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レースが決まってから、なんだか走るのが楽しくなってきました。何事も目標が明確なことが大切なのだと、またひとつ身体を動かして気付くのでした。

しかし、これまでのファンランニングでは通用しないと焦りを感じてきたのは、8月に入った頃です。グループで走るわけでもなく、タイムを意識するわけでもなく、4年間飽きずに走っていた私は、自分がどれくらいでハーフマラソンを走るべきなのか、そもそもハーフマラソンを走り切れるのか、といった具合で、自身の走力を把握していませんでした。markが発信してきたロジカルなトレーニングをまだ実践できていなかったのです。

ダニエルズ理論を取り入れる

ここで改めて、社内にランナーが勢揃いしていることに感謝することになりました。陸上部出身のメンバーを、半ば強引に練習に付き合わせることに。練習場所はオフィス近くの隅田川沿いです。この辺りは言うまでもなく、〈隅田川テラス(河川敷)〉がランニングに最適です。自宅周辺と別にもう一つ身近にランニングコースができたことは嬉しく、また恵まれています。

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特訓のはじまりは、タイムトライアルで自分に必要なトレーニングを突き止めること。全速力で1kmのタイムトライアル。結果は4:30/km。この計測値を用いて、ついに私もロジカルトレーニングの教科書、〈ジャック・ダニエルズのランニング・フォーミュラ〉を参照します。〈VDOT値〉の結果から、思いの外スピードは十分あることがわかり、トレーニングは速さより距離に比重をおくべきとアドバイスを受けました。この〈VDOT値〉は、タイムトライアルのタイムさえあれば、こちらのサイト〈Jack Daniel’s VDOT Running Culculater〉で簡単に割り出せるのでぜひご自身の数値を確認してみてください。

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引用:Jack Daniel’s VDOT Running Culculater

タイプ別の頭文字をとったE(Easy)、M(Marathon)、T(Threshold)、I(Interval)、R(Repetition)のペースはそれぞれ期待される効果をもち、練習強度を示しています。ハーフマラソン初完走を目標とする私は、EペースとMペースを使い分けて距離を伸ばし、実際のレースを想定した長い距離に慣れる練習を主軸にしました。VDOT値の向上にも興味が湧くようになり、きついと感じるTペースを週に一度ほど、集中的に20分だけと決めて取り入れるなど、少しずつ練習に強弱をつけたりしています。

走行しながらペースと心拍を把握することで、トレーニング強度を安定させることに集中できたり、呼吸の仕方にも意識を向けることができるようになって、一度の練習が充実感のあるものに変化しつつあると感じています。

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大切な水分補給

最近は朝と夕方には涼しくなりましたが、まだ日中は真夏のような気温になることもあり、そんな日に走ると大量の汗をかいて脱水状態になりがちです。ご近所コースであればワークアウト前後に自宅で補給できることから少し気を抜いていましたが、レースとなると緊張してきました。というのも、距離走を増やす中で、途中で足がつってしまったり、ペース把握もせずがむしゃらに走って貧血症状を起こしたりするなど、質の悪い練習が原因で補給について学ぶ必要性を実感していたのです。そのタイミングで、〈ASICS Running Program Road to 東京レガシーハーフマラソン2022〉のオンラインイベントでの講義テーマに「水分補給」の回があり勉強になりました。

当然のことですが、水分が枯渇してはパフォーマンスが低下してしまいます。〈東京レガシーハーフマラソン2022〉では、約3〜5kmの間隔で給水所が設けられるそうです。そのすべてに立ち寄り、序盤からこまめに給水することが最後までペースを落とさず走り切るために重要であるというアドバイスは、レース当日参考にしたいと思っています。

さらに、補給する水分の質が大事だということも教わりました。大量の汗をかくと、当然体液が減少します。ヒトの体液は0.9%のナトリウムを含んでいるので、水を補給しただけでは体液の濃度が薄くなってしまいます。するとヒトの体は、これ以上ナトリウム濃度が薄まることを防ぐため、喉の渇きを止めたり、さらに尿を出して水分を下げたりするなどして、濃度を元に戻そうとする働きをします。これは“自発的脱水”という仕組みで、水でなく塩分や糖分を適正に含んだ経口補水液やスポーツドリンクが推奨されているワケなのでした。市販のものはもちろん、個人的にお酢の疲労回復力効果を感じてフルーツビネガーを作り置きして飲むなど、食事以外の補給にも意識が高まりました。

暑熱対策に効果の高い“手掌前腕冷却”

また、興味深かったのは、今アスリートにもその重要性が再認識されている暑熱対策の一つ、身体冷却について。通常脇の下で計測する皮膚温は運動によってそれほど変化しないのに対し、深部体温の指標である直腸温度は、運動を開始すると急激に上がるという研究結果があり、この深部体温を下げることが熱中症対策には重要です。

陸上競技においては、実践しやすく効果の高い“手掌前腕冷却”という方法を、大迫傑選手や服部勇馬選手も実践されているそうです。これは手の平に多く通う〈AVA血管〉を利用していて、このAVA血管を適切な温度(12度程度)で冷やすことで血液の温度を速やかに冷却し、深部体温を下げることに高い効果があることがわかっています。練習の途中、公園の水道を使って試してみたいと思っています。

“東京景観贅沢コース”試走

ASICS Running Programの座学や〈ジャック・ダニエルズのランニング・フォーミュラ〉から知識を得ると、実践してみたいことが増えていき、練習に意欲的に取り組めています。それでも、初めてのレースを前に不安が消えることはないようです。

レースコースをGoogle Map上で辿ってみたところの“東京景観贅沢コース”は、果たして本当にそのような勝手な表現が正しいのか。私の不安は、その検証で多少和らぐのではないかと、練習の最終段階として実際にコースを試走してきました。ルートを把握することに重点を置き、国立競技場からスタートして皇居大手門をフィニッシュにしました。

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©TOKYO MARATHON FOUNDATION

国立競技場〜水道橋

建物を目の前にし、本番ではゲート内に入れることを想像すると、ようやく現実的になってきました。今回は国立競技場の外観を眺めて千駄ヶ谷駅をスタート。ワクワクした気持ちは束の間、外苑西通りは早速上り基調で、富久町西交差点のポイントまでは山登りで少しだけ鍛えた大腿四頭筋が試されるようでした。息の上がり具合に先行き不安です。

続いて、靖国通りから外堀通りが長いこと。飯田橋付近で、まだたったの5kmとは愕然としました。ルートを探り探り進むためか、同じ5kmも普段の距離感とはまったく違う感覚でした。東京ドーム前、水道橋を渡り、白山通りへ入ります。学生時代の見慣れた道を走っていると、ここで少し心満たされる贅沢な気分になりました。

日本橋北詰〜神保町交差点

白山通りを進んで神保町交差点で左折し、靖国通りは須田町交差点まで。この辺りからは、同じく〈東京レガシーハーフマラソン2022〉に向けた試走や練習をされていると思われる人たちによく遭遇しました。同じ目標に向かっているという共通点に励まされます。中央通りを南下するルートには、老舗百貨店やオフィスビルなど重厚感ある建物の間を走りながら、また別の贅沢感がありました。〈日本橋北詰〉の標識を見つけた時は、ほっとする気持ちになりました。ようやく折り返し地点です。

〜皇居大手門

日本橋北詰を折り返して、再びの神田駅付近で約半分の10㎞です。さらに神保町交差点まで戻ると、復路は寄り道をするように、皇居方面へ。平川門と大手門を往復し約1kmだけ皇居ランのコースを走るのですが、やはりここは都会と緑の融合が特別な景観でした。

私の試走はここで終了としましたが、この後は元来たルートに沿って国立競技場のフィニッシュを目指します。

走り始めてしばらくは、抱いていた以上に不安な思いが膨らむようでした。それでも、自分にとってのペースを保つことに徹底すると、移り行く景色や状況に刺激を受けながら、徐々に楽しめていることに気づきました。狙い通り不安は少し和らぎ、本番のイメージを持つことができて、レースの試走は大きな価値のあることだと実感しました。このまま練習を続ければ、本番では心にゆとりを持って “東京景観贅沢コース”をしっかりと味わうことができそうです。

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Vol.01 mark編集部員が初レースに挑戦します

Vol.03 人生初レース、その結果は?