. Head of Sustainability

オールバーズは単なるシューズメーカーとしてではなく、何か意味のある会社を作ろうという考えのもと始まりました。私たちがテーマにしたのは気候変動です。環境問題に対する取り組みを道標として、それに関するメッセージをしっかりと発信していく会社であることを決めました。その点でB Corp認証は大きな意味を持っています。

宮武さん(以下、宮))サステナビリティのトップとして、入社当初と今ではどのような変化を感じますか?


宮武 徹郎さん Off Topic株式会社代表取締役

ハ)随分変わりました。2016年当時、「サステナビリティ」という言葉自体が新しいものでした。会社の中で担当者をつけることも新しかった。

ただ、これからは特に若い人たちの間で、自分たちの価値観に合うモノを消費したいという欲求が高まるだろうと予測しました。今、「サステナビリティ」という言葉のインターネット検索数が10倍以上に増加したように、予測通りとなったわけです。オールバーズに限らず、多くの企業がサステナビリティをセールスポイントにして自分たちの製品やサービスは人や地球に優しいモノですと謳っていますよね。

宮)オールバーズのサステナビリティ目標を具体的に教えてください。

ハ)最初の2〜3年は、サステナビリティの取り組みをしっかりと証明するための期間であり、理念に沿ったものづくりを懸命に行いました。サステナビリティの目標を設定し始めたのはその期間を経た後です。自分たちの方針に沿ったビジネスであることに確信を持てた上で、目標を立てることができたという順番です。

2021年にようやく、中長期目標を掲げました。2025年までにカーボンフットプリントを半減させ、2030年までにはほぼゼロにするという内容です。

宮)取り組みをしっかりと証明できるまでの期間は表向きにしなかったとのことですが、公開に至るには何か基準がありましたか。

ハ)それにはB Corp認証が大きく関係していると思います。B Corpは一度認証を取得すると、3年後に再審査を受ける必要があります。3年後にBIAのスコアが伸びていることを示すことができれば、会社目標に対する報告ツールとして活用できると考えています。

宮)環境配慮のメッセージを最初から打ち出すのではなく、着実に進化させていったんですね。ハナさんは初めにプロダクトチームに配属されたとお聞きしましたが、そこではどんな役割だったのでしょうか?

ハ)メーカーにとって、プロダクトデザインをいかにするかがサステナビリティインパクトの要となります。オールバーズとしても、製品自体にサステナビリティが実現できていることが重要です。デザインから原料の選定、調達方法のステージとなるプロダクトチームの方針を決定すべく、サステナビリティの責任者としてリードしました。商品開発担当やデザイナーに対して私が教える立場でしたが、今ではもう彼らにノウハウが蓄積されています。

宮)外部へ発信する前に社内の教育が行き届くようにしたんですね。サステナビリティについての教育にはどのくらいの期間がかかったのでしょうか?

ハ)すでに完了したというものではなく、現在進行形です。昨年、カーボンフットプリントを7%削減することが私たちの目標でした。新たな目標を達成するには社内で約20の異なるプロジェクトを同時にこなさなければいけませんでした。四半期に一度各プロジェクトリーダーを集めて情報交換や意見交換を繰り返し進めました。

宮)20のプロジェクトとは例えばどんな事例がありますか?

ハ)どの商品が、どんな素材で、何%ずつといったように分担されていることを想像してもらうとわかりやすいでしょうか。CO2排出が会社のどこで起こるのか、調達、製造、運搬などにおける排出量を把握して、それぞれどれくらい削減できるのかという考え方です。例えば、海上輸送への移行です。飛行機ではなく船に頼ることで、どのくらいの削減になるのかを計算したうえで移行を議論しました。海上輸送の割合は、2021年の85%から2022年には95%まで引き上げられました。

宮)素晴らしいですね。まさに、環境配慮に取り組む企業にとって、カーボンフットプリントのトラッキングが課題になっていますよね。オールバーズではどのような考えでどんな風にトラッキングしているのでしょうか。

ハ)たしかに複雑で常に様変わりしていますよね。たとえ詳しい数値は分からなくても、カーボンフットプリントの削減に貢献できる方向性が見えるようになります。不完全な情報の中で、会社として意思決定しないといけないことの難しさを理解していますが、とにかく始めることが大事だと思います。

宮)同じように取り組みたいと思うものの、金銭的コストがかかるものではないでしょうか。オールバーズは株主や従業員に対して、どのように両立し、説得していますか?

ハ)多くの企業が力を入れようとしている中で、大事な質問だと思います。従業員に関しては、給与などの待遇面で満足してもらえたら、就業継続率は高く留まるでしょう。また、先ほどお話しした海上輸送については、カーボンフットプリントだけでなく、コストが削減できるという両面でプラスといえます。

利益を出しながらサステナビリティにも取り組むいいビジネスをするには、コストベースのみでなく総体的に捉えなくてはいけないと思っています。

宮)非常に難しいポイントではありますが、たとえリスクを追ったとしても、会社としての意思決定をするということですよね。

今後はより低コストで環境負荷の低い製品を開発できるようなイノベーションやテクノロジーが重要になると思います。オールバーズはシューズメーカーとして、新しい素材開発のテクノロジーに投資したり、あるいは自社開発されてきましたよね。

ハ)私たちが使う素材もテクノロジーで解決できることが多いと思います。アパレル業界としては、ようやくサステナビリティ製品が普及段階に入ってきたのではないでしょうか。

最初の開発時点ではかなりの投資が必要ですが、それが普及するにつれて単価が下がります。環境配慮にしっかりと取り組んでいながら安価な商品がどんどん広がっていくでしょう。

私たちが目指す、2030年までにカーボンフットプリントほぼ0の目標が達成されれば、そこから先はもっと多くの製品を環境負荷なく作ることが実現し、理想的な世の中に近づけるのではないでしょうか。

宮)ありがとうございます。最後に、今サステナビリティを推し進める企業が多い中で、「グリーンウォッシング」が問題視されています。しっかりと取り組んでいるからこそ実際にプロモーションの役目を果たす部分はあると思うのですが、ハナさんはどうお考えになりますか?

ハ)たしかにグリーンウォッシングは問題になっていますよね。しっかりと監視して誇大していないかをチェックしようとする動きが広まっていることを理解しています。ムーブメントにおいては、社会が監視機能を持つこともプロモーションとして広げることも両方大事だと思います。

逆に、指摘を受けないよう完璧にしてから宣伝しようとすることもありますが、誰にとっても新しい取り組みですから完璧であることは無理なんです。できていないことや課題を含めて開示することで透明性を確保して、紛い物ではないということを示すのが良いのではないでしょうか。

私たちも未達成なことや改善ポイントをレポーティングで開示するようにしています。その正直なレポーティングに対する周りの反応はむしろポジティブです。翌年、改善できたという報告にとても喜んでもらえるのです。

宮)オールバーズが成長し続ける姿はとても参考になりますね。みなさんの企業も正直にレポートを開示するところから始めてみてはいかがでしょうか。

株式会社アルティコはB Corp認証取得を目指し、先日ついにBIAを提出しました。審査はこれからですが、見えてきた進むべき方向に向かって歩み始めたところです。ハナさんがいうように、方向性を見出せることが重要で、そのために始めてみることなのだというコメントは、私たちの取り組み方について答え合わせができたようでした。

〈Meet the B〉は会場を埋め尽くすほどたくさんの方が集まり、同じ視点を持つ企業がこんなにも多く在ることに心強さを感じました。今後もB Corpにまつわる情報をお伝えしていきます。

トーク1.「いい会社が作る日本の『ローカル』な未来」地域を豊かに