UTMFへ向けてスタートしたプロジェクト『マフェトン理論でUTMFへ挑戦!』。第二回は3人の参加者、“ヤマさん”“はるちゃん”“はしもっくん”の現在の能力値を知るため、SPORTS SCIENCE LABへ。そして1回目のMAFテストを実地。SPORTS SCIENCE LABの測定ではこれから変化するであろう大切な共通項があることがわかりました。
SPORTS SCIENCE LABでアビリティ測定
UTMFへ向けて始まった連載企画『マフェトン理論でUTMFへ挑戦!』。第二回は参加者の“現在地”を知るため、SPORTS SCIENCE LAB(以下:SSL)に協力をお願いし、アビリティ測定(パフォーマンス測定)を行ってきました。
アビリティ測定とはどういったことを測定するのか。SPORTS SCIENCE LABでは
・心肺能力
・フルマラソン指標
・ランニングエコノミー指標
・エネルギー指標
・ジョギング指標
と5つの指標にフォーカスし、VO2MaxやAT値、AeT値などを測定できます。今回のプロジェクトとは深く関わってきませんが、10000mやハーフマラソン、フルマラソンの種目別の記録目安や、計測した自身のポテンシャルに対し、インターバルやペース走、ジョグのペースなどの運動強度の目安、トレーニングスケジュールの割合なども算出してくれます。
測定方法は10分のウォーミングアップランのあと、呼気量を図るマスクをつけてオールアウトするまでビルドアップ走。30秒につき時速0.5km(時速10kmまでは1分ごとに時速1km)アップしていきます。早稲田大学時代には大学駅伝3冠を達成したこともあるSSLの代表・三田裕介さん曰く、「これまでの最高は23km/h。それなりにトレーニングを積んでいる人の記録です。20km/hまでいけばかなりすごい方ですよ」とのこと。
20km/hはつまり1kmあたり3分。果たして3人はどこまで追い込むことができたのか。
AT値エネルギー代謝量でわかった“糖質優先”のカラダ
結果ははしもっくんがもっとも長く走り、18km/hまで、ヤマさんは16.5km/h、はるちゃんは16km/hという結果でした。以下は測定結果から産出された数値。はしもっくんがやはりほとんどの指標で能力が高いことが示されていますが、100mileを走ることに目を向け、マフェトンに身体(体質)が向いているかと言われるとそうでもありません。
最大心拍数<1分間の心臓の収縮数の最大値>
ヤマさん 185bpm
はるちゃん 188bpm
はしもっくん 195bpm
VO2Max<運動中に体内に摂取される酸素の単位時間当たりの最大値>
ヤマさん 52.2ml/kg/min
はるちゃん 54.6ml/kg/min
はしもっくん 61ml/kg/min
AT値<有酸素運動から無酸素運動に変わる境界値>
ヤマさん 165bpm
はるちゃん 178bpm
はしもっくん 180bpm
AT値酸素摂取量<AT値で運動した際の一分間あたりの酸素摂取量>
ヤマさん 47.1ml/kg/min
はるちゃん 53.6ml/kg/min
はしもっくん 59.6ml/kg/min
AeT値<スタミナ養成の観点で効果的にトレーニングを行う心拍数の下限値>
ヤマさん 135bpm
はるちゃん 137bpm
はしもっくん 142bpm
AT値エネルギー代謝量<糖質代謝量-脂質代謝量>
ヤマさん 糖質代謝量:100% – 脂質代謝量:0%
はるちゃん 糖質代謝量:100% – 脂質代謝量:0%
はしもっくん 糖質代謝量:100% – 脂質代謝量:0%
参考記事:ペースと心拍数(BPM)
参考記事:いまさら聞けないLT値とVO2maxとは?
注目したいのは最後のAT値エネルギー代謝量。全員糖質代謝100%です。AT値まで心拍を上げての数値なので糖質優先になるのは間違いないのですが、マフェトントレーニングを続けていくことで、徐々に脂質代謝の割合を増やせるはず。ちなみにマフェトントレーニングを実践したことがあるonyourmark編集部の高橋はこの計測で脂質代謝が22%。マフェトントレーニングを突き詰めるとAeT値レベルであれば、脂質代謝70%までになるそう。
まだまだ3人はこのAT値エネルギー代謝量での改善ができそうです。4月に再度計測を行うことになっているので、そこでどれだけこの数値に変化が見られるか。注目どころです。
今回の測定ははあくまで3人のアビリティがどれだけのものなのか、現在地を知ることが狙いであり、マフェトンはHIITやインターバルトレーニングといった高強度トレーニングのように心配を追い込むトレーニングではないので、最大心拍数やAT値が次回の計測で大きな飛躍していることはないと見るのが妥当です。
それ以外では、マフェトントレーニングを続けることによって脂肪燃焼効率が上がること、体内への酸素運搬能力が高まることが見込めることを考えれば、AT値酸素摂取量の増加も同じように増加すると考えられます。それからVO2Max。これも大切な指標です。この値が高いほどより多くの酸素を体に蓄え、供給することができます。マフェトントレーニングでは大きな変化は生まれないと言われていますが、微増するというエビデンスがあり、マフェトントレーニング、それからファットアダプテーションを意識した食生活で脂肪燃焼効率を上げ、AT値酸素摂取量同様、この数字の引き上げを意識するのがいいでしょう。
ちょっと変わったタイムトライアル・MAFテスト
後日、今度はMAFテストを行いました。これは4月まで4回行う予定になっていますが、MAFテストとは決められた距離(できれば毎回同じ場所で)のタイムを計る、いわばタイムトライアル。ですが、何が普通のタイムトライアルと違うのか。それはマフェトン理論によって決められた心拍数で常に走ることにあります。
今回は代々木公園の内周約1.1kmのコースを2周する2.2km。本気のタイムトライアルであれば、かかったとしても10分以内でしょう。ですが、100mileやウルトラの距離をそのスピードでは走りきれません。MAFテストはエアロビック心拍数でのトレーニングを続けることによって、タイムが向上するというちょっと変わったタイムトライアル。SSLでのアビリティ測定とは違って至ってゆっくりのランニング。2.2kmを3人はどれくらいのタイムで走ったのでしょうか。
結果は
ヤマさん 12分23秒(5’29/km)
はるちゃん 13分57秒(6’16/km)
はしもっくん 11分59秒(5’24/km)
走力、実力ともにあるはしもっくんが、やはりSSLの測定同様MAFテストでも頭ひとつ抜けている印象。面白いのはSSLの測定でははるちゃんの方がヤマさんよりも高い数値を出しているのに対し、MAFテストではヤマさんの方が早いタイムが出ました。
この逆転はどうしてなのか。
一概には言えませんが、普段十分に練習する時間を確保できているか、できていないか、その差がSSLの測定で出た結果と言えるかもしれません。体が作れているハルちゃんの方がいいパフォーマンスを発揮できたのだろうと思います。
逆に、MAFテストは2km強。この距離をエアロビック心拍数で走るのであれば、元々のポテンシャルで十分高い数値を出すことはできるかと思います(トレーニングをしているしていないに関わらず、疲労が溜まるより先に走り終えるため)。
マフェトンの先輩である矢崎智也さんはトレーニングを続けた結果、1kmあたり4分30秒を切るペースまで上がったと言います。監修者・齋藤通生さんによれば「その日の体調や、場合によっては天候にも左右されるため、一概に右肩上がりに伸びるとは言えない」ようですが、3人は今回出したタイムを“マイペース”とし、トレーニングの目安にするのがいいでしょう。このタイムの変化も、4回目の計測までにどこまで伸びるか。またエアロビック心拍数のままどれだけの時間を走り続けることができるか、注目です。