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ランナーに起こりやすいケガについて学ぶ「OYM ランニング障害学習講座」。今回は、スネのまわりにある骨膜が炎症を起こすシンスプリントについて。痛みの原因と治療法・予防法をしっかり頭に入れておこう。

シンスプリントとは?

シンスプリントとは、医学的には脛骨過労性骨膜炎(けいこつかろうせいこつまくえん)と呼ばれる炎症性疾患のこと。スネの骨(= 脛骨)の内側下部にズキズキとうずくような痛みが生じるのが特徴で、下肢を酷使するランナーに発生する率が高いと言われています。Shin=スネ、Splint=副え木、副木の意。古典的な病名でさまざまな解釈があり、確かな由来は分かっていません。

初期段階のシンスプリントは走り始めの前半に痛みを感じ、進行すると運動の後半や安静時にも痛みが出ることがあります。ここまで重症化すると歩行や階段の上り下りさえも辛くなるため、早めの対処が必要です。

痛みが生じる原因は?

ダッシュや急ブレーキといった激しい動きを繰り返すことで、脛骨周辺の筋肉が引っ張られ、骨を覆う骨膜に炎症が起こる。一般的にはこれが痛みの原因だと言われています。しかし臨床の現場で接するケースとしては、脛骨の深層にあるヒラメ筋や、ふくらはぎから足首にかけて伸びている2つの筋肉、後脛骨筋(こうけいこつきん)と長趾屈筋(ちょうしくっきん)のこわばりの痛みであることがほとんど。筋肉のこわばりが原因だと気づかずに放置してしまうと、連結する周囲の筋肉まで硬くなり、痛みがさらに広範囲化、慢性化する恐れがあります。

ふくらはぎの筋肉がこわばりやすい人は、走る際に足首を使って地面を強く蹴るなど、ダイナミックなフォームになっていませんか? トップアスリートを見ると跳ねるような走り方をしている選手もいますが、あれは経験を積んでこそできる走り。市民ランナーで特に初心者の場合は、できるだけ足首で地面を蹴るような走りや、膝に負担をかけないようなフォーム、つまり膝を屈曲させすぎないように心がけましょう。

シンスプリントの治療法

疾患名に「過労性」とあるように、オーバーユースが原因であることは間違いありません。そのため、走る距離や時間を減らしたり、消炎症鎮痛テープを貼って数日間休んだりすることで回復に向かう場合があります。応急処置として、アイシングをするのもいいでしょう。

もしも練習を再開して再発するようであれば、それは筋肉のこわばりが原因である可能性が高いといえます。その場合は、痛みの震源地になっているヒラメ筋や後脛骨筋を積極的にほぐしていく必要があります。ただしこれらの筋肉はふくらはぎの深層にあり、自分ではほぐしにくい場所なので専門家に治療してもらうことをお勧めします。

シンスプリントの予防法

痛みが引き、再発を防止したいときに優先的に行いたいのがセルフマッサージです。ほぐしたい部位は大きく分けて2箇所。痛みが出やすいスネの骨の“キワ”と、アキレス腱に近いふくらはぎの下部です。これらに親指を当てて、押し込むイメージで指圧します。押すポイントを少しずつずらしながら、硬くなっている筋肉をほぐしていきます。

オイルやクリームをつけて、多少痛みを感じる程度まで押して構いません。セルフマッサージと併せて、運動前後にはふくらはぎのストレッチも取り入れましょう。

シンスプリントを根本から改善するには、痛みが出ない環境を作ることも大切です。例えば、衝撃を吸収するクッション性の高いシューズを履く、着地衝撃の少ないゴムトラックや土の上でまずは走力をつける、専門家のアドバイスを受けながらランニングフォームを改善するなど。ただし、一度に練習量を増やすと再発する可能性があるため、レベルに応じて徐々に増やしていきましょう。

走力に関係なく発症しやすいシンスプリント。痛みが進行する前に適切な対処をすれば、長引くこともありません。こまめにマッサージとストレッチを取り入れて、痛みの原因となる筋肉のこわばりを取り除きましょう。

監修者:古川ぶんと

監修者:古川ぶんと

東京・杉並区にあるランニング障害専門『ソフィア整骨院』院長。2012年の東京マラソンでフルマラソンデビュー。以来ランニングに魅了され、現在までにハーフマラソン、ウルトラマラソン含め30以上のレースを完走。経験を生かした診療で、多くのランナーから支持を得ている。自己ベストは3時間5分。