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新緑が眩しく、一年のうちで生命の息吹を最も力強く感じられる季節がやってきました。しかし目に映るこの自然の足下、土の中に“見えない自然”が豊かな世界を築いていることに気づいていますか?それは視覚で捉えることができない生命、微生物の世界です。

『微生物』といっても実はこのくくりはかなり大雑把です。小さくて肉眼では見えないものすべて−10分の1ミリ未満のもの−が微生物だと考えられているのです。その中には『古細菌』、『細菌』、『菌類』、『原生生物』、『ウイルス』が含まれていて、『ウイルス』以外は生命だと捉えられています。地球上にはこの微生物が10の30乗個(=100穣個)いるといわれており、これを全部繋げるとなんと1億光年の長さになるそうです。その数は宇宙にある既知の星の数の100万倍多く、一握りの肥沃な土の中にはアフリカ、中国、インドの人口を足したより多くの微生物がうごめいているのです(参考:『土と内臓 微生物が作る世界』築地書館)。

この微生物が二酸化炭素を吸収し、酸素を作り、有機物を分解し、空気中の窒素を固定して、わたしたちが生きる環境の絶妙なバランスを保ってくれています。しかし、この働きが解明されてきたのはつい最近のこと。微生物の素晴らしい働きに無知だった私たちは、化学的な農業によって窒素循環のサイクルに大きく手を加え、微生物のネットワークが作る土の健康を損なっていることがわかってきました。

そしてこの微生物は外部環境だけに存在しているわけではありません。私たちの体の中、特に腸内にはそれがひとつの宇宙といえるほどの細菌の世界が広がっており、体と心の健康に大きな影響を及ぼしています。

人間の消化管は大きく胃、小腸、大腸に分かれていますが、その役割は大きく違います。胃は溶解をつかさどり酸性度が強いためほとんど細菌は生存できません。小腸は吸収するための場所で、酸性度は一気に下がり、胃の10,000倍もの細菌が生息しています。そして特筆すべきは大腸です。PHがほぼ中性であるこの場所では大量の細菌が生息し(その数10の11乗個!)、小腸でも吸収できなかった植物由来のセルロースなどの複合糖質をエサに、盛んに発酵を行っているのです。

この腸内細菌叢のバランスが、体だけでなく心の働きにも大きく影響していることがわかり始めています。

このように、土と腸内は微生物と共生しているという意味でパラレルなのです。この視点を持つことで、地球の健康と体の健康もまたパラレルであるという視点が実感を伴って生まれてきます。さあ、BODY(体)とSOIL(土)に大量に存在し、私たちの、そして地球の健康を左右している見えざるものたち=微生物の世界を覗いてみましょう。そして彼らと共に生きる術を身に付けましょう。

mark 2020 MAY
『BODY and SOIL』
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