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夜になると身体は休息モードに入る。副交感神経の活動が活発になり、体温も低くなるこの時間帯、翌日に備えて心身を休め、エネルギーを蓄えるにはどんな過ごし方が好ましいのだろう。

私たちは地球上で自分たちの種を残すため、地球の自転に合わせた体内時計のシステムを作り上げてきた。ところが効率を求める現代には、せっかく身につけた体内時計を壊してしまうものが身の回りにあふれている。例えばブルーライトを発するスマートフォンやパソコン、テレビ。ジェット機、シフトワーク。いずれも精巧に働く体内時計にとっては大敵である。

マウスを使った実験では、体内時計が乱れると様々な生活習慣病を引き起こすことが証明されている。肥満、高血圧、糖尿病、骨粗しょう症などの危険性が高まり、アルツハイマー型の認知症を引き起こしやすくなる。血管壁も傷みやすくなり、すなわち老化につながる。血中のコレステロール値が高くなり、乳がん、大腸がん、前立腺がん、悪性リンパ腫など種々のがんの発がん率が高まる。サーカディアンリズムが乱れると、腫瘍の増殖を抑える副腎皮質ホルモンの分泌やリンパ球数が減少するからだ。

日常生活で心がける生体リズムの整え方

生活の中にオンとオフの切り替えが必要なように、生体リズムにもメリハリが必要だ。ここでは生体リズムを整えるリラックスタイムの過ごし方を考えてみよう。

体内時計として最もよく知られている周期は24時間を刻むサーカディアンリズムだが、ヒトはさらに90分、12時間、3.5日(84時間)、7日、30日、1年……と、様々なリズムを持っている。なかでもレム睡眠に見られる90分は睡眠における基本周期であり、サーカディアンリズムを強化する基本のリズムだと考えられている。実は24時間を16分割したこのリズムは昼間にも続いており、昼夜を通して90分の休息——活動周期が存在する。そこで、90分を一つの周期としてリラックスタイムに取り入れてみる。80分仕事+10分休憩が効果的だ。新しいことが思い浮かぶ、集中して物事に当たれるなど、ヒトの認知・行動機能にも約90分の周期性があることが認められており、作業効率も改善されるようだ。

また、夜は蛍光灯やLED電球などから発せられるブルーライトに注意しよう。身体を活性化させるブルーライトを夜間に長時間浴びると、メラトニンの分泌が抑制されてしまう。睡眠の質を改善し寝つきを良くするホルモンとして知られているメラトニンは、太陽光、食事と共に生体リズムを整える3要素の一つ。メラトニンは体温、脈拍、血圧を低下させることで体内のリズムを整え、自然な眠りに誘ってくれる。私たちが夜になると自然に眠くなるのは、メラトニンが分泌されるからだ。逆に夜間に血液中のメラトニンが少ないと、眠れないばかりか発がん率も高まるといわれている。現在はブルーライトを自動的に調整する照明も登場し始めている。パソコンやテレビ、スマートフォンなどブルーライトを発する機器類の使用方法はもちろん、室内の照明も見直してリラックスできる空間を作るとともに、夜間のコンビニ詣では控えよう。

リラックスグッズも体内時計に効果あり

また、鎮静作用のあるハーブやアロマなども効果的だ。朝は交感神経に働きかけるグレープフルーツの香りが効果的と前述したが、逆に夜は交感神経を抑制するラベンダーやパッションフルーツの香りがおすすめ。これらの香りを嗅ぐと血圧が下がり、副交感神経が刺激されて休息モードに切り替わる。ただしラベンダーの香りには脂肪の分解を抑えて食欲を高め、体重を増やす効果もある。いずれもほどほどにすることを心がけよう。

ちなみに、メラトニンの分泌量は加齢とともに減少する。60歳を超えると、ピーク時である思春期の10分の1以下にまで減ってしまう。高齢になると、眠れない・朝早く目が覚めてしまうなどの睡眠障害を訴える人が増えるのは、このためである。

※2016/4/15発売「mark06 理想の24時間」転載記事