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いつも〈onyourmark〉をご覧いただいているみなさん、こんにちは。この度、〈onyourmark〉は雑誌版〈mark〉と名称を統一し、web版〈mark〉として生まれ変わります。それに伴い、web版も毎月のテーマに沿って、月刊誌のような構成でお伝えしていきます。月毎のコンテンツは一度に掲載し、コンテンツ間の関連性を楽しんでいただけるようにしました。また、ご登録いただければ、これらのコンテンツをタブロイドのように面付けした〈NEWS LETTER〉というかたちで、立体的にストーリーを楽しんでいただけるように工夫しています。ぜひこちらからご登録ください。

これらは、情報をバンドルし、テーマを浮かび上がらせ、大きなストーリーを語ることができる雑誌という形態の良き側面をweb上でいかに再現できるかという、私たちなりのひとつのチャレンジです。果たしてうまくいくのかどうか、読者の皆さんの声に耳を傾けながらアップデートを重ねていきたいと考えています。

さて、リニューアル後最初となる今月のテーマは『BEYOND JOGGING』です。世の中が大きく変わる時、ランナーが増えるといわれています。ジョギングは60年代、ベトナム反戦運動やカウンターカルチャーが盛んになる時期に誕生しました(それまで、健康のために走るという概念がなかったということに驚きませんか?)。911の後には米国で自然の中を走るトレイルランニングがブームになったといわれています。日本でも東日本大震災の後には、交通機関の乱れから帰宅難民となった人たちが、これではいけないと体力作りのために走るようになったという話をたくさん耳にしました。そしてこのコロナ禍で、ステイホームを強いられたわたしたちは走ることに救いを見出しています。

そんな中、一冊の書籍が出版されて話題を呼んでいます。マイク・スピーノ著『ほんとうのランニング』です。これは所謂ランニング・ハウツー本ではありません。走ることについての古今東西の哲学やヨガや様々なスポーツの体験談、トレーニングや食事法、エッセーや散文がまとめられた、摩訶不思議な書籍です。そしてこの本の原題は『Beyond Jogging : The Innnerspaces of Running』、そう今回の特集テーマはこのタイトルから引用させていただいたものなのです。

このBeyond Jogging、直訳すれば「ジョギングを超えて」というタイトルには少々説明が必要です。この本が書かれた1970年代、ジョギングが一大ムーブメントとなっていました。ニュージーランドのコーチ、アーサー・リディアードが開発し、ナイキの創設者のひとりである米国のビル・バウワーマンが広めた、ゆっくり走る健康法=ジョギングが全米を席巻していたのです(このジョギングの誕生物語はこちらの記事に詳しく解説しました)。街中がカラフルなランニングウェアを着た老若男女のジョガーで溢れている様子を思い浮かべてください。この現象に対するカウンターとして生まれたのが、この『ほんとうのランニング(Beyond Jogging : The Innnerspaces Of Running)』だったのです。

著者のスピーノは、このジョギングブームに異議を唱えます。これはジョギングの健康面での効能が一般的に広く認められるようになったいまから振り返ると若干奇異な感じがします。ですがスピーノの論点は、より精神的で自由なランニングが、単調なジョギングに矮小化されているという部分にあります。日々のランニングに変化を与えながら、ランニングの可能性を拡大し、さらにその先にある(Beyond Jogging)ある種の心の領域を目指すべきだというのが、彼の考え方なのです。

この特集では、彼に倣って、ランニングを拡張していきます。走ることが、いかに人にとって根源的なのか、単なる体の健康のための手段を超えて、いかに私たちを救ってくれるのか、ランニングが生きることと同義なのはどうしてなのかを。

mark 2020 FEB
BEYOND JOGGING
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