効果的なトレーニングをするには、まず自分を知ることから。
自分の身体能力を客観的に測って、弱い部分を強化するためのトレーニングを紹介する「大人の体力測定」。第8回はペットボトルを使って、バランスと調整力を測定します。
テーマ:バランスと調整力の測定
用意するもの:水をいっぱいに入れた500mlのペットボトル1本
測定方法
①片足で立ち、反対側のももを床と平行になるまで上げる。
②ももの上にペットボトルを乗せて静止する。
③ペットボトルを落とさずに静止できた時間で、バランスと調整力を判断する。
④5回チャレンジして、最も長くできたものを測定結果とし、反対の足も同様に行う。
評価
非常に良い ・・・・3回目のチャレンジまでで、両足とも10秒以上
良い ・・・・5回目のチャレンジまでで、両足とも10秒以上
普通 ・・・・片足が10秒以上、反対足が5秒~10秒未満
努力が必要 ・・・・両足とも5秒~10秒未満
悪い ・・・・片足が5秒~10秒未満、反対足が5秒未満
非常に悪い ・・・・両足とも5秒未満
測定のポイント
ペットボトルはメーカーによって形状が異なるので、底面の広いものを使う。
バランスが良いとはどういうこと?
日常生活の中でよく耳にするバランスという言葉。「左右のバランス」「心と身体のバランス」「食生活のバランス」などなど、まさにバランスのとれた状態をよしとするシーンはたくさん思い浮かびますね。
スポーツにおけるバランス能力は、筋力や持久力と並ぶ重要な要素と言われています。
バランスが良いというと、一般的には片足立ちでグラつかないようなことを指して使われますが、実際には少しニュアンスが違います。
実は、人は常にバランスが崩れているのであり、本当の意味でのバランスの良い人とは、この常に崩れているバランスをすみやかに修正できる能力を持つ人のことを言うのです。
例えば、歩くためには最初の一歩を踏み出して、自ら不安定な状態=「バランスの崩れた状態」を作らなければ前に進むことはできません。
つまり、崩れた体勢の調整能力が高いこと、崩れた重心を瞬時に安定させる能力が高いことをバランスが良いと言うのです。
単に片足で立っているという状況ではなく、何かをやりながら片足で立っている時、つまりより不安定な状況でもいかにすみやかに重心を安定させられるかが重要になるのです。
スポーツとバランス
瞬時に重心を安定させる能力が高いということは、様々な姿勢において、特に動きながらの状況でも、最も適切なバランスをとることが瞬時に出来るということです。
スポーツの場面では、常に重心移動が行われていて、当然、それぞれの状況においてバランスが崩れているのです。
けれども、一般的にスポーツプレイヤーは、この崩れているバランスに気づかないままスポーツ動作を続けてしまい、結果としてパフォーマンスが上がらないということも多々あります。
例えば、野球のピッチャーがセットポジションから片足を上げた時、ファースト側、あるいはサード側に重心が寄っているとキャッチャー方向への適切な重心移動ができずに、投げたボールに威力が伝わりません。
プロ野球のピッチャーは、見事なまでにこの状態でバランスがとれていて、結果的にキャッチャー側へのスムースな重心移動ができるので、威力のあるボールを投げられるのです。
また、ランニング動作に関しても同じことが言えます。
一歩踏み出すたびに、その重心は崩れているのであって、この重心が左右にずれていると直進方向へのスムースな体重移動が出来ず、結局はスピードのロスになるのです。
バランス調整は股関節で行う
この測定動作をする時のように、片足立ちでバランスをとっている状態で、立ち足の足の裏に意識をもっていってみてください。
この時バランスの悪い人は、小指側、親指側、かかと側、つま先側と、重心のかかっているところが安定していないことが良くわかります。
どうしてこういうことが起こるのかというと、実は股関節が前後左右にブレているからで、その結果、足の裏がブレてしまうのです。
つまり、股関節を微妙にコントロールできればバランス能力は向上するのです!
ただし、これは微妙なコントロールということなので、決して強い筋力が必要というわけではありません。ほんの少しずつ各筋肉が力を出して、ブレを調整しているのです。
股関節を安定させる主な筋肉は以下の通り。
腸腰筋・・・骨盤が前方に突っ込むのを止める
大臀筋・・・骨盤が後方に突っ込むのを止める
中臀筋・・・骨盤が外側に突っ込むのを止める
内転筋・・・骨盤が内側に突っ込むのを止める
測定結果が思わしくなかった方は改善エクササイズで、少しずつ股関節の微妙なコントロールの能力を身につけましょう。
改善エクササイズ
フラミンゴ
①片足で立ち軽く膝を曲げ、反対の足を少し後ろに引き、両手をリラックスして下ろす。
②出来るだけ背筋を伸ばしたまま4秒かけてお辞儀をするように体を前に倒し、同時に後ろ足の太ももが床と平行になるまで引き上げる。
③できるだけグラつかないように調整しながら4秒かかけて元のポジションまで戻る。
④上げている足は床までは下ろし切らず、これを10回繰り返して1セットとする。
⑤1セット行ったらすかさず反対足も同様に行い、左右とも3セット行う。
ポイント
①立ち足の膝は伸ばしきってしまうとバランスの微調整が行いにくく、かえってトレーニングの成果があがらなくなるので、必ず少し曲げておくこと。
②力を入れずにグラつかずに出来ている時の感覚を覚えておくことが重要。決して力で抑え込むような状況で行わないこと。
③背筋を伸ばした上半身と、上げている足がシーソーのように動くことが理想的。決して腰を丸めてかがむような姿勢にしないこと。
④立ち足の足の裏は、どこか一部分でなく足の裏全面に均等に体重がかかっている状況をつくるように常に調整しながら行うこと。
筋力を鍛えるウェイトトレーニングや柔軟性を高めるストレッチのように、バランスをよくするトレーニング方法というのは、意外と少ないものです。
スポーツのフォーム改善やパフォーマンスの向上の近道となるバランス改善エクササイズ、ぜひ多くの人とシェアしてみてください。
(監修 清水忍/イラスト atsushi ave)
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