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10月16日(日)、いよいよレース本番の日がやってきました。直前まで天気が不安でしたが、なんとか雨は降らずにもってくれそうで、絶好のランニング日和になるのではないかと、朝の電車でひとまず安堵するのでした。

〈東京レガシーハーフマラソン2022〉第一回大会は、参加人数約15,000人のビッグレースであるにも関わらず、東京マラソン財団のノウハウが当日までの参加手順案内に反映され、初レースとなる私もスムーズにスタートラインに立つことができました。

今大会は、オリンピックの舞台となった国立競技場がコース発着地となる点が最大の魅力。二日前となった10月14日(金)、ランナー受付のために会場を訪れ、そのスケールを体感しました。まず、入場ゲートがいくつもある中、指定のゲートに並びます。検温、顔認証は事前に登録したアプリを使って、入場ゲートを潜ります。本人確認、体調管理アプリの確認、PCR検査、ビブス引き換え、記念Tシャツ受け取りと、他の参加ランナーの流れに乗りながら、順序よく受付を済ませることができました。

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(右) ©東京マラソン財団

この日から、〈東京レガシーハーフマラソンEXPO 2022〉も開催されていて、すでに大会の高揚感が感じられる場内。オフィシャルパートナーがブースを出店するなどして、お祭りのようでした。「アシックス 東京レガシーハーフマラソン スペシャルブース」では、私も参加した〈ASICS Running Program Road to 東京レガシーハーフマラソン2022〉のイベントの一環としてオリジナルラップバンドを受け取ったり、最新モデルの試し履きイベントが行われたりと、一際盛り上がっていました。

他にも、14日夜の「TOKYOナイトリレー in国立競技場」や、15日午前の「TOKYO100mチャレンジ in国立競技場」など、ハーフマラソンのみならず、ランニングを楽しむ関連イベントが国立競技場内で開催されました。

会場の雰囲気を感じて緊張し始めるのですが、スタートまで残り僅かとなった時間をレースに切り替えるためのスイッチが入ります。緊張が高まりすぎて不安に移行してしまうときには、これまでアスリートやトレイルランナーの取材で彼らのスポーツマンシップに勇気づけられたことを思い起こし、「私も頑張らないと!」と成功イメージを浮かべていました。

ついに初レーススタート

スタート待機ブロックが〈Fブロック〉だった私は、スタートの号砲を競技場ピッチの裏で聞きました。朝、国立競技場へ到着し、当日の手順を踏んで、ピッチの様子が見えない地下の待機場所でスタートを待っていたのです。

Runkeeper(asicsのランニングアプリ)のログをスタートすることだけ忘れないように慌てた幕開けとなったことはレースのリアルを感じるいい経験でした。その他は、思っていたより落ち着いてスタートできたのではないかと思います。15,000人という人数に圧倒されるも、目標設定やペース配分がイメージできていましたし、もちろん試走したことも安心材料となりました。

“これがレース!”と感じるたび楽しかった、1時間57分

キロ6分、2時間10分のペースを設定しましたが、目標は何より“完走すること”でした。後半に大きく失速してしまわないよう、最初から抑える意識を高く持っていました。

スタート時の天候は曇り、気温24.1度、湿度66.8%だったそうです。一般的には蒸し暑い環境かもしれませんが、私にとっては走りやすく、最初のアップダウンも順調に進めた感覚が自信に繋がりました。次に、スピードが出やすいと事前に認識していた下り基調のエリアも、ペースをよく確認しながら速くなりすぎないよう抑えました。

「これがレースというものか!」と初めてだからこその気づきが、21.0975kmの中でいくつもあり、終始楽しめました。

1.〈給水所〉

まずは、これも初めてでした。給水所です。最初の5.2km地点で給水することは、〈ASICS Running Program Road to 東京レガシーハーフマラソン2022〉のオンライン講座でもアドバイスをもらっていた通り、必ず立ち寄るつもりでした。

ビブスナンバーの下一桁の番号によってテーブルが分かれているので、「3」を探して、足を一旦止める行為にドキドキ。カップに入った全量を飲むことはしませんでしたが、結局5つの給水所すべてで少しずつ、ポカリスエットと水を交互に補給しました。後半に脱水状態になると給水後の回復を感じて、練習での失敗と比べながら、水分補給の効果とエイドステーションの重要性に気づきました。

また、ボランティアの方達が、次々と注水し、飲み終えたカップを片付けてくれる姿に多くの方の協力のもと走れていることに心から感謝しました。


©東京マラソン財団

1.〈声援の力〉

沿道に立ち応援してくれる方たちから、私自身力をもらったことは言うまでもありません。「がんばれー!」の力はすごいものがあると気づきました。さらに、エリートランナーと市民ランナーが同時に走る〈東京レガシーハーフマラソン2022〉で味わうことのできる声援の文化を知りました。往路の靖国通りを走っていると、パラアスリートの先頭の選手にすれ違い、私と進行方向を共にする一般ランナーが拍手をしながら「がんばれー!」と声をかけるのです。私はその状況にワンテンポ遅れるも拍手を送りました。次々にエリート選手が復路でプッシュして頑張っている姿を見送りながらこちらも背中を押されるのでした。

エリートランナーの先頭も、私が5km地点を走る頃、残り5kmの勝負をかけていました。プロアスリートの速さを目の当たりにし、拍手を送り合うレースの文化に出合えたことも、とても貴重な経験となりました。

3.〈レースアドレナリン!?〉

レースではアドレナリンの分泌が高まり、走れることがあるのでしょうか。信じ難かった話も、レースを振り返ると、私にも当てはまったのかもしれません。

ボランティアや交通規制の協力、沿道やエイドステーションの声援が力になることは、練習では味わえない特別なものでした。また、「必ず帰ってきます。行ってきます!」という強い気持ちも、普段ではなかなか維持できるものではありません。思い思いに個の挑戦ではあるものの、大勢で同じフィニッシュを目指すことは、その時近くを走るランナー達と仲間意識が生まれるようでした。心拍数は170前後、ペースは無理がないので5:30/km前後を保ちながら進むことで、途中、2時間を切るかもしれないという兆しが見えた時には、目標が更新されました。走ることができているすべてのサポートを力に換えるため、練習では出せない力を発揮して目標を上回るタイムで完走することができたのだと思います。

おかげで、東京の景観を眺めながら走ることができた楽しい21.0975kmでした。


大会当日は応援ツールとしても有効な、リアルタイムでタイムと位置情報が確認できた〈スポロク〉のリザルトに、平均ペースが5:34/kmと記録されていました。練習の指標にした、Jack Daniel’s VDOT Running Culculaterの「M(Marathon)」ペースとちょうど一致して、練習の成果が出たようで嬉しかったです。

受け継がれる大会に

エリートレースでは、レベルの高い戦いが行われていました。

男子はケニアのヴィンセント・キプケモイ選手が、1時間00分10秒でフィニッシュし、記念すべき東京レガシーハーフマラソン第一回大会優勝者となりました。来年1月に控えたスペインで行われる10kmロードレースの後はマラソンにシフトしていくのだそうです。日本人トップは村山謙太選手(旭化成)が1時間02分14秒でフィニッシュしました。自己記録更新とはなりませんでしたが、12月に出場予定のマラソンの前に今大会が良いステップになったと話していました。

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©東京マラソン財団

女子はケニアのキャロライン・ニャガ選手が1時間08分23秒で、自己記録を1分37秒も更新するタイムで優勝。来年の世界陸上ブダペスト大会の参加標準記録はまだ破っておらず、ケニア代表入りに向けて次の目標に意気込んでいました。日本人トップは山口遥選手(AC・KITA)。ラスト約3kmの上りでスパートをかけ、1時間10分35秒で3位に入賞しました。自己記録は更新できませんでしたが「いつもは(大きなマラソンでは)第一集団にはつかずに後方でレースを進めてきましたが、次のマラソンでは第一集団で走れるようにしたいです」と、今後のマラソンにつながる走りだったと話していました。

エリートランナー、一般ランナーと同時スタートしたパラアスリート(T11/T12)の部では新記録が出ました。

男子トップは唐澤剣也選手(T11)で、1時間8分30秒をマークして自身がもっていた世界記録(男子T11 )を更新し、女子トップは井内菜津美選手(T11)が1時間31分41秒で、南アフリカの選手がもっていた世界記録を1分51秒も塗りかえる快走。

車いすレースの部では、男子トップは世界記録(38分32秒)保持者の鈴木朋樹選手が42分19秒でフィニッシュし、女子トップは日本記録(48分46秒)保持者の土田和歌子選手が50分01秒をマークしました。

鈴木選手は、「沿道や一般ランナーからの応援もあり、温かい大会でした。自分のコンディションもよく、来年のパリの世界選手権に向けてもいいスタートが切れました」と振り返り、土田選手は、2位の喜納選手と一騎打ちとなったレースを振り返って「東京パラリンピックのコースに戻ってきて、(二人で)競い合える喜びを感じられるレースでした」と、両選手それぞれ〈東京レガシーハーフマラソン2022〉ならではの独自性に触れてコメントしました。

私のような初レースの一般ランナーが、世界で戦うエリートランナーやパラアスリートと一緒に出走できるこの大会は、コンセプトである「多様性」を間違いなく実現していました。

また、それぞれのフェーズで挑戦し、次なる目標を見出すステップになったことは、参加したすべての人に共通しているはずです。走る人、支える人、応援する人が共に、走ることを通じて楽しむコミュニケーションを築いてきた東京マラソン財団による、“もうひとつの東京マラソン”として新生〈東京レガシーハーフマラソン〉が今後受け継がれていくことを確信し、私自身もこの経験を糧に進んでいきたいと思います。

Vol.01 mark編集部員が初レースに挑戦します

Vol.02 ファンランニング卒業、レースに向けた特訓!