ランナーに起こりやすいケガについて学ぶ「OYM ランニング障害学習講座」もついに最終回。今回は、お尻周りや太腿のこわばりが原因で発症する坐骨神経痛。ランニングのエンジンともいえる大事な部位だけに、重症化する前のこまめなケアを。
坐骨神経痛とは?
椅子に座った時に座面にあたる骨(坐骨:ざこつ)から足にかけて伸びる坐骨神経が、何らかの原因で圧迫・刺激されることであらわれる痛みを坐骨神経痛といいます。これまでの連載で紹介した「シンスプリント」や「アキレス腱炎」といった疾患ではなく、頭痛や腹痛といった症状を表す言葉になります。
痛みが発症するのは、坐骨神経が通るお尻から太腿の後ろ、ふくらはぎにかけて。それも、左右どちらかだけに痛みが出るのが坐骨神経痛の特徴です。ピリピリと痺れるような痛みのほか、張りや、締め付けを感じることもあります。
痛みが生じる原因は?
ランナーで坐骨神経痛を発症するケースは、オーバーユースが原因であると考えて間違いないでしょう。練習を繰り返すことで疲労が蓄積し、大臀筋(だいでんきん)、中臀筋(ちゅうでんきん)、梨状筋(りじょうきん)といった臀筋群(でんきんぐん)と、腿の裏(ハムストリングス)が硬くなることで、坐骨神経痛はおこります。
早いうちに筋肉のこわばりを取り除けば、重症化することはないのですが、そのまま何もケアをせずに放置してしまうと腰部椎間板(ついかんばん)ヘルニアや、腰部脊柱狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)などの症状が発症する可能性があります。
坐骨神経痛になりやすいのは、ランナーの中でも、ポイント練習のような強度の高いトレーニングに熱心に取り組むような上級者。もしもランニングを始めたばかりの初心者が痛みを感じるようであれば、それは運動不足が原因かもしれません。
例えばデスクワークなどで長時間座りっぱなしの状態が続くと、坐骨神経が圧迫されて痛みに繋がることがあります。
坐骨神経痛の治療法
脚の裏全体に張りや違和感を感じたら、まずポイント練習やランニングの頻度を減らしましょう。それが痺れるような痛みに変わった時は、練習を中止します。お湯を張った湯船に浸かる、市販のホットパックを使用するなどして患部を温めることも有効です。筋肉の張りは身体が発するSOS信号。その警告に耳を傾け、素直に従いましょう。
初期段階であればストレッチでお尻と腿裏のこわばりを取り除くことで回復に向かいますが、痛みがひどい場合は他の疾患を伴っている可能性もあるため注意が必要です。痛みの原因が筋肉のこわばりなのか、神経そのものの異常なのか、姿勢なのか、治療院で診てもらった上で根本から改善することをオススメします。
坐骨神経痛の予防法
予防、または再発防止は痛みが引いた状態で行いましょう。もっとも手軽に取り入れられるのが、ストレッチ。お尻の深層部にある梨状筋、中臀筋をとくに念入りに伸ばすと良いでしょう。伸ばし方は両膝を立てて床に座り、片足を逆の腿に載せて胸に近づける動作です。椅子に座り片方の足首を逆脚の腿に乗せ、身体を前に倒すストレッチもいいでしょう。
また、テニスボールやマッサージボールなどツールを利用して、直接筋肉をほぐすのも有効です。ただしお尻は脂肪が厚く深層部の筋肉まで刺激が届きにくいため、治療院でほぐしてもらうという手段もあります。日頃デスクワークが多い人は、長時間同じ姿勢を取らないように心がけてください。
オーバーワークと運動不足、真逆の要因で同じ痛みが出る可能性があります。自分の痛みの原因はどこにあるのか、きちんと把握をしたうえで適切なケアを行いましょう。