The B Corp Handbook よいビジネスの計測・実践・改善
著:ライアン・ハニーマン ティファニー・ジャナ 訳:B Corpハンドブック翻訳ゼミ 監訳:鳥居希 矢代真也 若林恵 発行・販売バリューブックス・パブリッシング
〈B Corp〉という存在は気になっていたものの、ここ日本ではその実態がなかなか掴みにくいところがあった。それはひとえに日本語の資料不足という理由による。それを一気に打開してくれたのが本書だ。〈B Corp〉入門の決定版といえる原著は、世界各国でベストセラーとなっている。
そして、日本語版の誕生のエピソードも実に〈B Corp〉らしい。自身も〈B Corp〉を目指している〈バリューブックス〉が、日本語翻訳権を取得し、コンテンツレーベル〈黒鳥社〉が制作を担当した。翻訳の作業は、一般参加のゼミ形式で行われ、ファシリテーターは〈バリューブックス〉取締役の鳥居希氏と元〈WIRED〉編集長の若林恵氏が務めた。
ハンドブックというタイトルの通り、〈B Corp〉の肝であるBインパクトアセスメント(BIA)と呼ばれる5つのカテゴリー(ワーカー、コミュニティ、エンバイロメント、ガバナンス、カスタマー)の評価指標に関して詳しく解説されている。BIAの質問に目を通しただけではわかりにくい、アセスメントの意図を汲み取ることができる。
だが実はこの本は、わたしたちの実存に関わる“働くこと”を巡る読み物として成り立っている。鳥居希氏による日本語版まえがき「負けず嫌いとインパクト」では、彼女が〈B Corp〉に関わる個人的な動機が、第1章「B Corpのはじまりから現在地まで」では、認証制度を産んだ〈B Lab〉が誕生した背景が、若林恵氏による日本語版あとがき「メッセージ・イン・ア・ボトル」では“仕事”をめぐる思想が語られる。そして何より随所に〈B Corp〉認証を取得したそれぞれの企業のパーソナル(企業という公器だが、あえてパーソナルといいたい)な物語が散りばめられている。
この本を読むことで人々が集い、働くこと、その基盤である地球を存続させることの意義が浮かび上がってくるはずだ。