fbpx

ケトーシス

ケトーシスとは、エネルギー源が糖質からケトン体に切り替わった状態を指す。これからエンデュランススポーツに挑戦したいというランナーのためにケトーシスをもたらす食事法を紹介しよう。ただし、万人向きではないこと、運動強度によってはケトーシスが有効でないこともお忘れなく。教えてくれるのは、ベスパアスリートサービスとして多くのランナーをサポートする栄養補給のスペシャリスト、齋藤通生さんだ。

「コメを主食とする日本人はそもそも糖質の摂取量が多く、糖代謝優先になりやすいといわれています。そこに運動不足が重なると糖を代謝する回路が働きづらくなり、太りやすくなります。ケトーシスを目指す食事法では糖質そのものである白砂糖はもちろん、糖質量の多いコメも控えるので日本人にはハードルが高い」

血管系の負担となるから、ランナーなら血糖値の乱高下も抑えたいところ。この食事法では、血糖値をガツンと上げるブドウ糖を豊富に含むフルーツも要注意とされている。糖質量が分かりづらいうえ、トランス脂肪酸が多く使われている加工食品、添加物が多く含まれる食品も避けたい。

それでは積極的に摂るべき食品は?

「良質なオイルに注目しましょう。例えばn-3系脂肪酸を多く含むアマニ油、エゴマ油です。n-3系脂肪酸は体内で生成することができず食事によってのみ摂取することが可能なので、必須脂肪酸と呼ばれています。中鎖脂肪酸を主成分とするココナッツオイルもいい。酸化しにくくエネルギーになりやすいのです。これらのオイルは、体内に入るとすぐに肝臓で分解され、ケトン体を生成します。ケトン体が増えるということは脂肪が燃えやすくなるということなので、ダイエットに
も有効と言えるでしょう」

そのほかにリスティングしておきたい食材は、タンパク質源となる肉類、タンパク質に加えて必須脂肪酸であるオメガ3脂肪酸を摂取できる青魚。ビタミンEを含むナッツ類、食物繊維が取れる野菜。特にオイルはビタミンの吸収を促すので、アマニ油やエゴマ油はぜひ、野菜と合わせて摂るようにしよう。

調味料では塩に注目を。天然塩はカリウム、マグネシウム、カルシウムといったミネラルが豊富で、脂質の代謝を促してくれる。体内のミネラルバランスを崩す塩化ナトリウムはやめ、天然塩を使うようにしよう。

加えて、キノコや海藻類などの食物繊維もお忘れなく。糖質を控え、タンパク質や脂質を積極的に摂る食事法は満腹中枢を刺激するので満腹感を得られやすいというメリットがある。この満腹感を持続させてくれる食材が、難消化性の食物繊維なのだ。

「目標とするレースなどがあり、ファットアダプテーションを行いたいというランナーは、食事よりも前に心拍数の管理を見直して。まずはきっちりと心拍数を管理し、狙ったゾーニングで効率のいいトレーニングに取り組むことが大切。体質を変えるために不飽和脂肪酸を摂取するのは、それからでいい」

食生活では脂肪の代謝を促すオメガ3脂肪酸を、できればレースの数ヶ月、少なくとも1ヶ月前から続けて摂取する。こうした食生活を続けていくと糖優先から脂質優先の体質に切り替わるのだ。

山道を駆け上がる、レース終盤にスピードを上げて追い上げるといった高出力のシーンでは糖質を、低出力時には脂質を燃焼する。目指すのはつまり、燃費の良いハイブリッドカーのように、糖も脂肪も使いこなせる身体づくりにあるのだ。

ケトーシス
ファットアダプテーションに役立つのが、呼気からケトンの状態を簡単に計測できるケトン値チェッカーだ。例えば、海外のクラウドファンディングで話題になった『keyto』は、デバイス本体に10秒間息を吹きかけると呼気中のアセトンからケトン値を測定。連動するiPhoneアプリにケトンレベルが表示される。アプリは英語表示のみだが、ケトーシスレベルのログのほか食事プランの提案や食材のデータベースも実装されている。本体95$。 getkeyto.com

監修:齋藤通生

(有)ネオディレクション代表。ベスパエリートアスリートサービスとして活躍する栄養補給のエキスパート。山本健一や望月将悟、高村貴子など、トレイルランナーを中心にエンデュランス系レースで活躍するアスリートをサポートしている。レース前~レース中、レース後の食事と補給、また、日常の食生活からコンディショニングのプランニングに携わっている。