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ナイキは、2022年会計年度のインパクトレポートを発表し、パーパス(企業目的)の全領域における進捗を公開した。ステークホルダーとなる「従業員」、「コミュニティ」、「地球」が構成要素となり、それぞれに対して2025年までの目標を設定することで、しっかりとした変化を生み出すための責任を示している。

世界最大のスポーツメーカーが掲げるパーパスとは。すべてのアスリートの未来のためにフォーカスすることとは。設定された29の目標とその進捗から、その全容が見えてくる。

インパクトサマリー:女性や女の子が活躍する世界

ナイキが目指すもの、それは女性や女の子が活躍する世界をつくることだ。明るい未来には、女性や女の子を含むアスリートたちが、声をあげ、人々に刺激を与え、誇りある地球の守護者として活躍できる環境がなくてはならない。インパクトレポートの導入となるサマリーの中核を占め、特に重視していることがわかる。

ナイキの考える“アスリート”とは、共同設立者ビル・バウワーマンによる『IF YOU HAVE A BODY, YOU ARE AN ATHLETE(身体さえあれば誰もがアスリートである)』という言葉に象徴される。

・今年、37万5,000人以上の女の子が地域の遊びやスポーツプログラムに参加した
(すぐ近くに、インクルーシブで参加しやすい遊び場を提供している)

・2022年度、NIKEのトレーニングツールを使って1万7,000人のコーチをサポートした
(価値観の柔軟な女性コーチが、若いトランスジェンダーのアスリートのチーム参加を歓迎している。皆がサポートされ、受け入れられていると感じている環境が広がりつつある)

また、地球環境への取り組みも、最も取り上げるべき項目だ。

・埋め立てられるはずだった廃棄物の97%を転用し、72%リサイクルした
・2020年以降、93%の再生可能電力など複数の手段により、スコープ1および2の排出量を64%削減した

自分がしっかりと認識、配慮されていると感じられるような女性たちへの支援と、スポーツの場を守るためにも地球環境のソリューション創造が大きなテーマとなっている。

PEPLE:従業員

「従業員」のカテゴリには次のような項目が並ぶ。

〈採用と雇用〉
目標
世界中のコーポレート従業員に占める女性の割合を50%、リーダー的地位に占める女性の割合を45%に

指標と進捗
・世界中の従業員に占める女性の割合 
FY20:50.2%  FY21:50.4%  FY22:51.1%(達成)
・リーダー的地位に占める女性の割合 
FY20:39.3%  FY21:43.0%  FY22:44.1%(未達)

〈ビジネスの多様性とインクルージョン〉
目標
多様なサプライヤーに対する累積支出を10億ドルに

指標と進捗
多様性を持つサプライヤーへの支出額(累積)*
FY20:―  FY21:2億8,200万ドル  FY22:7億7,700万ドル(未達)

*) 多様性を持つサプライヤーとは、米国市民または合法的な永住権保持者である多様性を持つ人員により、過半数 (51%以上)が所有、運営、経営、管理されているサプライヤーのこと。「多様性を持つ人員」とは、マイノリティ、 女性、障がい者、LGBTQおよび/または退役軍人と定義される。
(マイノリティとは、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック、アジア系アメリカ人、アメリカ先住民、太平洋諸島民など、米国に住む少数民族を指している)

〈健康と安全(サプライヤー)〉
目標
戦略的サプライヤー*の100%が健康で安全な職場を構築している

指標と進捗
安全衛生成熟度レベル3のサプライヤーの割合
FY20:22%  FY21:27%  FY22:46%(未達)

*)戦略的サプライヤー:フットウェアとアパレルの総生産量の約80%を占めるサプライヤー
また、「健康で安全な職場」とは、安全文化成熟度評価において、安全レベル3に達していなければならない

2022年度、ナイキの全世界の労働力の51%を女性が占め、平等の実現を果たした。また、女性と米国の人種的・民族的マイノリティに対して賃金平等を維持し、リーダーシップの多様化も継続してきた。公平な給与とレプレゼンテーションがコミュニティに力を与えるという考えのもと、あらゆる階層の女性のキャリアアップを、業界をリードするプログラムの導入・実施などで支援している。

さらに、内部に留まらず、多数の女性主導の企業を含む多様なサプライヤーに対して、過去2会計年度で累計7億7,700 万ドルの支出を行い、この課題にコミットしてきた。

PLAY:コミュニティ

「コミュニティ」のカテゴリには次のような項目が並ぶ。

〈インクルーシブなコミュニティ〉
目標
誰でも使える競技場の提供と、人種間の不平等に取り組む組織のサポートに1億2,500万ドルを投資

指標と進捗
投資額(累積)
FY20:ー  FY21:3,660万ドル  FY22:6,960万ドル(未達)

投資やパートナーシップを通じて、ポジティブな変化を促すことに貢献した。サマリーに取り上げたように、パートナーの多様なプログラムを通じて、37万5,000人以上の女の子が遊びやスポーツに参加したことも、17,000 人以上のコーチに、子どもたちのためにより包括的な体験を生み出すためのリソースを提供したこともそのエビデンスになる。また、ブラック・コミュニティ・コミットメント(BCC)に重点をおき、世界中のコミュニティに総額1億4,900 万ドル(前年度の税引前利益の 2.24%に相当)を投資している。

PLANET:地球 

「地球」のカテゴリには次のような項目が並ぶ。

〈脱炭素〉
目標
100%再生可能な電力と輸送手段の電化により、ナイキが所有または運営する施設の温室効果ガス(GHG)排出量を絶対量で70%削減する

指標と進捗
・所有または運営する施設の温室効果ガス(GHG)排出量
FY20:213,152  FY21:122,882  FY22:75,768(目標-70%に対し-64%で、未達)

・再生可能電力の割合
FY20:48%  FY21:78%  FY22:93%(目標100%に対し93%で、未達)

2022年度、脱酸素の分野においても大規模で画期的な施策を実現した。所有または運営施設の風力発電や太陽光発電、電力購入契約、グリーン電力証書購入など、長年に渡り再生可能エネルギー活用に取り組んできた結果、敷地内の温室効果ガス(GHG)排出量を21年度から22年度にかけて、約40%削減に成功した。

また、サステナビリティに配慮したアイテムを増やすため、環境にやさしい素材を39%使用し、その過程で182,000トン以上の温室効果ガス排出を削減。NIKE Fowardをはじめとする、アパレル生産におけるCO2排出量を削減するための素材プラットフォームと製造方法のイノベーションも発表している。

各地の取り組み、2025年に向けて

さらに、ナイキのパーパスを表すアジア、ラテンアメリカの取り組み事例が紹介されている。日本のハイライトをピックアップ。

DCにおける再生可能エネルギー利用率 100%

日本のロジスティクスチームは、太陽光発電と風力発電を組み合わせた再生可能エネルギーを確保し、これにより日本国内の3つの配送センターの電力需要の100%がまかなわれている。

キッズプログラム〈JUMP-JAM〉の拡大

ナイキジャパンは、スポーツと自由な遊びを組み合わせた、遊びを中心とする身体活動プログラム〈JUMP-JAM〉を、東京都内の132の児童館に拡大した。

〈JUMP-JAM〉
2017年、児童健全育成推進財団と協働で設立。
スポーツを楽しむために必要な体力、敏捷性、筋力、協調運動能力の育成に焦点を当て、子どもたちに必要な社会性や生活力の育成を支援している。訓練を受けたスタッフがいる安全な環境で行われ、男女を問わず参加でき、異なる年齢の子どもたちが交流する機会となっている。

NIKE Inc.社長兼CEO ジョン・ドナホーは、“スポーツを通じて世界を前進させる”ことがナイキの企業目的であるとし、2025年の目標達成に向けてさらなる歩みを進めるという。

完璧であることよりも前進することにこだわり、ソリューションを生み出し、自分たちの影響力をアスリートのために活用することを目指す。その具体性と意欲が込められたインパクトレポートは、ユーザーである私たちにとっても新たな気づきを与えてくれる。

2022年会計年度インパクトレポート全文はこちら