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世界の食品産業が気候変動の約40%に寄与しているというデータが物語るように、我々が生きるために摂っている食事が気候危機の一因になっていることは紛れもない事実だ。何気なく口に運んでいる美味しい料理、それを生み出すためにどれくらいの温室効果ガスが排出されているのか? そんな疑問が浮かぶ中、イギリス西部の都市ブリストルのヴェジタリアンレストラン〈The Canteen〉が今年からすべてのメニューにカーボンフットプリント(温室効果ガスの排出量をCO2に換算したもの)を記載し始めているという気になるニュースを目にした。その理由と目的とは。マネージャーのLiam Stocks氏に話を訊いた。

ー〈The Canteen〉はどのようにスタートしたのですか?

12年ほど前、あるアーティスト集団が私たちのレストランの上にある共有ビルで〈Coexist〉というプロジェクトを始めました。アーティストスタジオ、ダンスワークショップ、ヨガ、コワーキングスペース、クリエイティブオフィスが複合的にあって、この地域のクリエイティビティの中心地と言える場所でした。つまり、「キャンティーン(食堂)」という名前は、このビルを共有している人たちのために作られたことで付けられたんです。結果的にビルをシェアしている人たちだけでなく、ビジネスマンや学生、地元の人たちが食事や音楽が気に入ってくれて、街全体に人気が広がっていきました。

ー 一番人気のメニューは?

地元産のテンペをマリネして揚げて、粘りのあるソースをかけたテンペ料理(韓国風チキンウィングみたいなもの)ですね。お酒を飲む方には、ロードポテトが人気です。ランチでは、ポテトとチャイブのロスティにブラックガーリックケチャップを添えていますが、これも好評です。


地元産のテンペ(大豆の発酵食品)を使用した人気メニュー。

ー 野菜やその他の食材はどのように調達していますか? 地元の農家とはどのような関係を築いているのでしょうか?

地元のサプライヤーと密接に連携することが重要だと考えています。私たちが掲げているのは『S.L.O.(サステナブル、ローカル、オーガニック)』という理念です。つまり、オーガニックであることよりも、地元の食材の方がサステナブルであるという順番。例えば、カリフォルニア産の有機アボカドを買うよりも、地元の食材を使ったほうが持続可能であるという考えです。私たちは地元の業者と密接に連携しています。サラダや野菜のほとんどを市街地との境界線で生産している業者から仕入れています。マッシュルームを栽培している業者やテンペを製造している業者などとも付き合いがあります。すべてブリストル市内で手に入るものです。ビールやスピリッツも同様で、地元の生産者に恵まれ、地元でしか作れないものにこだわっています。コチュジャンや醤油など、メニューを面白いものにするために輸入しているものもありますが、それはごく一部の食材に過ぎません。


地元で育った野菜をふんだんに使ったメニューの数々。

ー メニューにカーボンフットプリントを記載する理由や目的は何ですか?

実はあるヴィーガンのチャリティー団体から、肉がいかに環境に悪いかということを啓発するために声をかけられたんです。例えば、ハンバーガーのビーフパティ1枚は2,050グラム以上の炭素を含んでいます。私たちの全メニュー(ベジタリアン)はその半分です。それぞれの料理が、食材によってどのような影響を受けているかを見ることは、私たちにとってもお客様にとっても勉強になることです。多くの人が、自分たちが食べているものが必ずしも地元で生産されたものではないこと、あるいは輸入品であることに気づいていません。イギリスでは、食料を自給自足できるにもかかわらず、それに気づかないままに大きな問題になっています。


各メニューに表示されたカーボンフットプリント。冒頭に「イギリス産のビーフバーガーを1個食べるだけで、3050gのCO2を排出することになります」と記載されている。

ーカーボンフットプリントはどのように計算するのですか?

MyEmissionsという会社が、料理の各アイテムのグラム数、各アイテムのサプライヤーの所在地、製造方法などを考慮して計算しています。例えば、一部の商品が電気自動車で輸送されていたり、ワインがヨーロッパからヨットで輸送していることなどは考慮されていないので、完璧に正確な計算ではないかもしれませんが、測定に必要な数値に近いものが得られます。ほとんどの食材は地元で生産されているのでそれほど複雑ではないですね。

ーカーボンフットプリントを測定することで、どのような発見がありましたか?

スパイスや醤油など、通常使用する食材の多くが輸入品であることを忘れがちです。また、仕入先との関係によっては、ヨーロッパから送られてくる食材の方が簡単で安いという理由で送られてくることもあります。私たちの目の前で栽培されているものがあるにもかかわらずです。ですから、すべての食材がどこから調達されているかをしっかりと調べることは、特に大きなサプライヤーと仕事をする場合はとても重要なことだと気づきました。


ヘッドシェフのMatt。

ーカーボンフットプリントが高い料理と低い料理は?

一番多いのは600g以上になる茄子料理(ズッキーニのババガヌーシュ付き)。茄子とズッキーニが育つのに大量の水を必要とするため、高くなったと思います。スパイスはすべて輸入品(料理のごく一部ですが)、味噌も日本から輸入しているので、それらを利用するものも高くなります。最も低いのは、ニンジンとビーツのパコラで28gです。これは、すべての材料がローカルで自然に育ち、私たちのごく近くで手に入るものだからです。

ーカーボンフットプリントを測定することで、メニューの作り方が変わりましたか?

よりサステナブルにできる部分を見つけるのに非常に役立っていますし、特定の料理について考え直すきっかけにもなっています。例えば、味噌や醤油、輸入調味料の使いすぎには注意しなければなりません。

ー英国や世界の食事情についてどのように考えていますか?

英国では、自分たちで栽培する手段があるにもかかわらず、多くの農産物を輸入していますし、輸出も多くしているため、非常に混乱した状況になっています。ブレグジット(イギリスのEU離脱)とウクライナでの戦争(エネルギー危機)は、あらゆるものの値段に大きな影響を与えており、フードバンクの数はかつてないほど増えています。

気候危機は非常に現実的で、毎年夏になると干ばつがひどくなり、以前は心配する必要のなかった異常気象が起こるなど、その影響をここで大きく感じ始めているので、より持続可能な食生活が正しい方向への大きな一歩となることを信じています。


店内ではライブ演奏も行われ、美味しい食事とともに音楽も楽しめる。

ーmark読者に向けて、メッセージをお願いします。

地元で生産された食べ物や飲み物を食べ、それを誇りに思えば、身体も元気になります! 残念ながらここ西洋世界(イギリス・アメリカ)で蔓延している有害な消費主義文化を終わらせる必要があるのです。