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野沢温泉は雪に恵まれた土地だ。かつてそれは冬場の重労働を意味する厄介なものだったが、この国にスキーというレジャーが受け入れられると脚光を浴び、その雪質の良さからわざわざ海外から足を運ぶスキーヤーも跡を絶たない。スキーは村の文化となり、今ではこの狭いエリアから多くのオリンピアンを輩出している。

だが夏の野沢温泉の魅力を知る人は意外に少ない。雪が多く、温泉が尽きせず湧いているということは、つまりこの土地が水の豊かな場所であることを意味している。そして、その豊富な水の秘密は背後に控える美しい山と森にある。

そんなことを教えてくれたのが、野沢温泉の森の中のキャンプ場をベースに日本的なアグリツーリズムを志向する〈LIFE FARMING CAMP〉のプロデューサー小松隆宏さんだ。普段はWATOWAという会社を通してエンターテインメントとアートに関わっている小松さんは、都市の人々と自然をつなぐ場所を探している中で、この野沢温泉と出合ったという。

「日本中たくさんの場所を見て回りました。その中で一番魅力的だったのがこの野沢温泉。山があって温泉があって、なによりも水が豊かです。その水を支えにして成り立っている里山の姿に惹かれました」

この場所を舞台にして、多くの人に“生き方を耕す”という体験をして欲しいと始まったのが〈LIFE FARMING CAMP〉なのだ。では、早速そのコンテンツを覗いてみよう。(※大人6名以上の貸切予約のみ受け付けている)

水を守る森を巡る

参加者はまず野沢温泉随一のお洒落なカフェ〈七良兵衛珈琲〉でイベントにチェックインする。ここでオリエンテーションを受け、まず向かった先は〈名水 八幡清水〉。こんこんと湧き出す豊富な湧水を汲んで味わうと、それはそれはやさしい軟水だった。村の水道水も全て湧水で、複数箇所から汲み上げているため、場所によって味も温度も違うという。

続いて村の背後に佇む毛無山(標高1650m)へと向かう。案内してくれるのはネイチャーガイドの池田和夫さんとこのイベントを通してのナビゲーターである高野隼人さん。まずはブナの森へ向かう前に皆で草笛作り。熊の多いこのエリアではよく通る草笛の音を鳴らして、熊に人間の存在を認識させれば、お互いに鉢合わせして驚かせることもない。

案内してくれたブナの森は、標高1300m付近。ほんの数百メートルの道のりだが、ふたりのガイドに従って進むと発見の連続だ。足元に目を凝らすと葉の厚い双葉の芽が、そこかしこに顔を出しているのに気づく。これはブナの芽だそう。この中から日光を確保して巨木へと育つことができるのはほんのわずか。「ほとんどは育つことができないから、ひとつ摘んで口に入れてみてください」という誘いにのって、ブナ・スプラウトを口に運んでみる。するとナッツの香りがいっぱいに広がった。

さらに歩みを進めていると「足元の感触はどうですか?」と尋ねられる。いわれてみれば、トレイルはふかふかで極上の絨毯のよう。高野さんが、ちかくの地面を軽く掘ってその断面を見せてくれる。「どうですか?何かに似ていませんか?そう、ミルフィーユにそっくりですよね」という土の断面はブナが落とした葉が無数に重なってミルフィーユのようになっている。

「これがとても大事なんです。このスポンジのようになった腐葉土が森に降り注ぐ雨を含んで、ゆっくりと歳月をかけて村に届くんです。湧水は50年、温泉は60年かけて野沢温泉に届くといわれています」

ブナの森の保水力が、水と温泉の村である野沢温泉の生命線であることがよくわかるツアーだった。

オフグリッドのツリーハウスで自然の暮らしを体験

そして今日の宿泊先である〈NOZAWA GREEN FIELD TREE CAMP〉へ。野沢温泉のローカルで元スキークロスのワールドカップ選手である河野健児さんが営むオフグリッドのキャンプ場だ。ワールドツアーで世界のリゾートを知り尽くし、野沢温泉の魅力をグローバルな視点で捉えなすことができる河野さんだからこそ作ることができた場所だといえる。

ここには水道はなく、一段下がった水汲み場まで水を汲みに行かなくてはいけない。けれどそれは、どこよりも美味しい湧水だ。下水も通っていないからコンポストトイレを使う。使い方にコツはいるけれど、自然の力で分解するコンポストトイレの清潔さに驚くに違いない。電気はあるけれど、それは太陽光発電によるものだ。所謂オフグリッド、でもそれが不自由でなく、むしろ豊かさを産むことを実感できる。

とはいえ参加者のハードルを上げないのが〈LIFE FARMING CAMP〉。テントは大型の居住性の高いものを用意してくれていて、設営のアシストもしてくれるし、ふかふかのエアマットで熟睡できる。季節によっては隣の有機の畑から野菜を収穫することも可能だ。

SUPや瞑想体験などバリエーションは様々

一泊二日のプランの翌日も様々アクティビティが体験可能。お寺での瞑想体験もあれば、アクティブに北竜湖でのSUP体験もできる。(※ディナー、サウナ、サップ体験などは別途追加オプション)

参加者の好みや体力によって、オーダーメイドできるのが〈LIFE FARMING CAMP〉だから、その人なりの“生き方を耕す”ことができる。本質的な旅をしたい、そのきっかけが欲しいと考えていたら、〈LIFE FARMING CAMP〉はその選択肢のひとつになるはずだ。