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日本食は健康的だといわれることが多いですが、それは本当でしょうか? 実はそこには盲点があります。私たちが大好きな醤油や味噌といった調味料、冷蔵庫もない時代から生活を支えてきた漬物などの保存食には、塩が多く含まれているのです。自ずと塩を摂る機会が多いのが日本食。中央アジアに次いで東アジアの国々は伝統的に塩分摂取量が多いと言われています。

アジア圏は塩分を摂りがち

これはイギリスの論文に基づいた2010年における世界のナトリウム摂取量マップです。中央アジアが非常に高く(ナトリウム5.51g=食塩相当で14.01g)、次いで東アジア諸国が高い(ナトリウム4.80g=食塩相当で12.21g)のがわかります。日本は東アジア高所得地域に分類されていて、ナトリウム5.00g=食塩相当で12.71gとなっています。これはWHOが推奨する1日の塩摂取量5gの倍以上ということになります。


『Global, regional and national sodium intakes in 1990 and 2010: a systematic analysis of 24 h urinary sodium excretion and dietary surveys worldwide』より 2010年、20歳以上の国別ナトリウム摂取量(男女平均)。(A)平均摂取量(g/日)、(B)相対的不確実性*。注:*モンテカルロ法によるSEをこれらの摂取量推定値の平均値で割ったもの。

特に調味料から塩を摂っているのが理由のひとつです。一方でアフリカ諸国は塩分摂取量が少ないのがわかります。アフリカのマサイ族の一部は、食事のほとんどをヤギのミルクでまかなっており、そのミルクに含まれるナトリウム成分だけを摂取していると考えられます。そこから推測される食塩相当の摂取量はなんと2g。人間がここまで塩を減らしても生きていけることが実証されています。南米アマゾンに住むヤノマミ族はさらに少ない1gで暮らしているそう。こうした“無塩社会”と呼ばれる食生活も存在するのです。適切な身体機能のために必要な最低限のナトリウム摂取量については十分に定義されていませんが、世界保健機関(WHO)のガイドラインには、おそらく、わずか 200〜500 mg/日=食塩相当量1.27gであると 推定されると記載されています 。参照:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書

日本人の塩分摂取量と目標値のギャップは約3g

日本人の令和元年時点での食塩摂取量は男性で10.9g、女性で9.3g、平均では10.1gとなっています。ちなみに世界共通で女性より男性の方が食塩摂取量が多いそうです。これに対し、WHOが2012年に成人に対して強く推奨しているのは5g/日未満とかなり乖離があります。そこで日本の厚生労働省は現実的な数字として、15歳〜65歳の男性で7.5g/日未満、女性で6.5g/日未満を推奨値として定めました。

それに対する解決策として“減塩”を謳った食品が多く出回っています。これは食品の置き換えによって、摂取する塩の量を抑えようというアプローチ。実際、日本人の塩分摂取量は年々減ってきています。ただ、ここにも数字のからくりがあります。実は日本人のカロリー摂取量も同時に落ちてきているのです。

これらを突き合わせると、実は味付けの塩気はあまり変わっていないということになります。減塩は大きな効果をあげていないように見えます。

積極的に塩を排出しよう

一方で、激しい運動の際や夏の盛りの熱中症が懸念される時期には、適切な量の塩分やミネラルの摂取が推奨されます。これは体内の塩分濃度が低下するとうまく給水ができなくなってしまうから。つまり、体が塩を排出しているのです。

これは逆に考えれば余分な塩を排出する手段ともとらえられます。そこで運動による発汗での塩の排出量を調べてみると環境や個人差がありますが、0.2%〜0.6%となるそうです。また汗腺は排出した塩を再吸収する働きがあるのですが、発汗量が多いと吸収が追いつかなくなり汗の塩分濃度が上がります。発汗速度と関係してくるわけです。高強度の運動をするとウェアに塩が吹いたようになるのはそうした理由からなのです。

これも個人差がありますが1時間のランニングで約800mlの水分が失われるとされています。仮に塩分濃度が0.4%とすると3.2gの塩を排出したことになります。ちょうど塩分摂取目標値とのギャップ分くらいになりますね。

いま人気のサウナでも1回で300ml〜400mlの水分が失われるそうなので、3セットで1L程度、4gほどの塩を排出できます。

もちろん実際には、脱水を避けるためにその後の給水では給水しやすい電解質を摂った方が良いので、純粋にそれだけの量の塩を排出する訳ではありません。また激しい運動をした後は、リバウンド気味に塩分の強いモノを食べてしまう傾向もあるそうです。走った後にラーメンのスープまで飲み干してしまう、そんな経験があるかもしれませんね。くれぐれも無理なく排塩活動をすることをオススメします!