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にっこり微笑む太陽や地球、カラフルかつ素朴なタッチで描かれる、カメやクマなど地球に暮らす動物たち。パッケージの可愛らしいイラストが目を引くこちらは、環境再生型オーガニックブランド、〈MammaBaby(ママベビー)〉のプロダクトだ。「子どもたちが生きる地球の未来へ」をブランドのミッションに掲げる〈MammaBaby〉の取り組みは、ビジュアルの可愛らしさから想像もつかないほどシビアなものだ。

「“子ども”、“地球環境”、“未来”というワードは、マーケティングやPR戦術に用いる言葉ではありません。私たちはこれらの言葉に対して、もっと真摯な気持ちで向き合っていきたいと考えています」というのは、〈MammaBaby〉の日本における事業責任者。〈MammaBaby〉は今年5月に〈B Corp〉認証を取得したが、そのプロセスにおいては代表の杉原良さんとともに彼が主導的な役割を担った。

「創業当時から、ビジネスにおける持続可能性とは?子どもたちに向き合うこととは?自分たちのビジネスが社会にどんなポジティブな影響を与えられるだろうか?そんなことを自問自答してきました。ワクワクする気持ちをもって、〈MammaBaby〉が普及すればするほど、地球にも自分たちにも、地球に暮らすすべての生き物にとってメリットのあるビジネスに取り組んでいこう。そうした自分たちの姿勢と〈B Corp〉には通じるところがあると思い、2020年に認証取得に動き出したのです」

一歩ずつ推し進めてきたカーボンニュートラル

1944年にイタリアで生まれた〈MammaBaby〉は、医療機関に向けたオーガニック&ヴィーガン製品を展開する製薬会社発のブランドだ。創業者の子どもが重いアトピー症状に悩まされていたことをきっかけに、誰もが安心して使える良質なプロダクトの開発をスタートした。製品の製造には水が欠かせないことから、ブランド立ち上げ当初から水質の改善を目指して環境再生型農業を広げる活動に取り組んできた。

「農薬や化学肥料を用いる慣行農業では土壌の微生物にダメージを与え、土中の生態系を破壊してしまいます。一方、土壌の有機物を生かす環境再生型農業では、空気中に排出されるCO2を吸収してくれる健康な土壌を育みます。環境になるべく負荷をかけず、生物多様性を育み、水質を改善して健康な植物を育む。〈MammaBaby〉では、こうしたポジティブな循環を生み出す農業を大切にしてきました」

もうひとつ、ブランドとして中長期的に取り組む目標としているのが、カーボンニュートラルだ。
「ビジネスを営む以上、CO2の排出をゼロにすることはできません。だからこそ、排出したCO2を回収することは企業の責任だと考えています。親として子どもたちに『きちんと片付けなさい』といつも言って聞かせていますから、同じように自分たちもビジネスの後片付けを行わなくてはなりません」。

2021年に、自社が直接排出するCO2に加え、サプライチェーンが排出するCO2においてカーボンニュートラルを達成した。「2030年に1製品あたりのCO2排出量を実質ゼロ(現在は1製品あたり2.54kg)&カーボンインセット(※)を推進してカーボンネガティブを実現する」という目標を立てており、それに向かってさまざまなアクションに取り組んでいるところだ。

※自社とは無関係のバリューチェーンからカーボンクレジットを購入することで排出するCO2を相殺するカーボンオフセットに対し、カーボンインセットは自社のサプライチェーンのなかでCO2の排出削減や吸収を行う。サプライチェーン全体で取り組むため、関係者全員が意識を共有し、より強固なパートナーシップを構築できる、自然への投資を循環させることができる、地域社会にポジティブな影響を与えるといったメリットがある。具体的には原材料の生産に携わる農場や隣接地域において環境再生型農業やアグロフォレストリーを行い、CO2を吸収するなど。

工場で見つけた「ゼロウェイスト」のアイデア



MammaBaby〉らしい「後片付け」の施策の一つが、廃棄容器ゼロを目指す「ゼロウェイストチャレンジ」だ。これまで容器を製造する工場では、品質管理のために必要以上に高い検査基準を求められ、10数%の容器が廃棄されてきた。たとえば、容器を製造する際、染料の切り替えに伴って容器の色が混ざるという不具合が生じる。「容器の色が指定と異なる」という不具合のために、およそ5%の容器が廃棄されている。「ゼロウェイストチャレンジ」は。こうした容器を有効活用して資源の無駄使いをやめようという取り組みである。

「容器を製造する工場を訪れた際、廃棄される予定の大量の容器を目にしました。『品質基準をクリアしていないから』ということでしたが、さまざまな色合いの容器は見た目にも美しく、廃棄する必要はないんじゃない?と思ったんです。容器の性能には問題がなく、ただ、『メーカーから求められているから』、『さまざまな色が混在すると消費者が混乱するから』というだけで資源が無駄になるのです。ならば、自分たちのカスタマーに理解を求め、有効活用すればいいんだと考えました」

廃棄予定の容器の全量を少しだけリーズナブルに譲ってもらい、その分、価格を抑えた製品を「お試し品」として消費者に提供することにした。工場側にとっては売り上げになるばかりか、これまで払っていた廃棄代を払わずに済む。〈MammaBaby〉は新たに容器を製造することなく、ユニークな容器を手に入れられる。消費者はカラフルなボトルに入った製品を、リーズナブルに手にできる。ちょっと発想を変えただけで、作り手も買い手も地球環境も、みんながハッピーになれる取り組みだった。



「私たちにとっての“本質的な持続可能性”とは、自分たちのアイデアやクリエイティビティを生かして従来の価値観や見方を少し変えることで、誰もなにも我慢せず、地球に暮らすみんなが幸せになることだと考えています。価値観や見方を変えるときに必要なのは、植物や動物、地球など、人間以外の視点をもつことです。容器の話で例えるなら、『品質管理上、面倒だから廃棄しよう』というのは人間の視点ですが、地球の視点では『地球の資源を使って作ったなら、無駄に捨てるのはやめよう』となるはず。こんな風にちょっと視点を変えてみれば、クリエイティビティやアイデアの幅はぐんと広がって、自分たちもワクワクできます。このプロセスが楽しいから、無理なく続けていけるんです」

点のアクションは繋がりをもった線となる

一昔前なら、小売店もボトルの色が混在する商品の取り扱いをいやがったかもしれない。けれども時代は少しずつ変わっている。今回のチャレンジでは、小売店が商品を快く受けいれたばかりか、ポップを作ってコーナー展開してくれるなど、取り組み自体を後押ししてくれた。

「これまでは工場とメーカー、小売店の間にそれぞれ主従関係が派生していました。その関係の中では、立場が下のものは声をあげづらかった。けれども、個々の企業ができるアクションには限界があります。一つのサプライチェーンにいる企業同士が等しい立場で実験をしたり作戦を立てたり、みんなで取り組むことで“個”のアクションを“線”に変える、そんな時代になったと感じています」

〈MammaBaby〉のスタッフたちは、サプライチェーンのなかでのこうした連携に、〈B Corp〉認証が一役買ってくれているように感じている。工場や流通の現場に出かけ、一歩踏み込んだ提言をできるようになったし、彼らも新しい施策に対してより協力的になってくれた。

「私たちは小さな会社ですから、自分たちの取り組みが社会を変えられるとは思っていません。このやりかたが絶対だとも思っていません。しかし、こうした取り組みがより大きな企業を変えるきっかけになる可能性はあります」

大切なことは、子どもたちが生きる地球の未来に思いを馳せて、対立や分断を生まず、サプライチェーンや消費者と連携しながら“線”のアクションを行っていくこと。それが大きなうねりとなり、社会や地球にポジティブな影響を生み出すと〈MammaBaby〉は信じている。

〈MammaBaby〉公式サイト:mammababy.jp
〈MammaBaby〉オンラインショップ:mammababy.jp/collections