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アメリカのロングトレイルの代表ジョン・ミューア・トレイル(JMT)。このスルーハイクに挑戦したヤマモトマサシさん。昨年掲載した第一回は出発前の準備編、第二回はスタートからマンモスレイクまでをお届けした。年をまたいでしまったが、今回はヨセミテから100マイルを越えたほぼ中間地点、エボリューション・クリークまでをお伝えする。この夏、JMTへの挑戦を考えている方には、是非参考にしていただきたい。

2016/6/8 DAY6
9時起床。11時出発。同じ宿に泊まっていたPCTハイカーによるとこの先の峠もかなり雪があるらしい。午前中の雪が固い内に峠を通過したほうがいいみたい。
渡渉もかなり深いポイントがあるらしく別ルートを通る必要があるらしい。

食料と荷物を少し整理して必要ないものは宿のハイカーボックスに入れる。

ハイカーが集まるホステルや食料補給が可能な地点には必ず不要品や余った食料を入れておく箱が置いてあり、他のハイカーはそれを自由に再利用することができる。

お昼ごはんをしっかり街で食べて、昨日と同じホースシュートレイルの登山口へ無料のバスで向かう。昨日は気づかなかったがバスが通っていたらしい。

マンモスレイクは自転車のアクティビティも盛ん。バスに自転車を乗せて移動ができる。

昨日と同じオフトレイルを歩くが昨日とは違って下りがメインなので気楽だ。

オフトレイルの途中で6人ぐらいのグループとすれ違った。南向きに歩く僕と同じJMTハイカーで彼らは今からマンモスレイクへいくという。ここまで全く同じ方向に歩くJMTハイカーには会わなかったので何だか嬉しかった。

2時間ぐらいでJMTのルートに戻った。今日はあまり進まずに良さそうなサイトを見つけて明日に備えてゆっくり休む。


アッパークリエイターメドー付近
移動距離: 0.9マイル + 3.6マイル(マンモスパス)
残り:148マイル

2016/6/9 DAY7
6時起床。7時出発。昨日、一昨日とマンモスレイクで過ごして休めたおかげか体が軽い。今日は少し頑張ってシルバーパスの手前にあるカスケードバレーを目指す。

朝のうちは気温が低く日陰の多い森は少し肌寒い。森を一気に抜けて日当たりの良い見通しのいい場所を目指す。

日差しの強いカリフォルニアは太陽の光に当たると一気に暖かくなる。

今日も沢山の美しい湖を通過する。パープルレイクは日当たりがいいのか雪も溶けていてとても美しい。ここで昼食をとった。

バージニアレイク

バージニアレイク周辺は雪だらけ、かつ昼を過ぎて緩くなった雪で進むのに難儀する。トレイルも見えないので気づけば随分遠回りをすることに。
途中すれ違ったPCTハイカーも必死の形相でお互いどこを通って来たかを教えあった。

バージニアレイクを過ぎた後は長いスイッチバックのトレイルを下り、今日の目的地のカスケードバレーへ。

長いスイッチバックを下ると目指すカスケードバレーが見えた。

明日の峠越えに備えて今日は少し早めに切り上げてゆっくりしていると、ちょうど峠を超えてきたPCTハイカーたちが沢山通り過ぎる。この先のシルバーパスを超えたところに流れの速い渡渉ポイントがあるらしい。
JMTでは情報がハイカー同士の口伝えや紙で伝えられる。ロールプレイングゲームみたいでとても面白い。


カスケードバレー付近
移動距離: 15.9マイル
残り:132.1マイル

2016/6/10 DAY8
5時起床、6時出発。今日はシルバーパス→モノクリークの渡渉→バーミリオンバレイリゾート(VVR)の予定。VVRには食料を送ってあるのでそこで食料補給を行う。

トレイルは雪で覆われ見えないので、GPSで大体の位置を確認して直登でシルバーパスを目指す。

雪の中を進むこと2時間でシルバーパスに到着。数日前のドノヒューパスの反省を活かして午前中に出たので歩きやすかった。
パスの上からちょうどこれから進む南側に分厚い雲が見える。パスの上で休んでいたPCTハイカーがストーム(嵐)かもしれないよと教えてくれた。これまで快晴続きだっただけに、雨が降るなんて微塵も思っていなかった。この先に渡渉が待っているので、その前に降らなければいいがちょっと心配。

0610-02
0610-03

シルバーパスを超えて今日の核心部、モノクリークへ。岩壁を雪解け水が轟々と流れ落ちる。雪解け時期の渡渉は水量が全く読めないこともあり最も不安なポイントだった。

水深は膝上ぐらいまでだが、流れが速い上に真横を滝が落ちるような箇所も。一歩一歩ゆっくり進みながらストックで体を支えながら渡った。

0610-04

無事に渡渉を終えてしばらく下るとジャンクションに到着。ここからは正規のルートを外れてエジソンレイクへ抜けそこからはフェリーもしくは湖畔を歩けばVVRだ。
本来、フェリーは朝夕の2便しかないのだが、携帯電話で連絡すれば随時迎えに来てくれると別のハイカーから聞いていたので乗り場に行ってみることに。

乗り場と思われるところに到着したが、赤いバケツが置いてあるだけで特にサインもなくこれがほんとに乗り場?と不安になる。とりあえず電話で迎えを依頼し、しばらく待っていると湖の向こうの方からエンジン音がして小さなボートが見えた。

0610-05

フェリーというから大きい船を想像していたが小さなボート。とはいえこのボートがなければ更に6マイルほど歩かないと行けないので文句は言えない。

0610-06

14時頃VVRに到着。VVRはJMT、PCTハイカーの補給地点。すでに沢山のハイカーがテントを張っていた。

0610-07

VVRにはビールも沢山。スルーハイカーは最初の一本は無料で飲むことができた。ショーケースには「Next Beer 163.4mi」の文字

キャンプサイトでテントを張っていると、隣のテントからアジア人っぽい男性が出てきたので、声をかけると何と日本人のJMTハイカーの野元さん。

僕も野元さんも久しぶりに日本語で話せるのが嬉しく、JMTの事やお互いのことを食事しながら喋りまくった。野元さんは鹿児島でシーカヤックガイドをされていて沢山の貴重な話を聞かせてもらった。

0610-08

VVRでは少々お高いがおいしい食事をとることができる。この先の活力にしようと惜しまず食べた。


VVR
移動距離:9.1マイル + 1.3マイル(VVR)
残り:123マイル

2016/6/11 DAY9
9時起床。JMTを歩き出して初めての曇り空。VVRの管理人のジムによると今日と明日は雨らしい。休息日にしておいてちょうど良かった。
昨日出会った野元さんも同じく休息日とのことで、今日もご一緒させていただく。

0611-01

PCTハイカーたちは朝のうちに次々出発していきあっという間にキャンプサイトはガラ空きに。

0611-02

雨もポツポツ降ってきたので、テントの中でこの先の行程と食料計画を練リ直す。本来はビショップという街でリサプライする予定で行程を組んでいたが、今日の様に天候が悪くなると足止めを食う可能性もあり街には行かず一気に最後まで行くことに決めた。荷物が多少重くなることは覚悟して予備も含め11日分の食料を厳選した。

0611-03

お昼をすぎるとまた沢山のPCTハイカーがキャンプサイトを埋める。となりでテントを張っていた彼のトレイルネームは“クライムハイ”。若いころクライミングばかりやっていたからその名前がついたそう。ベアキャニスターは顔が書いてありとてもキュート。

今夜もレストランでおいしい食事。
夜はクライムハイとビールを飲みながら彼がPCTを歩いている理由や日本のトレイルのことなどを話して盛り上がる。彼と話しているとPCTを歩きたくなってくる。
「次は君がPCTを歩く番だ」と言われたがいつか実現できるだろうか。


VVR
移動距離:0マイル
残り:123マイル

2016/6/12 DAY10
4時起床、9時出発。夜中に降りだした雨は明け方には嵐になった。テントを張った所が水はけの悪い場所だったようで、ふと気づくとフロアレスのテント内が水浸しに。
慌てて荷物を片付けて屋根のある場所に避難して夜明けを待った。

0612-01

幸い明るくなる頃には雨もやみ、雲行きは怪しいがパッキングもできた状態なのでこのまま出発することに。

野元さんはもう少し様子を見てから出発するとのことなのでここで一旦お別れ。JMTへはアクセスが容易なベアリッジトレイルで戻ることにした。

0612-03

食料11日分が詰め込まれたバックパックはこの旅で最大の20kgに。

ベアリッジトレイルからJMTのルートに戻ってくると、一気に雲行きが怪しくなり雨が降ってきた。傘をさしながら歩くものの標高が上がると雨は雹に。
この先の峠から降りてきたPCTハイカーに聞くと昨夜のキャンプは雷と雪で大変だったらしい。

それを聞いて一気に心が折れた僕は標高が低いところまで歩いて、トレイル脇にスペースを見つけてテントを張ることにした。
この先の渡渉ポイントのベアクリークの手前まで進みたかったが仕方ない。昼寝をして雨が止むのを待った。

17時ごろ目が覚めるとさっきまで聞こえていた雨音がしない。外に出てみると先ほどまでとは打って変わって青空。
まだ時間はあるのでテントを片付けてもう少しだけ先に進むことにした。

しばらく進むとトレイル脇でテントを張っているグループがいる。VVRで出会ったJMTハイカー達だ。
彼らも明日ベアクリークを渡渉する予定とのことなので、今日は一緒にキャンプさせてもらうことにした。川の水量が多かった場合、複数人いたほうが安全だ。

0612-04

ベアクリークを超えてきたばかりのPCTハイカーも加わって焚き火を囲みながら賑やかな夜を過ごした。


Bear Creek手前付近
移動距離:3.7マイル + 4.9マイル(ベアリッジトレイル)
総距離:119.3マイル

2016/6/13 DAY11
7時起床、8時出発。一緒にキャンプをしたメンバーでベアクリークの渡渉を目指す。チェルシーは荷物が多くパッキングに手間取っている。
ベアクリークで落ち合うことにしてパッキングができたメンバーで先に出発。目的地が決まってるからかペースもそれぞれでアメリカっぽい。

0613-01

ちょうどペースが同じだったジェフ達カップルと一緒に歩く。ジェフは日本の歴史が好きらしく最も好きな話は”47 samurai”だと言う。しばらく何のことかわからなかったが、どうやら”赤穂浪士”のことらしい。
誰かと話しながら歩くのは今回初めてでとても楽しい。

0613-02

ベアクリークは心配していたより流れは激しくなく少し下流に行けば何とか歩けそうだ。
遅れていたチェルシーも合流して順番に渡渉。僕は靴のまま渡渉したが、ジェフはよっぽど服を濡らしたくないのかパンツ一丁に。それぞれ個性があって面白い。

僕は今日のうちにエボリューションクリークの手前まで歩きたかったのでここで彼らとお別れしこの先のセルデンパスへ。

0613-04

このパスはイージーだよと聞いていたが、雪に覆われたトレイルはやはり骨が折れる。更にこれまでよりも重くなった荷物がじわじわと効いてくる。
ゆっくり歩いて何とかセルデンパスを超えた。

セルデンパスはちょうどヨセミテから100マイルの地点。感慨深いがまだまだ全行程の半分だ。この先は標高も上がってパス超えも厳しくなるので気合を入れる。

0613-05

セルデンパスを超えて見えた湖がとても綺麗だった。

0613-06

キャンプサイトを目指す途中、すれ違うPCTハイカーにこの先のエボリューションクリークの渡渉について聞くと皆口をそろえてスーパーディープだと言う。代替ルートがあるのでそちらを通れということらしい。
更にその先のミューアパスは雪がかなり多いらしくタフなトレイルになるとのことで明日は少し頑張らないとダメそうだ。

時間的にも体力的にも限界が来たところで良さそうなキャンプサイトを見つけた。先客がいたので断ってテントを張らせてもらう。

0613-07

先客は僕と同じくJMTハイカーのマックス。地質学を学んでいる学生で、大人しくあまり話はしないのだけど、岩の話だけは饒舌でヨセミテ渓谷がどうやってできたかを教えてもらった。


エボリューションクリーク手前付近
移動距離:19マイル
残り:100.3マイル

『会社員が挑戦する!ジョン・ミューア・トレイル スルーハイク04』に続きます

ヤマモト・マサシ
川崎のグループラン&バイクコミュニティ KAWASAKI BICYCLE & RUNNING COMPANY主催、TEAM JET所属。トレイルランニング、ハイキング、ファストパッキング……なんでも全力で楽しみつくしたい社会人。週末を充実させるために日々奮闘中。JMTもその一つ。