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告知と同時に50人の参加枠があっという間に埋まり、onyourmarkのNEWSで掲載した際には既に抽選になっていたという人気イベント、”美味しくて自然で、身体が本来持つ力強さを引き出す食べものについて考える”『URTRA LAUNCH』の第一回がIID世田谷ものづくり学校の一角で開催されました。

主宰したのは先日、八ヶ岳の100マイルレースを走りきったdomingoこと近田耕一郎さん。メンバー総数100人にせまる勢いの新興トレイルランニングチーム「トレイル鳥羽ちゃん」のリーダーでもあります。

イベントで供される料理は、チームメンバーの手も借りてオシャレなリアカーで運ばれました

主催者のdomingoさんはトレランチーム「トレイル鳥羽ちゃん」のリーダー

その『URTARA LUNCH』の趣旨はズバリ、ナチュラルランニングを愛する人のための栄養座学会。レースに出場するような中堅以上のランナーの間では、ジェルやサプリメントの使用が当たり前のような空気がありますよね。記録を狙うような場合には効率的な栄養摂取として実効性はありますが、それこそナチュラルランニングを志向する皆さんにとっては、工夫や改善の余地のある領域なのではないでしょうか。こうしたスポーツと栄養というテーマをヴィーガンやベジタリアン、ナチュラルフードといった切り口から、参加者みんなで情報を持ち寄り、議論を深めていきましょうというのが『ULTRA LUNCH』なのだそうです。

この日のプログラムは、domingoさんからのレポート発表(スポーツをする人にとってのビタミンB群)、ナチュラルフードを生活に取り込むための裏技=ハッキング、そして今回のテーマと重なるウルトラランナー、スコット・ジュレクの著書『EAT & RUN』(2/23にNHK出版より発売予定)の紹介がゲストの編集者松島倫明さんによって行われた後、料理の試食と参加者によるディスカッションが行われるという盛りだくさんの内容となりました。

スポーツをする人にとっての基本、ビタミンB群

第一回のレポートのテーマとなったのはビタミンB群。3大栄養素である炭水化物、脂肪、タンパク質をサポートし、栄養の代謝をつかさどる身体運動の基礎になるビタミンです。ビタミンB1は、炭水化物の代謝を助け、B2は脂肪の代謝を促します。レポートではビタミンB群は水溶性のため、過剰摂取しても汗や尿で排出されるものの、サプリなどで日常的に必要量以上に摂取することで”サプリ慣れ”を起こし、普段の食事からの吸収能力が落ちるのではないかと問題提起されました。

また、ビタミンB群とよく連携されるミネラルとしてカルシウムとマグネシウムが取り上げられました。特にエンデュランススポーツに取り組む人にとって気になる”けいれん”に関しては、このカルシウムとマグネシウムは血液中に2:1のバランスで存在し、このバランスが大きく崩れると筋肉の働きがスムーズでなくなり、けいれんが起こる原因ともなるとの指摘がありました。

このあたり、onyourmarkユーザーの皆さんもレポートされた下記食材を参考に、過不足ない摂取を意識してみることをお勧めします。

レポートより
ビタミンB1を豊富に含む食材
豚肉、レバー、うなぎ、かつお、鮭、大豆、落花生や大豆などの豆類
ビタミンB2を豊富に含む食材
納豆、アーモンド、牛レバー、卵

マグネシウムを豊富に含む食材
豆類、藻類、ナッツ、小麦胚芽
カルシウムを豊富に含む食材
乳製品、煮干魚、ナッツ、小松菜、切り干し大根

レポートの発表ではみなさん真剣な表情で聴き入ります

無理のない楽しい食事を普段から摂ることでスポーツをより自然に楽しむ裏技=ハッキング

栄養素を細かく気にしていちいち量を量るのを大変に感じる、気持ちが持たないというのでは、いくら知識を得ても意味がありません。そこで提唱されたのが、裏技=ハッキングという考え方。第一回目のハックは「先人の知恵をいいとこ取りする」でした。今回例に上げられたのは、インドの伝統的医学「アーユルヴェーダ」や世界に広がった食餌体系「マクロビオティック」、日本料理の正式な膳立てである「本膳」という考え方です。

なかでも、アーユールヴェーダの”一食六味”というアイデア。これは、一食の中で甘味、塩味、酸味、苦味、辛味、渋味をすべて摂るよう心がけましょうというもの。これによって、食事に対する物足りなさを減じる効果が得られるそう。特に渋みや苦みなど取り入れ難いものは、野菜の皮を食べるとかスパイスを積極的に使ってみるということでカバーできるそうです。

今回の試食メニューには”ひよこ豆と大根おろしのカレー”、”にんじんのラペ”、”大根のレリッシュ”が供されましたが、クミン=苦み、ペッパー=辛み、酸味=果汁が効果的に使われていました。

レシピは公式ページに掲載されているので、是非挑戦してみて下さい。

今回の試食メニューは「ひよこ豆と大根おろしのカレー」「にんじんのラペ」「大根のレリッシュ」

ヴィーガンとして100マイルレース7連覇を成し遂げたスコット・ジュレク

続いてゲストのNHK出版編集者松島倫明さんより、ウルトラランナー、スコット・ジュレクの著書『EAT & RUN』の紹介が行われました(松島さんによるBest Effort Veganコラムも必読です)。100マイル(161km)を走破するウルトラトレイルレースの草分けといえるのが、シエラネバダ山脈のトレイルを走る「ウェスタン・ステイツ・エンデュランスラン」(以下WS)です。このWSを1999年から7連覇するという偉業を成し遂げたのがスコット・ジュレク。しかも彼はその7連覇をヴィーガン(卵や乳製品も摂らない完全菜食主義者)として達成したそうです。

『EAT & RUN』日本語版の編集者松島さんはあの『BORN TO RUN 走るために生まれた』を手がけた人物

そのジュレクの著書『EAT & RUN』はその名の通り、週に4日はマクドナルドに通っていたという彼が、いかにしてヴィーガンとなり、アスリートとして大成したかを告白した自叙伝。その中では、高校のスキー合宿で嫌いな野菜を沢山食べさせられて、身体がよく動くようになったという気づきから、アメリカ西海岸のベジタリアン文化からの影響、大学で理学療法士の勉強をして、病院でインターンを務めた経験、アスリートとしてタンパク質摂取を肉に依存せずにどうしていくか悩んだことなど、その試行錯誤の過程が赤裸々に綴られています。スポーツとナチュラルな食生活を両立してきたアスリートの先駆者として、今後この『ULTRA LUNCH 』ひいてはナチュラルなスポーツスタイルを目指す多くの人のモデルケースになることは間違いありません。

『EAT & RUN』は『BORN TO RUN 走るために生まれた』のようにランナーのバイブルとなりそうな予感です

ランナー自身の手によって深まるランニングカルチャー

最後は鎌倉の天然酵母を使った『KIBIYA』ベーカリーのパンとともに食事が配膳され、試食をしながらテーブルのあちこちで意見の交換が行われました。参加者の多くがランナーであり、実際にナチュラルな食生活を実践している方たちだったこともあって、普段の食生活や、行動食にいかにナチュラルフードを取り入れるかといった具体的な話題にまで花が咲きました。こうした知識を持ち寄るイベントが継続的に行われることによって、ランニングカルチャーがランナー自身の手によって豊かな広がりを見せ始めていることを実感できたイベントでした。

今回の『ULTRA LUNCH』はトレイルランニングのレースにちなんでAID1と位置づけられていますが、主催者のdomingoさんからは「次のAIDまで、各々のランニングライフを楽しんで下さい」との挨拶でイベントが締めくくられたのでした。

(文 onyourmark / 写真 Wataame