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環境配慮をメッセージに掲げるブランドやメーカーは増えている。しかし、たとえば100ある商品の1つにリサイクル素材を活用したからといって、それをサステナブルであるとは言い難い。では、本当にサステナブルであるためには何が必要で、消費者は何を基準に選択すれば良いのだろうか。

“ビジネスの力で、気候変動を逆転させる”という大きなブランドミッションを掲げているAllbirds(オールバーズ)は、製造過程から廃棄に至るまでに排出されるカーボンフットプリント(製品を作るために排出されたあらゆる温室効果ガスをCO2の排出量に換算したもの)をすべてのアイテムに表示。さらに、カーボンフットプリント算出キットをWeb上に公開、オープンソース化している。

Allbirdsが考えるサステナブルとはどんなものなのか。マーケティングディレクター、蓑輪光浩さんに話を聞いた。

ブランドがスタートしたのは2016年。そして、全製品にカーボンフットプリントの表示を始めたのは2020年のこと。なぜ、1つ1つのプロダクトに対してカーボンフットプリントを計測し、表示するという選択に至ったのだろうか。

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「カーボンフットプリントの計測については、ブランド立ち上げ当時からチャレンジしていたことなのですが、どう算出するのか、どこまでトレースするのかも複雑で、パートナー企業にもお願いしなければならないことも多く、熟成させるまでに時間が必要でした。納得できる形でラベリングできるようになったのが2020年のことで、翌2021年には算出キットを公開することになりました」

構築するのに時間と手間がかかったメソッドを、間髪入れずにオープンソース化した意図は何なのだろうか。

「そもそもカーボンフットプリントを減らそうと思ったら、どれだけ排出されているかを計測する必要がありますよね。そして“ビジネスの力で、気候変動を逆転させる”というミッションの達成は、Allbirdsだけでできることでもありません。オープンソース化することで、カーボンフットプリントの製品表示がファッション業界のスタンダードになってほしいという思いがあるんです」

この考えに共感し、実際にカーボンフットプリントの算出と表示を始めたブランドもある。

「KAPOK KNOT(カポックノット)の代表の深井喜翔さんが、すぐにカーボンフットプリントを計測して表示したいという連絡をくれました。算出キットがあってもデータ収集などは大変な作業になるのですが、アクションを起こしてやり切ったのは素晴らしいことですし、共感してもらえたことはとても嬉しく思っています」

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illustration:UYUDAS

洋服を売るという意味ではライバル関係にあったとしても、環境負荷の低減のために手を取り合うのが、今後のスタンダードとなっていくのだろう。

Allbirds は気候変動に立ち向かうために、Adidas(アディダス)とパートナーシップを締結。お互いの独自技術や素材のイノベーションを共有することで、カーボンフットプリントを1足あたり2.94kgCO2e(一般的なスニーカーは15.5 kgCO2e程度)まで低減したランニングシューズを発売している。競争から共創へ、時代はシフトしつつあるのだ。

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1足あたり2.94kg CO2e (二酸化炭素換算) で、パフォーマンスに妥協しないランニングフットウェアFUTURECRAFT.FOOTPRINT (フューチャークラフトフットプリント)

「ものを作る以外にも、たとえばシューズの回収と素材の再利用などは、企業の垣根を越えて協力できることがあるでしょうし、同じ思いを持つブランドと連携していきたいですね」

Allbirdsは、2025年までにカーボンフットプリントを半減させ、2030年までにカーボンフットプリントをゼロにすることを目指し、さまざまな取り組みをしている。可能な限り石油由来の合成素材を天然素材に置き換え、納得のいくものがなければ、カーボンネガティブグリーンEVAを使ったSweetFoamや、約48%がバイオベースでできたSwiftFoamのような素材を開発。ブランドが所有、運営する施設では再生可能エネルギーを使用し、商品の輸送は空輸を避け、ほとんどが海上輸送となっている。

「もちろん我々も完璧ではないですし、各社もそれぞれ取り組んでいることがあると思いますが、まだまだできることはたくさんあると感じています。B Corpという、環境や社会に配慮した事業活動に対して一定の基準を満たした企業が認証を取得できる国際的な認証制度があります。世界を見渡すと5000ほどの企業が認証を取得していて、Allbirdsも認証を取っていますが、取得している日本企業は10社もありません。もちろん認証を取ればいいというわけではありませんが、もっと広がっていけば良いなと思います。サステナビリティというのが少しバズワードみたいになっている部分もあって、多くの企業は環境に配慮していると言いますが、より本質的な部分に目が向くようになると良いですよね」

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B Corporation (略してB Corp)認証マーク

自分たちが排出するカーボンフットプリントに自覚的になること。それが気候変動に立ち向かうための大きな一歩となる。その一歩を踏み出す人を増やすべく、7月17日(日)に開催予定の「小布施見にマラソン」をAllbirdsは新しい形でサポートする。参加するランナーが小布施への往復と滞在中に排出するカーボンフットプリントを算出し、それをオフセットできる分だけ、長野県の森に植樹を行うというものだ。

「イベントを主催する側も、参加するランナーも、排出したカーボンフットプリントを知れば少なからず行動が変わるのかなと思っています。たとえば配布する資料を減らそうとか、なるべく公共の交通機関を使おうとか、そういう気持ちが出てくるのではないかと。たとえばダイエットでも自分の体重と体脂肪率を計測することで、やらなければという気持ちが湧きますし、摂取カロリーを計算すると食べ過ぎていることに気がついたりもします。ランニングなら、ペースを計ってみないと目標タイムの設定は難しいですよね。

自然の中で気持ちよくスポーツを楽しめる環境を次世代に残すために、自分たちが排出しているカーボンフットプリントを知って、たとえ小さなことでも行動を変えていくのはとても大切だろうと思います」

たとえばファミリーレストランで食事をするとき、減量中であればカロリー表示を参考にしてメニューを選択することがあるだろう。コンビニやスーパーでエナジーバーやヨーグルトなどを購入するとき、タンパク質や脂質の含有量をチェックして選んでいる人もいるはずだ。スマートフォンやスマートウォッチを利用して、1日の歩数や消費カロリーの目標設定をしている人もいるだろう。

では、商品へのカーボンフットプリントの表示、行動に対するカーボンフットプリントの計測が当たり前になったとしたらどうだろうか。より環境に配慮されたものを選択するという人が多いはずだ。Allbirdsはそんな世界を作ろうとしている。

蓑輪 光浩

蓑輪 光浩

オールバーズ合同会社 マーケティング本部長。1997年NIKE JAPAN入社。ワールドカップ、箱根駅伝、NIKEiDをはじめとしたマーケティングに携わる。2008年にNIKE EUROPE赴任。2011年よりユニクロにて、錦織圭らトップアスリート契約、PR広告戦略、商品開発に携わる。2016年よりレッドブル入社しフィールド・マーケティングを統括。2018年にビル&メリンダ・ゲイツ財団 東京オリンピック プロジェクトマネージャー就任。2019年より現職。

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