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コロナ禍を経て、自然に親しむ機運が高まっている。それはこれまでのアウトドア愛好者の枠を超えて、これまで自然を訪ねる機会がなかった人にも広がっている。そんな中で注目を集めているのが「国立公園」だ。

“国立公園は、次の世代にも、私たちと同じ感動を味わい楽しむことができるように、すぐれた自然を守り、後世に伝えていくところです。そのため国が指定し、保護し、管理する、役割を担っています”と環境省のホームページにはその役割と意義が謳われている。

次の世代にも自然のくれる感動を伝えるということは、“ビジネスの力で気候変動を逆転させる”ことをミッションに掲げるシューズブランド〈Allbirds〉と呼応する。〈Allbirds〉と共に日本の自然を理解し、楽しみ、それを守る術を一緒に考える『NATIONAL PARK in JAPAN with Allbirds』、今回はCO2を大量に吸収してくれる広大な湿原を湛えた尾瀬国立公園。

湿地の持つ驚くべきCO2貯留効果

高山植物が咲き乱れる季節には大勢の登山者で賑わう尾瀬も、10月末の山小屋が閉じた後はしんと静まりかえって、太古から続くこの自然の贈り物の本来の姿を垣間見せてくれる。

明け方はマイナス8℃にも下がるという気温も日中、太陽が顔を出せば歩いている間はうっすらと汗が滲む。聞こえてくるのは時折遠くで鳴く鳥の声と張り巡らされた木道を歩くコツコツという足音くらいだ。この木道は尾瀬の湿原を守るために関係各所が維持管理しているもの。ちょうどシーズンを終えつつあるこの時期は、その整備の風景を目にすることもできた。

東西6km、南北2kmに渡って広がる尾瀬ヶ原は、本州最大規模を誇る貴重な湿原だ。日本最大の山岳湿地であり、ミズバショウやニッコウキスゲなどの湿原を代表する植物が群生する。こうした湿地は生物多様性の保全、気候変動の緩和など地球環境にとって重要な役割を持っている。

特に近年注目されているのは、CO2吸収効果による気候調整機能だ。湿地の保全と利用、教育に関する国際条約であるラムサール条約の報告書「地球湿地概況(GWO)」によると泥炭地は陸地の3%に過ぎないが、世界の森林の2倍の炭素を貯留しているという驚くべきデータが示されている。尾瀬の湿原もこのラムサール条約に登録されている。


尾瀬ヶ原全景と燧ヶ岳(Photo:mark)

CO2の排出に関しては、国際的な取り決めが交わされたり、各企業が排出量の削減に取り組んでいるが、〈Allbirds〉は2025年までにそれを約50%削減することを目標に掲げている。先日リリースされた2021年サステナビリティレポートでは1年間で製品のカーボンフットプリントを平均で12%削減したことが示されている。

ゴミ持ち帰り運動発祥の地

その〈Allbirds〉の撥水トレイルシューズ〈トレイルランナー SWT ミズル〉を履いてわたしたちパーティーの先頭を歩く永井拓三さんは、〈Allbirds〉の理念でもある 「より良いものを、より良い方法で」 を十人十色の方法で、体現するメンバーを集めたグローバルコミュニティ〈Allgood Collective Members〉の一員。 

熟達したプロスノーボーダーであり、山岳ガイドであると同時に南魚沼市議会議員を務める政治家でもある。長年自然と触れ合ってきた経験と行政との繋がりを活かして、日本の国立公園の利用拡大と保全をバランスよく行えるようにしていきたいと考えている。


プロスノーボーダー、山岳ガイドであり南魚沼市議の永井拓三さん。雪に覆われた冬の尾瀬も永井さんのフィールドだ。着用する〈Allbirds〉のベースレーヤーの手首には製品製造におけるCO2排出量が「+21.20」と明示されている。


〈Allbirds〉の撥水トレイルシューズ〈トレイルランナー SWT ミズル〉は、自然由来の撥水シールドで雨天にも対応する。やさしいクッショニングと抜群のグリップで登山道でも心強い。

永井さんの隣を歩きながら尾瀬ヶ原エリアの環境について教えてくれるのは山の鼻ビジターセンターに勤務する尾瀬保護財団の坂上修司さんだ。

「いま赤くなっているのがヒツジグサというスイレンの仲間で、8月くらいになると白い花が咲きます。この花は昼くらいまでは閉じていて、午後2時くらいになると完全に開きます。この午後2時というのが昔で言う未(ひつじ)の刻ということで、ヒツジグサという名前がついたそうです」


山の鼻ビジターセンターに勤務する尾瀬保護財団 坂上修司さん。個人で運用しているインスタグラムは尾瀬の自然を垣間見れる人気アカウント。

この季節、池の水面で赤く色づいている葉について坂上さんが教えてくれる。この尾瀬ヶ原の景観の特徴のひとつとなっているのが池塘(ちとう)。湿地にある池のことを池塘と呼ぶのだが、ここ尾瀬ヶ原には1800余りの池塘があるという。この池塘は生物多様性の宝庫だ。

坂上さんの話を伺いながら歩みを進めていると、一際目を引く池塘に行き着いた。前方に印象的な山容を見せていた燧ヶ岳(ひうちがたけ)を映す「逆さ燧」だ。東北以北最高峰の燧ヶ岳は尾瀬の湿原が生まれた源ともいえる山。火山活動によって生まれたこの燧ヶ岳が沼尻川を塞いで湿原が生まれたという説があるからだ。尾瀬ヶ原を訪れたら、尾瀬を代表するこの風景をしっかりと目に焼き付けよう。

帰りの道すがら坂上さんが、尾瀬と環境保全を結ぶ大事なエピソードを教えてくれた。

「ゴミを持ち帰るというのは山に登る人にとって当然のことになっていますよね。それは尾瀬が発祥なんです。昭和30年代に湿原の荒廃と共に問題になったのがゴミの問題でなんですけども、その当時は尾瀬全体で1000個以上のゴミ箱が置いてあったということです。山小屋さんなどがゴミの処理をしていたけれども間に合わなくなった。そこで、ゴミを持ち帰ってくださいと始まったのがゴミ持ち帰り運動だったんです」

今では登山者にとっても自然で遊ぶ者にとっても当たり前になったこのルールは、尾瀬発祥だった。それはこれから見ていくように、尾瀬が国立公園として環境に関するメッセージを発していく礎となるものだった。

雪が減り、シカが増え、ニッコウキスゲが減った

翌日は、まだ暗いうちに大清水の登山口から取り付いて尾瀬沼を目指す。コースタイムで1時間程度の一ノ瀬休憩所まで、6月中旬から10月中旬の間は低公害車が運行しているが、この時期は自分の足で歩くしかない。とはいえなだらかに登る林道は寒い朝のウォームアップには最適だ。登山道に入り三平峠に至る頃には陽が昇って暖かく、太陽の有り難みを実感する。峠を下った目的地、尾瀬沼では周囲の草原を真っ白な霜が覆い、朝日を反射して美しく光り輝いていた。

尾瀬沼エリアは湿原があり、沼があり、その水面に映る火山、燧ヶ岳が一体となった特別な場所。ここにある尾瀬沼ビジターセンターの責任者、阪路善彦さんにお話を伺う。

「子どもの頃に尾瀬沼を訪れたことがあるのですが、ニッコウキスゲの時期だったので、こんなに一面黄色くなる場所があるんだなってびっくりしました。そのことはよく憶えていますね」


尾瀬沼ビジターセンター責任者 尾瀬保護財団 阪路善彦さん。かつてはボルネオでインフラ整備のボランティアも行っていたという行動派だ。

ニッコウキスゲは、夏になると花が咲いて冷涼な高原を黄色く染めるユリ科の植物。尾瀬を代表する植物のひとつだ。そのニッコウキスゲがいま、危機に晒されているという。

「ニッコウキスゲの株は残っているんですが、花が咲く前にシカに食べられてしまう。だから、花が少なくなったねという話になっています。一般的には昔はこの辺りにはシカは居なかったといわれています。しかし日光地域で増え過ぎたシカが尾瀬と日光を季節移動するようになりました。雪が少なくなってきたために、移動しやすくなってしまったとも考えられている。そのシカたちがニッコウキスゲを食べるのです」

シカが増えたことの原因のひとつに雪の減少が考えられる。尾瀬ヶ原は昔は夏の最高気温が30℃を超えることはなかったそうだが、この数年はそれを超えるようになった。

「尾瀬沼エリアは今でも30℃を超えませんが、それは沼が調整しているせいではないかと思います。これまではお客様に、尾瀬は夏でも気温30℃を超えないんですよというアナウンスをしてきたのですが、今は尾瀬ヶ原に関してはそれは言えないですね」

一見、完璧に自然が守られているように見えるこの土地にも、気候変動の影響は確かに及んでいる。

日本ならではの国立公園の在り方

国立公園と聞いて思い浮かべるアメリカのヨセミテ国立公園やイエローストーン国立公園は、営造物型公園といって公園管理当局が土地所有権を有して管理している。その中でレンジャーなどは強い権限を持って公園管理を行っている。

一方で日本の国立公園は国(環境省)が全ての土地を所有し管理しているわけではない。さまざまな土地所有者がいて、その上に自然公園法という法律を被せているかたちだ。尾瀬国立公園も様々な主体が所有者となっており、その上で尾瀬保護財団などの民間事業者が国立公園管理に携わっている。国立公園という名前がついているが国(環境省)は、こうしたステークホルダーと調整を計りながら管理運営をしていくことになる。

「環境省が国立公園内の土地を所有していないことが弱点とも言われ続けてきたんですけど、逆に今となってはそれがプラスというか、みんなで尾瀬国立公園を作っていこうとなれる。国だけではできなかったことができるかもしれないポテンシャルにもなるだろうなと僕は思っています。尾瀬国立公園では、『みんなの尾瀬を みんなで守り みんなで楽しむ』という行動理念を掲げています。」

こう語るのは環境省自然保護官の服部優樹さん。乗鞍高原のある中部山岳国立公園で2年の勤務を経て、現在尾瀬国立公園の保護管理の担当として自然保護官を務めている。一方、利用企画官という立場で利用促進を受け持つ安類智仁さんは、取り組みの具体例を教えてくれた。

「例えば、歩荷感謝祭というのが10月11日にありました。歩荷さんというのは、荷物を運ぶ人。山小屋の食料を運んでゴミ等を持って帰る。この人たちは普段100kgくらい背負ってるんで声をかけられないんですよ、触れないみたいな。実はこの人たちにはファンが居て、交流したいという声がすごく多いことを察して、歩荷感謝祭を地元の山小屋とやったんですね。私たちは山小屋のイベントを支援する側でした。

これと同じような話題で、ボランティアで登山道を補修する作業というのがあります。至仏山のすぐ横に笠ヶ岳という山があるんですが、倒れている倒木を利用して歩道の代わりにする作業をしました。こうした尾瀬に貢献したいという気持ちを持つ人を繋いでいきたいと考えています。」


左)環境省尾瀬国立公園利用企画官の安類智仁さん 右)環境省尾瀬国立公園自然保護官の服部優樹さん

こうした環境省の考え方を環境行政にも詳しい永井さんがまとめてくれる。

「今までは保全という考え方の下でインフラ整備をしてきていたのが、これから先のビジョンとして、尾瀬だったら「みんなの尾瀬」の名の下に利用の推進をしていきましょう、利用したなら保全していきましょう、それに対して人を繋げていきましょうという考え方ということですね」

単なる保全から利用の促進へ。利用することで国立公園を好きになり、利用者にもそれを守る活動に参加してもらい、保全を理解してもらうこと。尾瀬国立公園からはそんな動きが生まれている。気候変動に伴う環境意識の高まりによって、国立公園に新しい役割が与えられようとしているのだ。そんななか私たちにできるのは、国立公園に足を運び、好きになり、よく知るということだろう。尾瀬国立公園は、そのファーストステップにぴったりの場所だった。

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