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(写真 後藤啓太 / 文 小泉咲子)

「スポーツやワークアウトをライフスタイルに」というonyourmarkの思いをかたちにすべく立ち上げた“Lifelong Sports”プロジェクト。
「名古屋ウィメンズマラソン」完走を目標に練習してきた大学生3人が、いよいよ本番を迎えます。

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岡本怜(22)OKAMOTO REI(写真右)
芝浦工業大学 システム理工学部4年 
小学校からバスケットを始め、高校3年生までやり続ける。部活引退時に、チームのメンバーが写真をコラージュし、メッセージを寄せてくれたアルバムは宝物。大学では、「これまでと違うことを」とヨット部に所属。毎週、江の島のボート場で練習してきた。大学時代は、ヨット部に所属。全日本学生ヨット連盟の委員長を務め、大会運営にも携わる。14年、10月に部を引退。今春、北海道大学大学院に入学予定。両親がホノルルマラソン経験者。

丹治紗里(23)TANJI SARI(写真中央)
慶応義塾大学 文学部4年
小学校ではサッカークラブ、中学校ではバスケットボール部に所属。慶応義塾ニューヨーク学院(高等部)時代にサッカー部とバスケット部に所属し、秋と冬はバスケットボール、春と夏はサッカーと、年間を通じてスポーツをしていた。3年生のときには、キャプテンも経験。大学入学後は、チアガールサークルへ。定期的に東京ディズニーシーでパフォーマンスを行っている。

丸山芹奈(22)MARUYAMA SERINA(写真左)
慶応義塾大学 環境情報学部4年
慶応義塾ニューヨーク学院(高等部)で、女子サッカー部に所属。小学校から、水泳を習っていて、今でもジムのプールで泳いでいる。これまでもっとも長く走ったのは、高校でのマラソン大会で1マイル(およそ1.6㎞)。秋入学のため、卒業予定は今年の9月。学校の寮に住んで同じ高校に通い、部活生活を送っていた丹治さんとは、帰国した今でも大親友。

本番前日、名古屋ドームでのEXPOではリラックスムード

練習期間は12月下旬から3月8日までの約2ヵ月半。初のフルマラソンを挑戦するにしてはあまりにも時間がなかった。だからこそ、コンスタントに走り続けることが必要不可欠だった。しかしながら、練習報告を兼ねたNIKE+アプリの画像送信は、ポツリポツリとしかこない。とくに、2月8日の20㎞走をしてからというものの、週1ペース。聞けば「20㎞走れた達成感でいっぱい」だったということで、結局、本番までに3人が走った距離は

丹治さん/116㎞(13回)
岡本さん/122㎞(12回)
丸山さん/101.5㎞(12回)、水泳6km(3回)

「週3回、こまめに走るより、まとめて1回ドンッと走る方が性に合っていて」と丹治さん。岡本さんも、大会直前に卒業旅行へ出掛け、シューズを持っていたものの走らずじまい。そして、20㎞走後、足の炎症を起こしてしまった丸山さんはレース直前までは走らず水泳トレーニングをとり入れることに。一昨年、真面目に練習を重ねフルマラソンを完走した筆者にしてみれば、この状況、不安を抱かずにはいられない。

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しかし、そんな大人たちの心配をよそに、本人たちはいたってマイペース。本番前日、ナゴヤドームで開催されたEXPOでも元気いっぱいに、さまざまなブースを見て回っていた。途中、同じく初フル完走を目指し、20km走を共にしたモデルのMARIKOさんとNIKEブースで再会し、マシンガントークで大盛り上がり! 「あれから走った?」「あまり走れなくって(笑)」試験前の女子高生のような会話を繰り広げ、あまり緊張感のない様子。

さらに、屋台コーナーでは目を輝かせ、お弁当をガッツリ食べた後にもかかわらず、ソフトクリームをぺろり。……ん!? この前のイベント後(#4参照)、NIKEアドバイザーの森実利コーチから、生クリームは消化に悪いから大会前は控えるように教えてもらったはずじゃ……。

「おだんごも食べたかったけど我慢しました!」
「うん、我慢した私たち、エライ!!」

あまりの無邪気さに、「この調子なら、明日は大丈夫だな」と不思議と思えた。フルマラソン前は、“こうしなきゃいけない”“あれはダメ”といった決まりが存在する。それらを厳格に守ることは、完走への近道だ。でも、美味しそうにソフトクリームを頬張る3人の姿から、「楽しむことがいちばん!」という初フル挑戦があってもいいと教えられた気がする。

ついに始まる42.195kmの長い旅

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これまで、タイツにランパンツを重ねていた3人だが、突如、タイツのみスタイルに。「ずっと抵抗感があったけど、人がやっているのを見たらスタイリッシュだなって」(岡本さん)「試してみたら、(岡本)怜が『脚が細く見える』って言ってくれて自信がつきました!」(丸山さん)

この日のドラマは、岡本さんがゼッケンをホテルに忘れたことから始まった。ホテル出発からわりと早めに気づいたので戻ることができ、なんとか事なきを得たが、さすがにテンションが落ちた岡本さん。それでも、スタートラインに立った時は、あわやのトラブルもどこへやら。3人とも会心の笑み!これから始まる42.195㎞で、自分たちの身に、何が起こるのか知らずに……。

3人とも快調に走り抜けた15km地点

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6分半/㎞で安定したペースで通過する丹治さん。ふだんは5分台後半/kmで走る彼女だが、本番ではやや抑えめということもあり足取りはしっかりしており、カメラに向かって手を振る余裕もあった。

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岡本さんと丸山さんは、ペースは7分半/㎞ほどで15㎞地点へ。20㎞走のときと同様、ふたりでペースを合わせて走る展開に安心していたのだが……。

初めて体験する27kmの壁

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30kmを目前にしても、ペースを崩さずに順調に走り続ける丹治さん。一方、岡本さんと丸山さんは15㎞を過ぎてすぐに分かれることに。27km地点でひとりで快走していたように見えた岡本さんだが、20㎞を過ぎた頃から、脚に痛みを感じていた。フルマラソンランナーであれば、誰もが想像できるであろういわゆる鈍痛を感じ始めていた。でも、

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「乗り越えて、ゴールすればきっとひと皮むけることができる」(岡本さん)

ひたすら、ゴールした後の新しい自分をイメージしながら走り続けた。

岡本さんと共に走っていた丸山さんは、この時点のGPS速報で20㎞をまだ通過していない。待てども暮らせども現れず、制限時間という四文字が頭をよぎる。

フルマラソン完走を目指して。3人の想いがそれぞれのかたちになる

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この間に、丹治さんは、トップバッターでゴール。記録は4時間47分55秒。25km過ぎから、7分台/kmにペースダウンしたものの、一度も歩くことなく走り切った。初フル挑戦でサブ5は立派と思いきや、実は4時間半を狙っていたとゴール後に明かす。

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「30㎞以降、脚全体が重くなってしまってツラかった。ほんとうに、ツラかったです。走っているときは、『もうやめたい』って何度も思ったし、泣きそうでした。でも、それじゃ絶対に後悔するって。『止まったら負け。やればできる!』って言い聞かせ続けました。目標よりも遅れちゃったことは悔しいけど、今は感無量!」(丹治さん)と涙が止まらない。
丹治さんのゴールから約10分後、岡本さんの姿が見えてきた。すでに目は赤い。記録は4時間58分14秒。
丹治さんと抱き合うと、肩をふるわせながら号泣。

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三人での初顔合わせで、「走るからには、結果を残したい」と語っていた岡本さん。目標タイムは言及してこなかったが、友達に目標を尋ねられて「5時間切り」と答えていたそうだ。そのときは、「テキトーに言った」つもりが、42.195㎞を走る中で、本当の目標に変わった。

「38㎞で一回止まって、歩いちゃったんです。40kmが近づいたときに、急に友達に話した5時間切りを思い出して、『これじゃ、ヤバい!』って(笑)。フルマラソンに挑戦して、後悔はまったくないです。マラソンって、走るまでは地味なイメージだったけど、ウェアはかわいいし、レース中も沿道がにぎやかだったし、想像していたよりずっと楽しかった!」(岡本さん)

最後のひとり、丸山さんはゴールできるのか!?

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ふたりの涙の抱擁から1時間後、丸山さんはようやく30㎞地点を通過していた。実は20㎞を超える前に腹痛に襲われ、休み休み走っていたという。ラップは20~25㎞が55分、25~30㎞が52分。30~35㎞にいたっては、1時間19分もかかっている。「リタイアも止む無しか」不穏な空気が流れ始める。先にゴールしていたふたりの顔も、不安で歪みっぱなしだ。走り続けていることだけはGPS速報で確認できたが、丸山さんの状況がわからないだけにもどかしい。スタートから6時間経っても、姿を現さない。彼女のゴールを祈り、待つことしかできない。

7時間の制限時間が刻々と迫り、スタッフは時計を気にし始める。そんなとき、丸山さんがドームに入ってきた。ひと目見て、体力的には限界なのが伝わってくる表情だが、しっかり走っている。一歩一歩、ゴールに近づく。

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3人揃って抱き合えたのは、スタートから6時間37分42秒が経ってからだった。
「やっと終わった……。うれしい」
振り絞るような声で語った、丸山さんの率直な感想だ。
少し落ち着いてから、42.195㎞を振り返ってもらうと、15㎞を過ぎてからすぐに岡本さんと分かれ、25kmを過ぎてからはずっと歩いてしまい、トイレに5回も立ち寄ったそう。それでも「自分を信じていた」と涙声。

「20㎞走のときもだったけど、緊張していたんだと思います。怜(岡本さん)が途中までいてくれて心強かったし、ふたりがゴールで待っていてくれてうれしい」となんとか言い終わると、また大粒の涙がブワッと溢れてくる。

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丸山さんは初顔合わせで「ネガティブな性格で新しいことに挑戦すること自体に緊張してしまい、これまで大きな目標を決めて達成した経験がない」と語っていた。今回のフルマラソンは、そんな自分を変えるための挑戦でもあった。「今までの芹奈(丸山さん)だったら、きっとあきらめてたよ。スゴイよ」と高校時代からの親友の丹治さんは、走り始めてからの丸山さんの変化を敏感に感じ取り、努力をねぎらった。42.195㎞完走は、彼女にとって大きな自信になったに違いない。

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涙、涙、涙のゴール後は、完走の証としてティファニーのネックレスを贈られて、ニッコリ。「これからも走る?」と尋ねると、3人とも「続けたい」と力強く答えてくれた。彼女たちのランニングライフは、始まったばかりだ。
 
フルマラソンの挑戦によって大きな自信をもった彼女たち。この挑戦が心に響いたのなら、次はあなたがJUST DO IT.から、初めの1歩を踏み出そう。