ランナーに起こりやすいケガについて学ぶ「OYM ランニング障害学習講座」。第1回目は、膝の外側に痛みが生じる腸脛靭帯炎、いわゆるランナー膝について。痛みの原因や改善方法を学んで、長くランニングを楽しもう。
ランナー膝(腸脛靭帯炎)とは?
「ランナー膝」(腸脛靭帯炎:ちょうけいじんたいえん)は、その名の通りランナーに起こりやすいスポーツ障害のひとつです。痛みが出るのは、膝の外側上方にある、骨のでっぱり(大腿骨外側上顆:だいたいこつがいそくじょうか)付近。ここは、骨盤の上部から伸びる腸脛靭帯の付着部分にあたります。ランニング中の着地衝撃、走り終えた後、そして階段を降りるときなどに痛みを感じやすいのが特徴で、ときには熱感や腫れを伴う場合もあります。
痛みが生じる原因は?
そもそも腸脛靭帯とは、骨盤上部にあたる腸骨稜(ちょうこつりょう)から膝の外側上方に位置する大腿骨外側上顆に至る靭帯のこと。マラソンのように長距離を走る運動では、膝の曲げ伸ばしが繰り返されることで腸脛靭帯が大腿骨外側上顆と擦れて炎症を起こし、痛みが発生することがあります。
特に初心者のうちはフォームが安定せず、走っている間に身体が横にブレやすい。すると膝の外側に必要以上の負荷がかかり、自分でも気付かないうちに筋疲労が蓄積して痛みが生じることがあります。また、走るための十分な筋肉ができていないにもかかわらず無理なトレーニングを重ねると、オーバーワークとなり故障につながります。ランニングを始めたばかりの頃はモチベーションが高く、つい走り込んでしまいがちですが、継続するには適度に休養を挟むことも大切です。
痛みが発生する一番の要因はオーバーユースですが、ほかにも、体重が足の外側に乗りやすいランニングフォーム、腸脛靭帯の過緊張、柔軟性不足、O脚、トレイルランニングのように下り坂を長く走る、履いているシューズが硬いなどさまざまな要因が考えられます。
ランナー膝の治療法
オーバーユースによる炎症性の場合は、第一に安静です。まずは3日〜1週間ランニングを休止し、それでも階段の下りで痛むなどの日常生活に支障をきたす場合は、ボルタレンテープやロキソニンテープといった抗炎症薬の使用を。そういったものが自宅にない場合や、治療院に行く時間がないというときは、応急処置としてアイシングをするのもいいでしょう。
安静にしていてもなかなか症状が回復しない場合は、炎症ではなく腸脛靭帯のこわばりによる痛みかもしれません。蓄積された筋肉性の痛みは、安静にしていても状態が悪化し、痛みが固定化してしまう恐れも。誰もが起こりうる障害だからと痛みを軽視せず、早めに治療院で施術を受けることをオススメします。専門家であれば、触診によってその痛みが炎症によるものなのか、筋肉性のものなのかを判断することが可能です。身体の表層に位置する腸脛靭帯は比較的施術しやすい部位でもあるため、初期に治療すれば早く回復します。
ランナー膝の予防法
予防法は大きく分けて2つあります。1つ目は、フォームローラーなどを使って腸脛靭帯そのものをほぐすこと。過緊張した腸脛靭帯を緩めることで、付着部への刺激を緩和することができます。腸脛靭帯はちょうどズボンのステッチに沿って伸びている靭帯なので、身体を横向きにしてローラーの上に腿の外側を乗せて転がし、まんべんなくほぐします。マッサージオイルなどを使って手で揉みほぐすのもいいでしょう。
2つ目の予防法は、痛みがないときに基礎走力をつけておくこと。腿の前側にあたる大腿四頭筋、腿裏のハムストリングス、そしてお尻の筋肉は地面からの着地衝撃を受け止める際に重要な筋肉です。これらの筋肉がきちんと使えていないと膝へのダメージが大きくなり、その結果痛みが出やすくなります。正しいフォームでトレーニングを積むことで走るための筋力がつき、再発防止にもつながります。
結局のところ、走る経験を積むことが、膝の痛みに悩まされずに末長くランニングを楽しめるポイントなんですね!