トレーニングからリハビリまで
“身体と対話もできる”「ノルディックウォーキング」
編集部女子チームが、カラダを張って話題のトレーニングをレポートする「あのトレーニングをやってみた」。今回は、2本のポールを使って歩くフィンランド生まれのスポーツ「ノルディックウォーキング」。無謀なランニングで膝を痛め、いまだランニング戦線に復帰しきれていないワタクシが、前回の「ベアフット・ランニング」に引き続き新たなチャクラを開くべく、「ノルディックウォーキング」の世界に足を踏み入れてみました。
始まりは、歩くスキーのクロスカントリースキー
ノルディック…と言えば、昭和生まれの方にはおなじみ、そう双子の荻原兄弟のアレ。荻原兄が90年代に一時代を築いたノルディック複合が有名ですね。華やかなジャンプのほうではなく、雪の平地をひたすら歩くクロスカントリースキーの夏場のトレーニングから生まれたのが、「ノルディックウォーキング」なのです。
フィンランドから始まり、ヨーロッパでは運動効果の高いスポーツとしてかなりポピュラーだというこのノルディックウォーキング(フィンランドでは、スーパーの入り口などに、傘立てのようにポール立てが置いてあるとか!)、日本でもじわじわとその人気が広がっているらしい。
ということで、日本ノルディックフィットネス協会(JNFA)認定/ベーシックインストラクターである眞田比呂美さんに、一から基本を教わることに。今回参加したのは、「早朝ノルディックウォーキング@世田谷」、通称「朝ノル」。朝6時15分に用賀駅集合。天気は快晴。新緑が美しい用賀駅近くの小さな公園から朝ノルスタートです!
全身の筋肉の9割を使い、消費エネルギー2割増しウォーキング
「ノルディックウォーキングは、2本のポールによって全身を使う有酸素運動。通常のウォーキングと比べて、エネルギー消費量が2割増しになると言われているんですよ」と眞田さん。
ポールを地面に突いて後方に押し出し推進力にすることで、上半身も積極的に使われ、なんと全身の筋肉の約90%を使用するとか。なおかつ、2本のポールが加わることで“四本足”で歩行することとなり、「足首、膝、腰など下半身への負担は最大40%軽減される」という研究結果も報告されている…。すごいです。サボっては突然走り出すという無茶な走り方で膝をいためた私のような人間(毎度おなじみのへたれランナー)にとっては、まさに救世主のようなスポーツの予感!
自然の腕の振りを利用して、ポールで身体を前へ押し出す!
早速ポールの長さの調整の仕方、握り方などをレクチャーしてもらいます。
ポールの長さは身長×0.68。ポールの先を地面に垂直に立てた時にヒジがだいたい90度ぐらいになる感じ。
そして、ノルディックウォーキングの大きなポイントになるのが、ポールのグリップに付いたストラップ。マジックテープで手に装着するこのストラップによって、グリップをきつく握ることなく、リラックスした状態でポールをコントロールできるのです。軽〜く握った状態で地面を突いて、そのまま後方にポールを押し出したときには、手は自然とグリップから離れた状態に。ナチュラルな腕の振りを利用して上腕部の筋肉が活発に運動することで、効果が得られるのがノルディックウォーキングの特徴。うーん、実際やってみてはじめて納得。
ポールを使って全身のストレッチをしたら、次は、歩き方の練習へ。まずは、グリップを握らずポールをぶら下げたまま先端を地面に引きずりながら歩いてみる。そこに腕の振りをつけてみる。ポールが自然にひっかかりを感じる場所を見つけたら、次にグリップを握ってしっかりポールを突き、身体を押し出すようにして前進します。押しだす腕は自然にポールと一体になり、まるで1本の長い腕のように後方へと伸びやかに。
肩甲骨から腕を動かして、姿勢改善やシェイプアップにも
いよいよウォーキングスタート。用賀駅から砧公園へ向かうアスファルトなど地面が硬い道では、ラバー製のアスファルトパッドをつけて。パッドが滑って押しがきかない場所では、周囲や環境の安全性を確認した上でパッドを外し、金属チップを使い進みます。
「肩甲骨からの腕の動きを意識して、しっかりポールを押して歩いてみてください」と眞田さん。
2本のポールがあるだけで、ウォーキングとはまた違った世界が現れるからフシギ。ポールを突いて前に進む、その動作の繰り返しが、見た目よりもずっと身体全体、特に上半身を使うので、とってもエクササイズっぽいのです。ポールを地面に突いて後ろへ、その推進力で前へ、地面に突いて後ろへ、その推進力で前へ…。トランス状態に入れそうな心地よいリピート運動。
さらに15分ほど経過すると早くも腕に疲れを感じ始め、女子の大敵、二の腕の贅肉のシェイプアップにも効くと確信。ポールを持つことで自然と姿勢も正されて、ウエストシェイプやヒップアップにも効果がありそう。いうことなしじゃあないですか!
全身を使うことで、自分の身体への意識が目覚める
「ノルディックウォーキングをしていると、普段眠っている意識が目覚めてきます。“四つ足”で歩くことが、身体に意識を向けて歩くことを可能にしてくれる。自分の身体のゆがみやその日の体調など、さまざまな自分の身体の箇所についてどんどん敏感になりますよ」(眞田さん)。
2本のポールを使うというだけで、一体なぜ意識が目覚める? と思う方、聞いてくださいな。例えば、右利きの私。右手でポールを突くときに無意識に左よりも力が入ってしまっていて、右腕の方が左腕よりも重たく疲れてしまいました。自分って実はこんなにアンバランスに歩いているの?どうしたら左右均等に腕を振れる? ランニングでいためるのは常に右足なのも何か関係ある?…そんな風に、ポールと共に歩きながら、自分の身体の細部にまで神経が張り巡らされていくこの感覚。美しくいえば“身体との対話”。これです。
「たとえば緊張と疲労感が大きい右側は休ませて、左側のポールだけで押して歩く時間を少し入れてみる。無理に両腕を同じにしようとしないで、自分のリズムを刻みながら片腕づつ使って、その違いも楽しみましょう。やがて無意識に同じ力でできるようになったときに、左右のバランスが整っているかもしれません。そうやって、日々の歩きの中で少しずつ体感しながら自分で調整していくこともできる。それもノルディックウォーキングの魅力ですね」
ポールの長さや歩幅によって速度も運動強度も変えられるので、体力向上や姿勢改善のフィットネスレベルから、筋力アップや心肺機能アップのためのアスリートのトレーニング、怪我した時のリハビリまで、目的や体力に合わせても行える。うーん、ノルディックウォーキングって見た目よりもずっとずっと奥が深い!また新たなチャクラが開いちゃったようです。あらゆるスポーツと並行して、末永く幅広い付き合い方ができるノルディックウォーキング。一度体験をオススメします! 特に、これからの季節最高に気持ちのいい朝ノルをぜひ!
今回のメニュー
「女性限定 早朝ノルディックウォーキング@世田谷」
参加費 未経験者700円、経験者500円
レンタルポール代500円
クレソン・ナチュラルセラピー
2001年、予防とセルフケアにおいて、アロマセラピーとフラワーエッセンスを心と身体の架け橋にしてスタートしたセラピールーム。野外ワークやセラピーウォーク、ノルディックウォーキングなど、日常に根付いた行動を、五感を通して更に深化させるセルフケアを提供。
http://cresson-n-therapy.com/
ノルディックウォーキングのイベントや講習会は、下記サイトなどでチェックを。
NPO法人日本ノルディックフィットネス協会(JNFA)
http://jnfa.jp/
(イラスト 鈴木仁/文 飯島由美子)
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