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効果的なトレーニングをするには、まず自分を知ることから。
自分の身体能力を客観的に測って、弱い部分を強化するためのトレーニングを紹介する「大人の体力測定」。第10回はダイアゴナルテーブルバランスで、体幹連動性を測定します。

テーマ:体幹を鍛えるだけでは意味がない?体幹連動性の測定

測定方法    
①床に両手と両膝をついて四つん這いになる。
②両手は肩幅に、両膝は腰幅にして構える。
③左足を後ろに伸ばし、右手を前に伸ばす。
④この状態から右の膝を最大限まで曲げる。
⑤この左手と右膝の2点だけで、どれだけ姿勢を維持できるかで判断する。
⑥反対側も同様に行う。

測定の注意点
①堅くない床で行うこと。タオルなどを2~3重に折って膝下に敷いても良い
②両手、両膝の幅が狭いと測定に誤差が出るので、必ず肩幅、腰幅で行うこと。
③床に着いている膝の曲げが不十分だと測定に誤差が出るので、必ず最大限まで曲げること。

評価
非常に良い ・・・・両側とも、ほぼグラつかずに30秒以上静止できる。
良い    ・・・・片側はほぼグラつかずに30秒以上静止できるが、
          もう片側は一旦静止できるが30秒以内にグラついてしまう
普通    ・・・・両側とも一旦静止できるが30秒以内にグラついてしまう。
努力が必要 ・・・・片側は一旦静止できるが30秒以内にグラつき、
          もう片側は全く静止できない。
悪い    ・・・・両側とも、全く静止できない。
非常に悪い ・・・・どちら側か一方でも、床についた膝がしっかりと曲げられない。
          (床からつま先が浮かせられない)

「体幹=インナーマッスル」は間違いです

タイトルにある「体幹連動性」という言葉を見て「?」となった方もいることでしょう。「体幹」なら知っているけど、連動性ってどういうこと?と聞きたくなるかも知れません。
そもそも、すっかりおなじみになった体幹という言葉ですが、書籍や指導者によっても定義がまちまちで、曖昧に理解している方が多いようです。
特に、「体幹=インナーマッスル」と思っている方がいますが、それは間違いです。体幹という言葉が身体の内側をイメージさせるのかもしれませんが、体幹にはアウターマッスルも含まれるのです。

体幹とは要するにウエスト周りのインナーマッスルとアウターマッスルを指します。
体幹のインナーマッスルは腰椎、つまり背骨を保護する役目があります。
このインナーマッスルが弱いと腰椎が安定しないので、腰を反らし過ぎてしまったり、逆に腰を丸め過ぎてしまったりして、腰痛を誘発する大きな原因になります。当然スポーツパフォーマンスも下がってしまいます。

腰椎を保護する役目のインナーマッスルには以下の4つがあります。
①横隔膜・・・胴体の内側を上から押さえつける
②骨盤底筋・・胴体の内側を下から押さえつける
③腹横筋・・・胴体の内側を前から押さえつける
④多裂筋・・・胴体の内側を後ろから押さえつける

これら4つが同時に機能すると、胴体の内側が1つのブロックのように固まって、それが柱となって腰椎を保護します。
一方、体幹に含まれるもうひとつの筋肉群アウターマッスルは、実際に身体を動かすという役割があります。

体幹のアウターマッスルとは以下の筋肉のことを指します。
①腹直筋・・・腰を丸める
②内・外腹斜筋・・・腰を捻る、腰を横に折る
③脊柱起立筋群・・・腰を反らす

これらのアウターマッスルによって身体が動く時に、インナーマッスルが機能していないと、腰椎に対して不適切な負担をかけてしまうことになります。
体幹トレーニングをする時には、インナーマッスルとアウターマッスルが協調して働くことを意識することが大切になります。

更に発展した「ファンクショナルコア」という考え方

体幹にはインナーマッスルとアウターマッスルの両方が含まれること、インナーマッスルは、腰椎を安定させる役割が、アウターマッスルは実際に身体を動かす役割があることをみてきました。
上記までを満たすトレーニングは、いわゆる腹筋運動とか、背筋運動ということになりますが、それでは実はスポーツに対応した考えにはいたっていません。
多くのアマチュアアスリート(実はプロでもそうなのですが……)が腹筋と背筋に励みますが、それでもパフォーマンスが上がってこないのは、以下の考えを十分に理解していないことが原因かも知れません。

例えば今回の測定方法のダイアゴナルテーブルバランス。(ダイアゴナルとは「対角線」、ここでいうテーブルとは「平らな面」という意味)
実はグラついてしまうのは、床に着いている手の側の「肩関節」と、床に着いている膝の側の「股関節」の安定性の調整力が問題なのです。
どういうことかというと、肩関節と股関節が固定されていないからグラつくのであり、体幹はその姿勢を保つための最低条件でしかないのです。逆に言えば、体幹が強くても、肩関節と股関節の固定ができていなければ、パフォーマンスとしては全くダメということになるのです。

肩関節を動かす筋肉は、
①三角筋・・肘を上げる
②大胸筋・・肘を前方に動かす
③広背筋・・肘を後方に動かす、肘を脇に引き寄せる
などであり、
股関節を動かす筋肉は、
①中臀筋・・膝を横に上げる
②腸腰筋・・膝を前に上げる
③大臀筋・・膝を後方に引く
④内転筋・・膝を閉じる
になります。

これらの筋肉が使われて体が動く時に、しっかりと連動して体幹の筋肉が働くことが重要なのであって、これを機能的な体幹という意味で「ファンクショナルコア」と呼んでいます。
つまり、ただ単に体幹が強いだけでなく、四肢末端が動く時にしっかりと連動して体幹が機能することが大切になります。というわけで、単純に腹筋運動をしているだけだと、体幹の機能は向上しますが、四肢末端の動きを伴っていないため、ファンクショナルコアの機能は向上しないのです。
今回のダイアゴナルテーブルバランスの測定結果が思わしくなかった方は、下記のエクササイズを実践してみてください。

改善エクササイズ

ワンレッグ・ワンハンドプランク

  

方法
①腕立て伏せのスタートポジションを作る(膝はつかない)。
②両手は肩幅、両足は腰幅で構える。
③肩からかかとまでが一直線になるように姿勢を作る。
④この一直線を崩さないように維持したまま右手を10秒上げ、右手を戻して左手を10秒上げ、左手を戻して右足を10秒上げ、右足を戻して左足を10秒上げる。
⑤30秒ほどのインナーバルを入れて3セット行う。

ポイント
①いかにすればグラつかないかを体に覚えさせる意識で行うと上達しやすい。
②体の一直線が崩れているとほぼ意味を持たないので、特に注意する。
③手足のローテーションや維持の秒数などは変化させても構わない。
④不得意なポジションを認識して、特にそこを繰り返すと身体能力が大きく向上する可能性が高い。

相撲の突っ張り、ボール投げ、綱引きなどは、腕の力だけでやろうとすると、とたんにパフォーマンスが悪くなります。下半身の力を、体幹を通して上半身にしっかり伝えることで力強いプレーが生まれるので、まさにファンクショナルコアが重要な運動と言えます。
腹筋だけをムキになって行うのではなく、こうしたエクササイズも取り入れて、効果的な身体作りをしていきたいですね。

(監修 清水忍/イラスト atsushi ave)

【大人の体力測定アーカイブ】
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#02 上半身のバランスを司る広背筋の重要性
#03 身体のコントロール能力を確かめよう
#04 パフォーマンス向上&肩こり解消にも!肩周りの柔軟性
#05 体力低下は脚筋力低下から始まる
#06 姿勢の維持に大きな役目を果たす腹筋力の測定
#07 憧れの開脚!横開脚の柔軟性
#08 人は常に姿勢が崩れてる?バランスと調整力
#09 その場足踏みで、骨盤のねじれを自覚しよう
#10 体幹を鍛えるだけでは意味がない?体幹連動性の測定
#11 ここが硬い人は要注意!前ももの柔軟性
#12 スポーツしている人ほど硬くなる? 股関節外旋の柔軟性
#13 イチロー選手への第一歩!? 股関節内旋の柔軟性

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