アカネ科の常緑樹であるくちなしは、八重咲きのもの、一重咲きのものといくつか品種はあるが、実が穫れるのは一重咲きのもののみ。夏の入り口になると真っ白な花が開花し、夜風にのって濃密なくちなしの香りがどこからともなく匂ってくる。濃いオレンジ色の実を収穫できるのはもう少し後のこと。そう、ちょうど今の時期、晩秋から初冬にかけてである。根元から摘んだその実を一度水で軽く洗い、水分をとって乾燥させたものが、日本でも昔から使われてきたスパイスとなる。
主な用途は沢庵漬けや栗きんとんといった、料理の色付け。くちなしの実に含まれる天然色素成分・クロシンを抽出した黄色い水で炊いた「黄飯」という郷土料理が残っている地域もある。鮮やかな黄色ゆえ強い香りや味がしそうに思えるが、実際は無味無臭。ちなみのこのクロシンはサフランにも含まれている成分なので、ターメリックライスの代わりとしてカレーに合わせるご飯を炊飯するのもいいだろう。並んだ料理に黄色味が入るだけで、食卓がパッと華やぐ。